「マジで無理っス…」ラブホ店員になった自称“元ヤン”男性が涙目になった「衝撃のモノ」

 自分はやったことがない仕事にもかかわらず、誰かがやっているのを見て「簡単そう」「ラクそう」などと感じたことはないだろうか。けれど実際に体験してみると、想像もしていなかった大変な部分や苦労がみえてくることも多い。

 ラブホテルの清掃員として働く篠原恵美さん(仮名・43歳)は、勤務年数10年以上の大ベテラン。オーナーからは真面目な勤務態度を評価され、ほとんどの仕事を任されていた。求人に応募してきた人の面接はオーナーが担当したが、指導するのは篠原さん。

◆ラブホテルで働くことになった自称ヤンキー

「オーナーは穏やかでいい人ですが、“来るもの拒まず”なので、誰でも採用してしまうという悪いクセがあります。今回お話する出来事も、オーナーが採用したKという自称元ヤンキーのイキガリくんについてです」

 Kさんは採用された翌日にやってきて、挨拶もそこそこに「俺、1回ラブホで働いてみたかったんっスよね~。ホントはフロントの仕事だけでよかったんだけど、フロント兼掃除みたいな募集ばっかしかないっしょ? でもまぁ、ラクそうだし給料も良さげだし」と、タメ語。

「目上に話しかけるような敬語ではなく、さらに勤務先で使う日本語としてはどうなのかと思ってしまうような話し方でした。でも、言葉づかいが微妙なスタッフは少なくありません。こちらとしては、真面目に仕事さえしてくれれば大歓迎という感じでした

◆駐車場が併設されたタイプのラブホ

 そして、「嘘か本当かはわかりませんが、借金返済が難しくなり闇金から夜逃げしてきた人、働き口のない元受刑者、それから配偶者やパートナーからのストーカーから身を隠して働く人もたまにやってくきます。なので、変わった同僚は慣れっこなのです」と篠原さん。

「そういったケースが多いのは、よほどのことがない限り、お客と接触する機会がないという仕組みにあるかもしれません。私が働くラブホは、部屋の隣に駐車場があるタイプ。そのため、まずは車に乗ったまま駐車場に表示されているパネルから好きな部屋を選びます」

 気に入った部屋の隣にある駐車スペースに駐車。車から降りて隣にある部屋のドアノブを回せば、フロントを通さずそのまま部屋へ行ける仕組みとなっているため、フロントでカギを渡すといった接触行為もないし、顔を覗き込まれるといった心配もない。

「オプションとなっているコスプレ道具や特別な大人のオモチャ、食事なども、普段は閉まっている小窓に配膳してからボタンを押すので、お客が小窓を開ける頃にスタッフは近くにいません。代金も自動精算機のため、お客と接触しなくて済むのです

◆「俺、元ヤンだったんで」が口ぐせ

 そういった仕組みも関係し、特殊な事情を抱えた人も少なくないラブホテルの仕事。Kさんのような態度や口の利き方をする人が働きに来ることも、珍しくはなかった。Kさんが19歳と若いこともあり、細かいことは気にするのをやめ、ひとまず仕事を教えはじめたのだが……。

「監視モニターを覗き込んで、『各部屋に付いてるカメラはどれっスか?』と聞いたかと思えば、『表に出ないようなエグイやつ見たいっスね~』とつぶやく。とにかく信じられないぐらい態度が悪すぎました。各部屋にカメラなんて、ついていません

 カメラが付いているのは駐車場出入口や場内だけだと説明しても、Kは事務室に「隠し部屋があるのではないか」など、しつこい。また、「ラブホテル清掃ぐらい余裕っス」と言い、「やり方とか教えてもらわなくても大丈夫なんで、テキトーにサボっててください」と聞かない。

また、こちらは何も聞いていないのに『俺、元ヤンだったんで』と、事あるごとに繰り返すので、陰ではイキガリくんと呼ばれていました。これだけ態度が悪く、ラブホの仕事をナメているケースは、はじめて。そこで、今後の対応をオーナーと相談しました」

◆ラブホの部屋で目撃した衝撃の物とは?

 その結果、本来は各部屋に2~3名で掃除に行くのだが、最初の1週間だけ同行し、あとはひとりでやらせることになったとか。するとある日、部屋の掃除へ行ったはずのKさんが速攻で戻ってきたのだ。そして、「とにかく来てほしい」と切羽詰まった様子で、嗚咽。

「多くはありませんが、薬物の持ち込みや傷害事件などで警察へ通報することもあるので、そういう類かと思い、すぐに部屋へ向かいました。するとベッドが汚物だらけだったのです。ただ、それだけ。そういう趣味のお客は多くはありませんが、珍しくはありません

 篠原さんは「こんなことで……」と溜め息をついたが、Kさんはえずきながら「マジで無理っス……」「すみません」を繰り返す。「ラブホの掃除なんだから、これぐらい想像できたでしょ?」とキツめに言うと、「まさかリアルにやる人がいるとは…」と、そのまま嘔吐。

 そのあと、「俺が半泣きになったこと、絶対ナイショですよ」とおとなしくなったKさんだったが、結局は仕事が続かず3か月で辞めていったとか。誰かがやっている仕事を「簡単そう」「ラクそう」などと勝手に見下していると、Kさんのように大変な目に遭うかもしれない。

<TEXT/山内良子>

【山内良子】

フリーライター。ライフ系や節約、歴史や日本文化を中心に、取材や経営者向けの記事も執筆。おいしいものや楽しいこと、旅行が大好き! 金融会社での勤務経験や接客改善業務での経験を活かした記事も得意

2024/7/12 15:53

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