太陽光発電事業で贈収賄疑惑。“地元のドン”に振り込まれた5000万円、市長への高額接待も
◆岡山県津山市で150億円規模のメガソーラー事業を巡って約5000万円の贈収賄疑惑
横浜市の太陽光業者テクノシステムをめぐる巨額詐欺事件は、またしても思わぬところに火の粉が飛ぶ可能性が浮上している。
今月4日、公明党に所属し財務副大臣を務めた、遠山清彦元議員の関係先に家宅捜索があったのは記憶に新しい。この事件はテクノシステムの生田尚之社長や関係者を調べるなかで、遠山元議員が金融機関からの融資の仲介をする見返りに、金銭を受け取っていた証拠が出たためとみられている。
しかし、事態はこれにとどまりそうにない。大手新聞社の社会部デスクが解説する。
「テクノシステムと取引のあった太陽光関連の会社は100社近くに上ります。このうち、東京都内のZ社という会社が手掛けていた、岡山県内の太陽光案件で、汚職があったという話が注目されています」
この岡山県内の太陽光案件とは、2017年から岡山県津山市で進めてきたメガソーラー事業(35MW)のことで、完成すれば150億円の価値があるとも言われている大型案件だ。太陽光業者からしたら、喉から手が出るほど欲しい案件とも言えるだけに、トラブルが絶えないそうだ。
◆地元のドンヘ約5000万円が振り込まれる
この案件では権利関係をめぐって、Z社が複数の会社とトラブルになっていて、今月には土地と売電権を有する合同会社(SPC)が、工事事業者から破産を申し立てられるなど、いわばぐちゃぐちゃの状態となっている。しかし、問題はこれだけでは終わらない。
「太陽光発電事業は、土地の工事や開発をするために、地元の自治体から林地開発許可、いわゆる“リンパツ”を取る必要があるのですが、同じ頃にZ社側から地元の元県議のドンに金が流れていたともっぱら噂になっています」(前出 全国紙社会部デスク)
ドンとは、1995年に岡山県議に初当選の岸本清美元県議(81)のことである。つまり、地元の岡山県から太陽光の工事に必要な“リンパツ”の許可を得るために、地元の元県議のドンに金を渡し、役所の担当者に口利きなどをしてもらっているという構図だ。その額は、数年間で約5000万円に上るとみられている。日刊SPA!はこの現金の授受の証拠となる、振り込み記録などを入手することに成功した。
◆税金対策で貸し付け名目にした
時系列で説明しよう。まず、Z社がこの太陽光事業を行うため、Z社が管理する合同会社が経産省への申請をしたのは2017年8月21日。
驚くことに、Z社が管理する口座から元県議に現金が振り込まれたのはこの約1週間後の、2017年8月27日。貸付金名目で約1500万円が振り込まれている。その後、岡山県の“リンパツ”の許可が出る2019年12月頃まで、ほぼ毎月のように100万円~600万円が元県議名義の口座に振り込まれ、少なくとも総額5000万円に達したというのだ。
関係者によると、Z社の代表は周囲に対して、「税金対策で貸し付け名目にした」と話していて、恐らく所得税逃れを指していると推察される。それを裏付けるように、合同会社の口座から引き出した現金を、岸本元県議に直接手渡すこともあったという。
昨年度の合同会社の確定申告には、岸本元県議への貸し付けのうち、一部は返済されたと記載があるが、少なくとも3000万円近くは元県議の下にあり、使途は不明のままとみられる。
また、Z社は元県議に現金を渡していただけではなく、地元の津山市長らとも会食し、接待していた疑惑も浮上している。
日刊SPA!が入手したZ社の代表が関係者に送ったとされるSNSには、2018年6月1日に津山市の谷口圭三市長、元県議らと会食したことが記されていて、「予想外の早さで物事が進みました」という文言で締めくくられている。さらに経費が記された資料には、会議費として32万6450円(5月31日~6月3日の間に)が計上されている。これが接待に使われた費用とみられる。
Z社の関係者もこう証言する。
「岡山の案件だけではなく、太陽光業界では地元の許可や、地元住民の反対を抑えるために現金を配ると言うのは、もはや常識となっている。特に田舎に行くと、土地を手放したくない人も多い。だから、地元の政治家に大金をはたいたり接待したりして、収めてもらうのが一番の有効策だ」
岸本清美元県議と谷口圭三市長にFAXで質問状を送り、谷口市長からは後援会を通じ、「その日は始業から終業まで庁舎内で公務をしていて、夕刻からも公務で自治会関係の会議に出席していたことが確認されました。会食はしていません」と、回答があった。
岸本元県議からは期日までに回答はなかった。
◆収賄罪の適用の有無に関して
今回の疑惑について、汚職に詳しい弁護士はこう解説する。
「元県議なので職務権限がありませんが、元政治家が政治家時代と同じように権力を持ち、行政に影響力を与えている典型例と言えるでしょう。賄賂に当たらない法律の抜け穴を突いているようにも見えますが、もし受け取った現金を利益として計上せず、税金を納めていない場合は脱税になる可能性があります。また、職務権限を有する現職の政治家が飲食接待を受けて、リンパツの認可が下りたのであれば、収賄罪に抵触する可能性があります」
日本は2011年3月に起きた福島第一原発の事故以降、自然エネルギーへの転換を目指してきた。しかし、「環境に優しい太陽光」「地方の電力不足解消のため」などと旗を振ってきた政治家が、その利権にむらがる業者から賄賂を受けて、私腹を肥やしていたとすれば言語道断だ。
この事案をめぐっては、すでに捜査当局が情報収集を始めたとの情報もある。地元自治体である岡山県や捜査当局には不正を糾し、真相が解明されることを期待したい。
取材・文/日刊SPA!取材班