大体の家にある「捨てたら清掃車が燃える」超危険ゴミって?ゴミ清掃員のなげき:12月に読みたい記事
年末は大掃除やイベントなどで、なにかとゴミが出やすい時期ですよね。そしてゴミが多くなるとだんだん分別や捨て方が適当になってきたり……
そこで今回は、お笑いコンビ「マシンガンズ」として活動しながら、ごみ清掃員として11年間現場で働き続ける滝沢秀一さんに、年末のゴミ出しで特に注意してほしいことを聞いてみました!(初公開日は2022年12月25日 記事は取材時の状況)
滝沢さんは環境省のサステナビリティ広報大使も務め、『このゴミは収集できません』(角川文庫)や『すごいゴミのはなし』(学研プラス)などの書籍もある、まさにゴミのスペシャリストです。
◆年末は早めに各ゴミの収集日をチェック
――年末のゴミ出しで、特に注意するべきことを教えてください!
滝沢秀一さん(以下、滝沢)「年末は大掃除などで、ゴミがたくさん出る時期です。でも、年末になって無計画に大掃除を始めると、『年内の不燃ゴミ回収日が終わっている!』ということもあります。そうなった時によく見るのが、可燃ゴミも不燃ゴミもごっちゃにして捨てる人です」
――耳が痛い人も多そうですね…。分別しないで捨てられたゴミは、どうなるのでしょうか。
滝沢「可燃ゴミの日に不燃ゴミは持っていけないので、我々清掃員がゴミ袋を手で開けて、不燃ゴミを集積所に置いていきます。これが結構な手間なんです。地域全部のゴミを回収しないといけないので、そういう人がいっぱいいると回収時間が長くなります。そうじゃなくても、年末年始はゴミの量が多いので作業が大変です。年内に大掃除を済ませたい方は、今からゴミの回収日を確認して、計画的にゴミを捨ててもらえると助かります」
◆写真やピザの箱は古紙回収に出さないで!
――分別といえば、アルバムに入っていた写真や、宅配ピザの箱は古紙回収で捨ててもよいのでしょうか。年末に増えそうなゴミですが。
滝沢「写真は水に溶けないので可燃ゴミになります。基本的に水に溶けない紙は古紙回収には出せません。よく間違われるのがチョコレートの包み紙で、『紙』って書いてあるんですけど、水に溶けないので可燃ゴミで捨ててください。
宅配ピザの箱もよく古紙回収で出されていますが、油が染み込んだ紙も可燃ごみになります。次の製品にする時に油が浮き上がってしまうので、処理施設の人が困ってしまいます」
――ちなみに、ダンボールについたガムテープや金具は外さないとだめでしょうか。
滝沢「ガムテープはなるべく剥がしてほしいですけど、金具は分離する機械があるので外さなくても大丈夫です。書類をまとめてあるホッチキスも1個1個外すのは大変じゃないですか。雑誌なんかもそうですよね。あれも分離する機械で分けられるので大丈夫です。
どちらかと言えば、金属よりプラスチックが一番問題です。たまにダンボールがビニールに包まれた荷物あるんですよ。そのまま古紙として出される方がいますが、ビニールはプラなので機械に引っかかってしまいます。それだったらまとめて可燃ゴミのほうがいいですね」
◆危険!清掃車火災に繋がる「中身が残ったスプレー缶」
――年末に出る、迷惑なお困りゴミはありますか。
滝沢「ゴミを捨てる人が増える年末は、清掃車火災が多いんです。これは清掃員の命に関わります。僕が知っている清掃車も、中身の入ったスプレー缶が分別されないで入っていたことで燃えたことがありました。スプレー缶は必ず中身を出しきってから、自治体が決めた日に捨てるようにしてください」
――なぜスプレー缶の中身が残っていると、清掃車で燃えてしまうのでしょうか。
滝沢「スプレー缶は中身が入ったまま捨てると、ゴミ収集車の中にある回転板に挟まれたり、硬い不燃ゴミに押しつぶされてガスが漏れます。そうすると、ゴミを押しつぶす時に金属から出た火花などで、引火してしまうんです。収集したゴミの中にライターがある場合も引火します」
◆モバイルバッテリーや携帯扇風機も破裂して燃える
――ゴミを正しく捨てることは清掃員の人達の命を守ることにもつながっているんですね。
滝沢「あと夏に使っていた充電式の携帯扇風機を年末に捨てる人も多いのですが、これも注意が必要です。多くの充電式携帯扇風機には、リチウムイオン電池が使われているのですが、これも清掃車火災の原因になるんですよ。
リチウムイオン電池は、スマホのモバイルバッテリーやワイヤレスイヤホン、電子タバコなど様々な家電製品に使われています。リチウムイオン電池は圧迫に弱く、少しでも圧迫すると破裂して燃えます。僕の回収したゴミの中にリチウムイオン電池が含まれていて、清掃車の中で燃えてしまったこともありました」
――これは知りませんでした…。モバイルバッテリーなんてほとんどの家にあるというか持っていそうですが、リチウムイオン電池は、どのように捨てればよいのでしょうか。
滝沢「自治体によって回収方法はまちまちで、不燃ゴミとして出すところもあれば、有害ゴミとして出すところもあります。リチウムイオン電池は近年発明されたものなので、回収方法が決まっていないんです。区役所に直接持っていって回収してもらうところもあります。
また、清掃車だけでなくゴミ処理場でも、リチウムイオン電池が発火してベルトコンベアーが燃える火災が起きています。処理場の火災など億単位の損失が出ているのを見ると、使われているのは税金ですし、買うのは簡単だけどどうやって捨てるか、を考えて購入する必要があると思います」
◆一度に大量のゴミ袋を捨てられると困る
――年末の迷惑なゴミは、他にもありますか?
滝沢「5~6年前は手付かずのケーキが、ワンホールそのまま捨ててあるのをよく見ました。手付かずの食品なので、お店の人がノルマなどで買ったものなのかもしれません。最近は、食品ロスの問題が取り上げられることもあって、そのようなゴミはあまり見なくなりました。迷惑なゴミと言うと内容もそうでうが、なんといっても“量”ですね。ゴミの回収日に間に合わなくて、一度に20袋近いゴミを出していた人もいました」
――20袋も!?
滝沢「自治体によって数は違いますが、通常一世帯で3~4袋しか出せない決まりになっています。それ以上出す場合は、事前に申請して有料のシールを貼って出す必要があるんです」
◆同一人物が捨てた大量のゴミは見抜ける
―― 一度に大量に捨てられたゴミはどうするんですか。
滝沢「有料のシールが貼っていない場合は回収しません。ゴミ収集車に入れられるゴミにも限りがあるので、回収しないで置かせていただきます。ルールを守っていない方のせいで、ルールを守っている方のゴミが回収できなくなるのを避けるためです」
――大量のゴミを出した人が同一人物か、見分けるのは難しいと思いますが…。
滝沢「僕もこの仕事を始めた時に、職場の先輩に『同じ人が出したゴミかどうかなんて、どうわかるんですか?』と聞いたことがあるんです。先輩には、『よく見ろ、袋の口が同じ縛り方だろ。本人は気づいていないけど、ゴミ袋にはその人のクセが出るんだ』って言われました。たしかによく見ると捨ててある洋服の系統が同じですし、捨て方にもそれぞれクセがあります。同じ人が捨てたゴミかどうかというのは、見分けることができます」
◆年末は計画的にゴミ捨てを! 年末年始は粗大ゴミも混む
――なるほど。数も守ってゴミ出しをしないといけないですね。
滝沢「今から計画的にゴミを捨てていくことが大事です。粗大ゴミも年末年始の回収は混むので、早めに申請をすることをおすすめします。年明けになると、引っ越しをする人が粗大ゴミを出すのでさらに混み合い、回収されるのが2月になる場合もあるので注意してください」
ゴミの量や種類を考えて、今のうちからぜひ年末年始の計画をたててみてくださいね。
<取材・文/瀧戸詠未>
【瀧戸詠未】
大手教育系会社、出版社勤務を経てフリーランスライターに。教育系・エンタメ系の記事を中心に取材記事を執筆。X:@YlujuzJvzsLUwkB