廃止秒読み「津軽線」ルポ、「代替輸送」を利用する住民の本音は
2022年8月の豪雨により、路盤や盛土の流失、路線への土砂流入など深刻な被害を受けたJR津軽線。以来、現在に至るまで蟹田-三厩間の28.8kmは今も不通のままだ。
しかも、すでに復旧を断念しており、沿線自治体とも廃止の方向で合意済み。JR東日本の喜勢陽一社長は11月6日の定例会見で、27年春を目標に廃止を進めることを明かしている。
元々ここは同社管内でも有数の赤字区間で、23年度の営業係数(※100円の運賃収入を得るのに必要な経費)は1万3520円。これは久留里線の久留里-上総亀山間の1万3580円に次ぐワースト2位だ。
津軽線の不通区間では現在、バスやタクシーによる代替輸送が行われている。記者は11月中旬に現地を訪れたが、意外にも沿線住民の反応は悪くなかった。
代替交通は地元で「わんタク」の愛称で親しまれており、通学での利用者が多い朝と夕方以降の計4往復は代行バスが運行。日中はワゴン車による「わんタク定時便」が4往復出ており、こちらは津軽線の終点の三厩から約12km先の竜飛岬まで行くので観光にも便利だ。
また、定時便ルートやその周辺エリア内なら自由に乗り降り可能な「わんタクフリー便」もあり、9-17時限定だが、こちらは通常のタクシーと同じ感覚で利用できる。
料金は移動距離に関係なく中学生以上は1回500円。ただし、青春18きっぷをはじめとするJRのおトクなきっぷを持っている場合や、沿線の今別町・外ヶ浜町在住でマイナンバー所有者などは1回300円に割引される。
ほぼ毎週利用しているという外ヶ浜町に住む70代の女性は、「スーパーの前で乗り降りできるから買い物に便利」と話し、今別町に住む70代の男性も「正直わんタクのほうが使い勝手がいい」と本音を明かす。
実際、記者もわんタクを使って竜飛岬や各駅を巡ってみたが、運休前の列車の本数(※1日5往復)よりも多いこともあり、移動しやすかった。鉄道が消えるのは残念だが、皮肉にも代替交通手段のわんタクのほうが地域住民たちの足になっているようだ。
(高島昌俊)