元SMAP・森且行、今も忘れられない中居正広の言葉「僕は彼ら5人に出会えて…」
1996年、当時すでにトップアイドルグループだったSMAPを脱退し、オートレーサーとしての生き方を選んだ森且行さん(50歳)。
その転身は衝撃を与えるとともに、オートレースファンの間では賛否を呼んだが、2020年の11月には、日本選手権で優勝。悲願の日本一に輝き、自ら“否”の声を封じてみせた。
しかしそのわずか82日後の2021年1月。森さんは落車し命が危ぶまれるほどの大ケガを負う……。
そして2024年11月現在。森さんは再びレース場(オーバル)で走っている。すべてを追ったドキュメンタリー映画『オートレーサー森且行 約束のオーバル 劇場版』が公開される森さんにインタビュー。
厳しいリハビリにも感情的になることのない森さんに、担当医も驚いていたというが、そこには、ずっと胸に刻んでいる中居正広さんからの言葉があった。
◆いち番組のオファーが3年間の密着映画に
――3年間にわたる密着映像です。成り立ちを教えてください。
森且行さん(以下、森):最初のきっかけは『あさチャン!』(TBS系列、2021年9月終了)かな。
落車のあと何度かオファーがあって断っていたんだけど、(当時、番組の総合演出を務めていた)穂坂(友紀)監督からいただいた直筆のお手紙を読んで決めました。
そのあとは『情報7daysニュースキャスター』(TBS系列)に出ました。ビートたけしさんの大ファンだから(笑)。待ち受けもたけしさんにしてるくらいなので。
――そうなんですね。
森:それから『情熱大陸』(TBS系列 本ドキュメンタリーの前身となった密着ドキュメンタリー)はどうですか?って言うから、「いいですよ」と言ったら、監督が「次は映画どうですか」って(苦笑)。
◆全国60か所を超える公開に驚き「逆に心配です」
――どんどん進んで、しかも大きくなっていきますね。
森:まさか映画?って思ったんですけど、TBSドキュメンタリー映画祭というのがあるんですよね。
監督が、「撮ってる素材はたくさんあるから、あと何日か追わせてくれれば映画になる」と。
断ってたんですけど、「絶対成功させます!」と監督が。僕も「じゃあ、ファンの方が観て喜んでくれるような映画ができるのであれば、お任せします」と、最後はその情熱に負けました。
<※TBSドキュメンタリー映画祭2023では、2年間を追ったドキュメンタリー『オートレーサー森且行 約束のオーバルへ』が上映された。>
――本作は、さらに1年間の密着を加えて再編集された劇場版です。
森:映画祭のときは、僕がまだ復帰できなかったんです。「復帰戦まで追わせてください」と言われて、「自分のせいで復帰戦まで追った映像が入らなかったんだから、しょうがないな」と。
でも今回は、映画館で公開されるんですよね。5~6か所でやるだけかと思っていたら、全国60か所を超えてるって。逆に心配です(笑)
◆自分が知らなかった周囲の様子を観られて嬉しかった
――完成した劇場版をご覧になった感想は?
森:自分のリハビリの様子を見ても、特に何も思わないんです。自分自身がやってきたことだし。でも自分が知らなかった部分、復帰戦に向かう途中の、お世話になっている担当の石井(桂輔)先生の姿や、兄貴や同期のインタビューを観て、めちゃくちゃ嬉しくなりました。
――石井先生も、心から喜んでいるのが伝わってきました。
森:あんな大人の人がぴょんぴょん飛び跳ねてね。しかも石井先生、イケメンでしょ(笑)。
本当に僕の辛い時期に一緒に戦ってくれた先生だからこそ、ああいう涙も流してくれたんだろうなって。
これまで5回手術してるんだけど、石井先生は、背骨を担当してくれていて、背骨のボルトを抜く手術を含めて3回やってくれてるんです。
いまもしょっちゅうレースを観に来てくれてるんですけど、僕がレースに戻る前のリハビリ中もひとりで観に行って、リハビリに足りない部分を考えたりしてくれて。本当に感謝しかないです。
◆心に刻む中居正広からの言葉「森くんにはいい人でいて欲しい」
――リハビリの様子も多く映っていますが、森さんは、感情的になることが一切ありませんね。
森:そうですね。そこはコントロールできていたので、先生もビックリしてましたね。
「これだけの大ケガなのに、すごい性格してますね」って。他の人にも言われたかな。普通だったら、「痛いから早くしてくれ」とか言うけど、僕は「お願いします」と言うって。だって、命を助けて治療してもらっているのに、そんなこと言えませんよ。
――普段から何か心がけているのでしょうか?
森:中居くんが「森くんにはいい人でいてほしい」って言ってくれた言葉が大きいのかな。それがずっと頭の中に残っているんですよね。だから八つ当たりとか、そういうのは絶対やっちゃいけないことだなと思ってる。「いい人でいてくれ」って、心に刻んでるかな。
◆僕の中で、5人はあのときの姿で止まっている
――森さんはSMAPのメンバーの言葉を、いまもしっかり胸に留めているんですね。
森:僕の中で5人の姿って、僕が出ていったあの瞬間で止まっているんです。あのときの、そのままの5人なんですよね。
でも同時に、何十年経っても、コメントくれたりするじゃないですか。なかなか会ったりはできないと思うけど、復帰したときも、みんながコメントを出してくれて。ほんと、めちゃくちゃ嬉しかったですよ。いまも少しは僕のことを見ててくれるんだなと思って。
――今もお互いの中にちゃんと存在しているんですね。
森:だからすごいグループだったんだと思います。僕は彼ら5人に出会えて、すごくいい時間を過ごせて、本当に最高です。それだけじゃなくて、自分のわがままでこうして好きなオートレースに来ても、ちゃんとコメントも出してくれる。本当にいい仲間を持ちました。
<取材・文・撮影/望月ふみ>
(C)TBS
ドキュメンタリー映画『オートレーサー森且行 約束のオーバル 劇場版』は11月29日(金)より新宿ピカデリー、角川シネマ有楽町他にて全国公開
【望月ふみ】
70年代生まれのライター。ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画系を軸にエンタメネタを執筆。現在はインタビューを中心に活動中。@mochi_fumi