「突然ハゲたらどうする?」…大好きだった帽子が「かぶらなければいけない」ものになった。「視線が怖い」〈体験談〉【専門医Q&A】
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私は24年3月「多発型円形脱毛症」を発症しました。自分が円形脱毛症になって治療法で悩み、「病院難民」「病院ジプシー」……病院を転々として病院探しをする人、外見の変化に悩む人がたくさんいることを知りました。また、病名は広く知られているのに、大きく誤解されている病気のひとつだと気づきました。
今回は、多発型円形脱毛症の私が、「脱毛斑(脱毛している箇所)を人に見せないようにする」苦労、脱毛による「アピアランスケア(外見の変化をカバーするケア)」のために選択した方法をお話します。
抗がん剤など薬剤性による脱毛、先天性乏毛症など、さまざまな理由で髪や体毛がなくなってしまう「ヘアロス」患者の方の参考になればうれしいです。
ヘアロス #12
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「たかが円形脱毛症でしょ」という視線
「多発型円形脱毛症」で、大きい脱毛斑は7cm程度。これが後頭部に3つ。側頭部、襟足など合わせて7か所+α。子どものころから剛毛・多毛・くせ毛・白髪……髪にはコンプレックスしかありません。それでも、3日おきに脱毛班が増えていく恐怖、髪を抜けていくことへの不安は筆舌に尽くしがたいものでした。
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多発型円形脱毛症になり、日々感じることは「鏡を見るのが怖い」「視線が怖い」「うしろ姿を見られるのが怖い」「外に出るのが怖い」「人前に出るのが怖い」「心ない言葉がつらい」「おしゃれができない」「死ぬ病気ではないのはわかっているけど、根治はしないこと・再発率の高さへの絶望と不安」。
でも、直面した悩みは「脱毛した頭でどうやって⽣活していく? 仕事は?」という見た目に関するものでした。
脱毛は、きれいにツルっと抜けるわけじゃなく、まだらに、虫食いのように脱毛斑ができます。スキンヘッドのような美しさはありません。「脱毛班を見られたくない」という気持ちはもちろんありましたが、「脱毛斑を見るほうも気を遣う」と思い、まわりに気を遣わせないように、円形脱毛症になったことを伝えたうえで帽子で隠し、明るく振る舞っていました。「脱毛斑を人に見せないようにする」苦労がありました。家族でもショックを受けるかなと、家の中でも医療用帽子をかぶっていました。
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外見に症状が出る病気に罹患している人は、「普通」とは異なる外見ゆえに生きづらさを抱えがちです。がんサバイバー、円形脱毛症などヘアロス経験者にたくさんお話を伺いました。当事者は病気自体を隠したいと思っている人が大半ではないでしょうか。あえて自分から病気のことを発信なんてしたくはない。でも、仕事をするうえで人前に出るには”帽子をかぶらなければいけない”ので、伝えるしかありません。「たかが円形脱毛症で」という応対に傷つくこともありました。
「病気にもランクがあったんだね」。これは映画『夜明けのすべて』の主人公、重いPMS症状を抱えている藤沢さんのセリフ。全頭脱毛なら、がん治療による脱毛ならOKですか?と思いながら、このセリフを何度もかみしめました。
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©瀬尾まいこ/2024「夜明けのすべて」製作委員会
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自分の心と折り合いがついたら、「髪が抜けたんだ」「かじられたアンパンマンみたいになったよ」って言える。ヘアロスを受け入れるのには、それだけ時間がかかるんです。
>>こんな頭じゃ、外に出れない
大好きだった帽子が、「かぶらなければいけない」ものになった
私はもともと剛毛・多毛なのもあり、後頭部と側頭部の7つ+αの脱毛斑は前から見たらわかりません。でも、うしろ姿は「かじられたアンパンマン」。まさに、びんぼっちゃまです。
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脱毛斑を隠す手段として医療用ウィッグも考えましたが、私はトップに脱毛班はなく、トップの毛量が多い。第一選択肢としてウィッグは違うと思い、とりあえず帽子で隠すことにしました。もともと帽子が大好きなので、把握できない程度に帽子を持っています。でも、脱毛症になって「かぶりたい帽子」が「かぶらなければいけない帽子」になりました。
季節はちょうど春~初夏。脱毛してからとくに、頭皮の汗が気になるようになりました。脱毛症の方、がんサバイバーの方に話すと「わかる~」と共感されるのですが、脱毛して改めて、髪の毛は頭皮の汗が流れ落ちるのを抑えてくれていたんだと気付かされます。また、髪がないと体温調節もうまくいきません。私はまだ脱毛症になって冬は経験していませんが、「冬は頭が寒い」とみんなが言っています。
普通の帽子でもいいのですが、帽子による蒸れと汗が気になりました。また、脱毛班は当然ながら髪がなく、頭皮が露出しています。頭皮が帽子の生地に当たると痛いのです。そこで検索してたどり着いたのが「医療用帽子(ケア帽子)」です。
>>医療用帽子(ケア帽子)って知っていますか?
医療用帽子(ケア帽子)との出会い
「医療用帽子(ケア帽子)」は、とくに定義があるものではありません。抗がん剤治療で脱毛した方や脱毛症患者向けのもので、頭皮を保護する、頭皮にやさしい素材でできた帽子をさします。
夏は紫外線、冬は寒さから、就寝時には枕のこすれから頭皮を守ってくれます。脱毛した髪が散らばるのを防ぐ役割もあります。そして、帽子をかぶることで、脱毛による外見(アピアランス)の変化を隠すことで、精神的負荷をやわらげる効果もあります。
ネットで「医療用帽子」を検索すると多少のショップはでてきますが、種類はあまりにも選択肢が少なく、ほとんどがワッチキャップ。あってもキャスケット。
医療用帽子はおもに全頭脱毛の方向けなので、髪の毛があるように見えるデザインなのです。帽子は大好きですが、ワッチキャップは苦手。でも、仕方ない。頭皮にやさしい素材の医療用帽子で、少しでもおしゃれ見えするものを探して購入しました。シームレスやシルク素材、通気性がいい、UV加工などやさしい帽子で快適です。なにより吸汗してくれることが助かりました。
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右の黒レースは葬儀用に急遽購入。花チュール付きはお出かけ用。左のシルク無地はおうち用。
【東京医科大学病院皮膚科 入澤亮吉先生Q&A】
Q:冬は寒さ対策として、夏は紫外線対策として、脱毛中は帽子をかぶったほうがいいとは思いますが、帽子による蒸れや擦れは脱毛には影響はありませんか?
A:蒸れや擦れは脱毛にはまったく問題ないと思いますね。紫外線は頭皮にもよろしくないので、帽子をかぶることはすすめています。外傷防御にもなります。エビデンスレベルは低いものの、円形脱毛症患者のQOLを改善させる効果があるといえます。
▶▶続き▶▶マナー警察のみなさん、「アピアランスケア」のための帽子着用も「マナー違反」だと思いますか?【体験談】( https://otonasalone.jp/?p=450004&preview=true )
Q&A監修:東京医科大学病院皮膚科、入澤亮吉先生
日本皮膚科学会認定皮膚科専門医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医、日本性感染症学会認定医。日本皮膚科学会東京支部代議員、日本皮膚悪性腫瘍学会評議員、日本褥瘡学会評議員。1988年東京医科大学卒業。同大学病院皮膚科病棟医長を経て、2021年より東京医科大学病院皮膚科 講師。特定非営利活動法人 円形脱毛症の患者会 監事
※日本皮膚科学会に基づいた診療
※病院によって、治療法が異なることもあります