「トランプ再来」にニンマリの金正恩と対称的な習近平の“関心ナシ”

 米大統領選の結果、トランプ氏が勝利したが、これを各国の指導者たちはどう思っているだろうか。

 まずトランプ再選を最も喜んでいるのが、戦争を続けるイスラエルのネタニヤフ首相だ。イスラエルは昨年10月以降、パレスチナ自治区ガザ地区やレバノンで過激な攻撃を続け、ガザ地区では犠牲者数が4万人を超えているにもかかわらず手を緩める気配を見せない。それによって国際社会ではイスラエル批判が広がっているが、厳しい視線を注がれるネタニヤフ首相にとってトランプ再選という最高のニュースが飛び込んできた。

 今回のトランプ再選で真っ先に祝福のメッセージを送ったのがネタニヤフ首相であり、最大のパートナーを得たとして、今後さらに軍事行動をエスカレートさせる恐れがある。トランプ氏は極度の親イスラエル主義であり、おそらく世界の指導者の中で最も喜んでいるはずだ。

 また、北朝鮮の金正恩総書記も、トランプ時代には3回も対面で会談を行った関係であることから、北朝鮮を完全に無視したバイデン政権が崩壊したことを嬉しく思っているだろう。トランプ氏も選挙戦の期間中、「私が大統領に戻ることを金正恩氏も望んでいる」などとラブコールを送っていたことから、外交面の今後について明るいと見ているに違いない。

 一方、不安を覚えるのが台湾と韓国だ。トランプ氏は、台湾はもっと防衛費を増額するべきだ、半導体産業を米国から奪って儲けている、などと不満を示しており、バイデン政権の台湾政策から脱却し、軽視する路線を突き進む可能性がある。台湾では5月に頼清徳総統が就任したが、中国は大規模な軍事演習を繰り返しており、トランプ再来は台湾にとっては避けたかったシナリオだろう。

 韓国の尹錫悦大統領も悩んでいる。トランプ氏は北朝鮮と独自に関係改善を図る可能性があり、北朝鮮がそれを拒否することは考えにくい。尹大統領は北朝鮮に強硬姿勢で、同じ姿勢に徹するバイデン政権との結束を図ってきたが、トランプ再来となるとその結束が弱まることは避けられないだけでなく、朝鮮半島の安全保障をめぐって米朝が韓国を無視する形で進める可能性があり、正直困っている。

 そして、米大統領選を最も悲観的な目で見ていたのが中国だ。バイデン大統領だろうがトランプ氏だろうが中国への厳しい姿勢という点では大きな違いはなく、新政権の対中姿勢は習近平主席もすでに織り込み済みだ。中国としてはどちらが勝っても米中対立に変わりはないことから、注目しても仕方がないという目線だったと思われる。

(北島豊)

2024/11/15 6:00

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