【2024年版】「円形脱毛症」の治療法は?「頭皮に注射」⁉特定の免疫を抑える新薬も「保険適用」に【ヘアロス】

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今回は、現段階の最新版である日本皮膚科学会をもとに、2017 年版以降変わった点を追記して配信します。

 

誤解や偏見の多い疾患のひとつ「円形脱毛症」。髪だけでなく全身の毛が抜けてしまうこともあり、治療が難しい疾患です。円形脱毛症の治療法について、脱毛症外来のある東京医科大学の入澤亮吉先生に伺いました。

 

 

<<前編<<「円形脱毛症」の種類は? 重症度? 原因は?( https://otonasalone.jp/451744/ )

ヘアロス #7

 

円形脱毛症、ガイドライン2024年改訂版の大きなポイント

2024年の改訂版ガイドラインでは「推奨度の強さ」がABCDから123に変更されました。

1:強い推奨 治療により得られる利益が大きく、それによる負担を上回るため行うようすすめる

2:弱い推奨 治療により得られる利益の大きさや有効性・安全性は不確実である、あるいは治療によって生じうる害や負担と拮抗していると考えられる

3:推奨しない 判断の根拠となる情報の普遍性に乏しい、あるいは治療法が本邦の医療体制にそぐわないなどの理由から、現時点ではすすめられない

 

 

また、ブレイクスルーがなかった円形脱毛症の治療でしたが、2022年6月末にJAK1/2阻害剤が新たに重症円形脱毛症に保険適用になりました。

 

2023年9月には、重症円形脱毛症に適応をもつ JAK3/TECファミリーキナーゼ阻害剤を用いた保険診療が可能になりました。

 

 

>>最新の円形脱毛症の治療法は?

円形脱毛症の治療法は?

小さな脱毛斑の場合は自然に改善してしまうこともありますが、徐々に多発化したり、拡大したり、何度も再発する場合は早めに専門家のいる皮膚科を受診しましょう。とくに急激に頭部全体に毛髪が抜けてきたときは、早期のしっかりとした治療が有効なことがあります。

 

日本皮膚科学会が発表しているですすめられている治療として、ステロイド局所注射、局所免疫療法、ステロイド外用療法、経口JAK 阻害薬またはJAK3/TEC ファミリーキナーゼ選択的阻害薬などがあります。単発型、多発型などの分類と重症度によって治療法は異なります。

 

 

●ステロイド局所注射〈推奨度1〉

脱毛部位に副腎皮質ステロイドを直接皮内に注射します。効果は非常に高いですが、注射による痛みを伴うのが難点です。また、脱毛部位が広いと注射回数も多くなるため、あまり広範囲なものには向きません。単発型および多発型の成人症例にすすめられます。汎発型の場合、まゆ毛のみに打つことは可能です。4~6週に1回の割合で始めていきます。

 

 

●局所免疫療法〈推奨度2〉

自然界には存在しない合成物質SADBE、DPCPは、ほとんどすべての人がかぶれる物質です。これを脱毛部位に外用し、アレルギー性接触皮膚炎(かぶれ)を繰り返し起こすことで免疫バランスを変化させ、円形脱毛症の改善をねらったものです。

 

局所的なかぶれという副作用はありますが、全身的な副作用はほとんどないので安心して継続できる治療法です。保険適応外で自費診療になりますが高額ではありません。「年齢を問わず、S2 以上の多発型、全頭型や汎発型の症状固定期の症例には局所免疫療法を行ってもよい」とされています。

 

 

 

●ステロイド外用薬〈推奨度1〉

副作用が少ないため、最も一般的に行われる治療法です。脱毛が広範囲の場合はほかの治療法と併用されます。単発型から融合傾向のない多発型の円形脱毛症に対しては、1 日1~2 回のステロイド外用療法を行います。

 

 

●ステロイド内服、ステロイド点滴(静脈注射によるステロイドパルス療法)〈推奨度2〉

ステロイドには免疫抑制作用があります。毛包の周囲に浸潤しているリンパ球の機能を抑える作用によって、発毛を促します。ステロイドの全身投与は有効ですが、ステロイドはリンパ球のみならず人のほとんどすべての細胞の機能も抑えてしまう作用があるため、全身的な副作用があります。発症初期の急速に進行しているS2 以上の成人にすすめられます。点滴での全身投与には通常、入院が必要になります。

 

 

●経口JAK 阻害剤、JAK3/TEC ファミリーキナーゼ選択的阻害剤〈推奨度1〉

オルミエントⓇ錠2 mg/4mg、リットフーロⓇカプセル50 mg の2 剤において、重症かつ難治性の円形脱毛症に対する治療が承認されており保険適用されます。オルミエント®が15才以上に適応があるのに対し、リットフーロ®は12才以上に適応があり、青少年での治療法の選択肢が増えました。

 

オルミエント®は、JAK1/2 選択的阻害薬で、2022年6月に円形脱毛症に対しての適応が承認された新薬です。円形脱毛症にかかわる、細胞のJAKという部分を選択的に抑える内服薬です。関節リウマチの治療薬として、アトピー性皮膚炎やSARS-CoV-2(新型コロナウイルス感染症)による肺炎の治療薬としても承認されています。

 

リットフーロ®は、JAK3/TECファミリーキナーゼ選択的阻害薬です。オルミエント®とリットフーロ®にはその効果に大きな差はないと言われています。副作用については比較的安全に使用できる薬ですが、定期的な検査が必要になります。

 

ただし、以下の3 つの条件をすべて満たす場合に限りすすめられます。

(1)円形脱毛症の診断および治療に熟練した医師が在籍し、かつJAK 阻害薬等を用いた治療環境が整った施設であること

(2)添付文書に明記された適応をすべて満たした症例であり,治療上の有益性が危険性を上回ると判断されること

(3)治療の開始、継続、中止について、治療的意思決定(TDM)を患者自身と繰り返し共有できる状況を維持できること.

 

 

●紫外線療法(エキシマライト、エキシマレーザー、narrow-band UVB 療法)〈推奨度2〉

高出力の紫外線を脱毛斑に照射することで、毛包周囲のリンパ球や抗原提示細胞の機能を抑制します。週1~2回の照射が必要です。主に単発型または多発型の成人に行います。

 

 

 

>>どのくらい治療すると、髪が生えてくるの? いつ治る? 予防方法は?

「根治」のための治療方法はない

円形脱毛症の治療は対症療法です。根治に至る治療法は確立されていません。軽快・増悪を繰り返し、エビデンスのある治療法は少なく、治療に難渋することもあります。重症化してからの病歴が長いほど予後はよくありません。

 

( https://otonasalone.jp/451744/ )のような治療法を行いますが、発毛が認められない場合もあります。発毛が認められてからも、休薬後の再発率も高いといえます。また、再発を予防できる治療法はないとされています。

 

何度も円形脱毛症を繰り返す方は、疑わしい「誘因」を少なくすることが再発予防につながる場合もあるかもしれません。また、重度の円形脱毛症に罹患した経験のある方は、小さな脱毛斑の再発でもただちに治療を開始することをおすすめします。

 

 

生活で注意すること

精神的・肉体的に余裕のある生活

適度な休息

バランスのよい食事

適切なヘアケア

禁煙

 

 

円形脱毛症は根気強い治療が必要になります。繰り返したり、なかなか発毛がみられないこともあり、治療が長期に渡ります。見た目の印象を大きく左右するので、患者さんの悩みは深く、QOL(生活の質)にも大きく影響します。

 

QOL改善のため、アピアランスケアとして、ウィッグを使用したり、医療用帽子やヘアスカーフなどを利用してみるのも一案です。改訂版のガイドラインでは「かつらの使用」が〈推奨度B〉から〈推奨度1〉になりました。

 

 

よくなっても油断せず、悪くなってもがっかりしないでください。今は多様性の時代です。髪の毛がなくたって、気にせず街を闊歩できる……そんな日がすぐそこにきている気がします。

 

また、”毛髪ビジネス”には要注意! 特にすぐれた発毛効果がないのに、効果があると謳って過剰な料金を請求するグループもあるので気をつけてください。

 

 

<<前編<<

 

 

※引用、参照:日本皮膚科学会

※病院によって、治療法が異なることもあります

 

監修:東京医科大学病院皮膚科、ワタナベ皮膚科( https://hifu-110.com/ ) 入澤亮吉先生

日本皮膚科学会認定皮膚科専門医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医、日本性感染症学会認定医。日本皮膚科学会東京支部代議員、日本皮膚悪性腫瘍学会評議員、日本褥瘡学会評議員。1988年東京医科大学卒業。同大学病院皮膚科病棟医長を経て、2021年より東京医科大学病院皮膚科 講師。特定非営利活動法人 円形脱毛症の患者会 監事

 

 

【ヘアロス】

 

2024/11/11 22:32

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