暗殺者の語源にもなった暗殺教団「アサシン」は実在したのか?
今日において、「アサシン」(Assassin)という言葉は要人を狙う暗殺者という意味で広く知られている。この言葉は、11世紀から13世紀の間に存在していたと言われているイスラム教の「暗殺教団」が由来となったと言われている。
暗殺教団”アサシン”は、11世紀中ごろにハサン・サッバーハという人物によって設立されたニザール派の教団として誕生した。イスラム教は、632年のムハンマドの死後、その後継者を巡る争いから、少数派のシーア派と多数派のスンナ派に分裂した。その後、9世紀ごろにはシーア派内部でさらに指導者に関連した論争が起こった。
このシーア派からイスマイール派が内部分裂し、イスマイール派支配によるファーティマ朝が建国されるのだが、またもや後継者争いによって分派が発生することとなった。それこそがニザール派である。
指導者ハサンは、イラン高原を拠点とし「山の長老」(シャイフル・ジャバル)と呼ばれていたものの、「退廃的な異端者」と呼ばれスンナ派はもとよりシーア派からも非難されていたという。
そんなごく小規模であったニザール派の教団は、その生き残りのためにハサン指導のもと、戦闘術に優れた戦士が育成されていった。こうした中で生み出され重要視されていたのが「暗殺術」であり、敵地潜入から拷問、さらには自死の心構えといった徹底的な訓練を叩き込み、敵陣から恐れられていたという。
要人の排除・暗殺に主眼を置いたこの活動は、結果としてシーア派の勢力拡大にも寄与する形になった。ハサンは敬虔深く戒律については非常に厳格であり、息子ですら戒律を破ったことで処刑したほどであるという。一方では、戒律への忠実さや禁欲的な生活によって信者からの信頼は非常に篤く、ハサンが死んだ後も後継者によって暗殺の意志が継がれていき、およそ150年にも渡って暗殺が続けられたという。この恐怖の暗殺教団の噂は、のちに遠征していた十字軍の耳にも入り、これによってアサシンの名が世界的に知られるようになっていったと言われている。
アサシンは、勢力を拡大する恐怖の存在であると同時に、その実態があまりにも謎めいていたため数々の伝承や噂と結びつけられていったという。例えば、アラビアに古くから伝わるという「山の翁」伝説がある。これは、山の奥にある秘密の楽園に住む一人の翁がおり、彼はある若者を楽園に呼んで手厚くもてなし秘薬を与えていたが、一度帰された若者は秘薬や楽園の虜になってしまい、山の翁の忠実なしもべとなってしまうという内容だ。暗殺の際に大麻を利用していることとも合致しているため、実はこの山の翁はハサンのことを言っている、というような風聞が広まっていたという。
ただ、この暗殺教団については実在に疑問を呈する意見もある。例えば、暗殺教団がその暗殺に利用していたことでその用語が広まり、また教団の代名詞とされた大麻を意味する「ハシーシュ」については、「麻薬中毒者」を意味する罵倒として古くからある語であり、しかもニザール派に用いられたケースはほとんど見られていないという。ニザール派は確かに存在しており、暗殺教団に近い何らかの組織はあった可能性は考えられるが、一般に語られる麻薬で要人暗殺を繰り返していたという暗殺教団アサシンそのものについては、具体的な証拠も無くそれ自体が多様な風聞によって形成された都市伝説ではないかとも考えられているという。
【参考記事・文献】
暗殺者(アサシン)の語源となったイスラムの「暗殺教団」誕生の歴史
https://nazology.kusuguru.co.jp/archives/110870
暗殺教団とハサン・サッバーハ:アサシンの語源となった教団
https://mythpedia.jp/other/assassin.html
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【本記事は「ミステリーニュースステーション・ATLAS(アトラス)」からの提供です】