『おむすび』第13回 風見先輩の「タイプ」で明らかに……主人公・結には長所がない
昨日、おとといとなんだかイライラするシーンが多かったNHK朝の連続小説『おむすび』ですが、今日はそうでもなかったな。特に、野菜染めという野菜クズを煮出した汁を染料にして布を染める染物があるということを知らなかったですし、おばあちゃん(宮崎美子)がその段取りをイチから説明してくれるパートはとっても良かったです。
玉ねぎで、あんなに淡いきれいな黄色が出るなんてねえ。ステキねえ。というわけで第13話、振り返りましょう。
■ありがとうを言える人になりたい
リサポン(田村芽実)がホントに健気でいい子なんですよね。結ちゃん(橋本環奈)に「学校で話しかけんな」って一蹴されても、変な野球部から不良扱いされても、ずっとニコニコしててくれる。
今回も、昇降口に結ちゃんを見つけるとニコニコ寄ってきて「パラパラノート」なる手描きの振り付けイラスト集を持ってきてくれた。なぜなら結ちゃんが「本気でパラパラを習いたい」と言ったからだし、そのわりに踊りの練習が捗っていないことを知っているからだ。
この「パラパラノート」を受け取った結ちゃんは「へぇー」と持ち前の低音ボイスで一瞥をくれるだけ。どうあれ、こういう場面で「ありがとう」を言える人になりたいよねと思うんだ。本心ではパラパラやりたくないのはもうわかるけど、リサポンは結ちゃんのために時間と手間をかけて「パラパラノート」を作ってくれたわけです。その気持ちは、蔑ろにしてはいけないと思うんですよ。人としての話ね。人として。「へぇー」じゃないんだよ。
そして結ちゃん、続いて現れた書道部の風見先輩(松本怜生)に対しては表情が一変。
「部活の後、ちょっと時間ある? 話したいことがあるんやけど」とにじり寄られると、おっきいおめめをキラキラさせています。ホント、現金な人よね。
そんなこんなで放課後、部活が終わって部室で風見先輩と結ちゃんの2人きりになるわけですけど、ここでの結ちゃんの「告られ待ち」感も全然わかんないんだよな。結果としては風見先輩は告白するつもりなんか全然なくて、結ちゃんの筆入れの野菜染めに興味があっただけだったんだけど、めちゃくちゃ振りを入れてるわけです。にじりよって見つめたりするし、途中で邪魔が入ったりもするし、ここは結ちゃんに感情移入してドキドキしちゃって然るべきシーンのはずなんだけど、「なんでもいいからさっさとやれ」と思ってしまう。
この場面への伏線として、風見先輩がほかの部員と「好きなタイプ」について話しているシーンがありました。
「まあ、小柄で、親しみやすくて、元気で、笑顔がかわいい子ですかね」
この言葉を人づてに伝えられた結ちゃんがドギマギしたりしてるんだけど、まず風見先輩のご意見の内容のなさにゲンナリしてしまう。「何かに一生懸命取り組んでいる子」とか「人に気を使える子」とか、なんでもいいから中身の話をしてくれよ。あんた顔がいいのはわかるけど、ルックスと印象論でしか女の子を語れないなら、ちょっと王子様としては物足りないわよ。
あと、結ちゃんに「親しみやすくて元気で笑顔がかわいい」っていう印象も全然ないんだよな。ここまでの結ちゃんって「とっつきにくくて、いつもイライラしてて、顔の造形だけかわいい」という女の子なのよ。
■長所がなかったのか(発見)
ここで気づいたんだけど、風見先輩の「タイプ」は書道部の恵美ちゃん(中村守里)が結ちゃんに伝えてるわけです。
「これもう、結ちゃんやろ!」
恵美ちゃんに「風見先輩のタイプは結ちゃんっぽい」という情報をしゃべらせることで、放課後のツーショットタイムでの結ちゃんの期待感を煽る役割を与えられたシーンです。
つまり、結ちゃんに当てはまるホメ言葉を風見先輩が言う必要があった。
それが、ルックスと印象論しかなかったってことなんだ。何も一生懸命取り組んでないし、気も使えないし、ここまで『おむすび』というドラマが結ちゃんという人物の内面的な長所を何一つ提示してこなかったという証拠になってるんだ、風見先輩の「タイプ」が。
やっべーね。第13話だぜ。
(文=どらまっ子AKIちゃん)