【24年秋ドラマ】『嘘解きレトリック』第2話 ほのぼの路線の裏で“半・倒叙型”ミステリーを構築する手腕

 人のウソを聞き分けることができる特殊能力を持つ鹿乃子(松本穂香)と貧乏探偵・左右馬(鈴鹿央士)がコンビを組んで事件を解決していく1話完結型のミステリー『嘘解きレトリック』(フジテレビ系)も第2話。

 昭和初期の街並みを再現したセットとレトロな雰囲気で月9らしからぬ、ほのぼの路線ですが、原作コミックの再現度も高く、なかなか良い感じです。

 振り返りましょう。

■これはいい伏線回収

 人のウソが聞き分けられる能力によって生まれ育った村では周囲から気味悪がられ、居場所のなかった鹿乃子さん。奉公に出て出会った探偵の左右馬はその能力を「便利だ」と言って、探偵助手として働くことになりましたが、今回はそんな鹿乃子に、探偵助手としての初めての仕事が舞い込みました。

 大家のお使いで、お金持ちの藤島家に届け物に上がった左右馬と鹿乃子。先日、鹿乃子が道端でフラフラしていたところ藤島家の運転手が運転するクルマにはねられそうになったことがあり、藤島家の主人である幸弘(杉本哲太)、娘の千代(片山友希)、運転手・耕吉(宮崎秋人)とは顔見知りです。

 無事に届け物を終え、貧乏探偵コンビが出された高級カステラに狂喜乱舞していると、そこに頭から血を流した運転手・耕吉が駆け込んできます。

 いわく、娘の千代が観劇に訪れた劇場で誘拐された。耕吉の手には、犯人たちから押し付けられたという脅迫状が握られていました。耕吉は、劇場内をくまなく探したが、千代の姿はなかったといいます。

 ウソが聞き分けられる鹿乃子、この耕吉の一連の発言が全部ウソであることがわかってしまう。それを左右馬に伝えると、持ち前の推理力でもって耕吉のウソを突き崩していくのでした。

 結果、耕吉は兄が小豆相場で作った借金を返すために狂言誘拐を企てましたが、千代を絶対に傷つけない方法を模索したために計画が中途半端になり、鹿乃子の能力と左右馬の推理によって真相が明らかになってしまいました。

 ご主人の幸弘はそんな耕吉を許し、左右馬にも十分な報酬を支払いました。千代は、鹿乃子に「左右馬のことを宣伝してください」と頼まれたこともあって一部始終を新聞に投書。左右馬が多額の報酬を得たことを知った商い人たちが、ツケの回収を求めて左右馬の事務所に押し寄せるのでした。

「順番に並んでください!」

 前回、いつか相談者が押し寄せて「順番に並んでください!」と言えるようになればいいねと話していた左右馬と鹿乃子、こんな形でその願いが叶うなんてね。というステキな伏線回収でした。「伏線回収」って、すっかり一般的な用語になりましたけど、こんな感じで嫌味なく回収される伏線は気持ちがいいですね。今回はそんな感じ。

■結果的に“倒叙”になる

 このドラマにおいて、「鹿乃子がウソを聞き分けられる」という能力については疑いなく“ホンモノ”ということになっています。鹿乃子の目の前でウソをついた人間にはエフェクトがかかるので、鹿乃子はその能力による判断についてウソをつけない。そういう設定です。

 耕吉が言う「千代が誘拐された」「千代は劇場にいない」という証言はウソ。視聴者にはとりあえず、その情報だけが与えられるわけです。

 かの『警部補・古畑任三郎』(フジテレビ系)で有名になった“倒叙型”というミステリーのスタイルがあります。ドラマの冒頭で犯人が殺人事件を起こす場面を見せてしまい、犯人を明かした上でその方法や動機を後から明かしていくことでドラマにしていくスタイルです。

 この『嘘解きレトリック』の今回の事件は、犯人が誰だかはわからない。何が起こったのかもわからない。ただし、耕吉がウソをついていることだけはわかるという、謎を半分残した“半・倒叙型”とでも呼ぶべきスタイルが採用されています。

 前回は事前に事件の発生を防ぐことに使われた鹿乃子の能力でしたが、今回は解決の発端として作用しています。

 原作はドラマを追いかける形でちょっとずつ読んでいるんですが、もしかしたら鹿乃子の「ウソを聞き分ける」という能力を、いろんなミステリーのパターンに差し込むことでオリジナリティを出していく感じになるのかな。今のところ、ほのぼの空気感で中和されてますけど、事件と推理を構築するトリックメーカーとしてもけっこう凝ったことをやっているので、次回以降も楽しみです。こういうふうに軽い感じで深いことをやってるドラマってカッコいいんだよな。

(文=どらまっ子AKIちゃん)

2024/10/15 13:00

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