テレビ東京が即戦力の局アナ2人を中途採用、識者が語る“テレ東ならでは”の金銭的事情
テレビ東京にこの秋、山本倖千恵アナ(25)と嶺百花アナ(24)の2人のアナウンサーが中途入社した。ともにお天気キャスター、地方局アナとしての経験があり、近年人気女性アナの退社が相次いでいるテレ東にとっては、即戦力の補充となりそうだ。
山本倖千恵アナは、2022年に山形放送にアナウンサーとして入社し、夕方の情報番組『ピヨ卵ワイド』などを担当。高校時代はインターハイの陸上800メートルに出場したほか、4×400メートルリレーで3位に入った経験もある。
嶺百花アナは、青山学院大学在学中の2021年10月から約1年半、TBS系朝の情報番組『THE TIME,』のお天気キャスターを担当。写真週刊誌「FLASH」(光文社)が2022年6月に開催した『お天気キャスター総選挙』では1位に輝いている。2023年3月の大学卒業を機にキャスターを卒業し、その後大手証券会社に就職していた。
テレ東では、ここ数年人気アナが次々と退社している。2020年には現在タレントとして活躍している鷲見玲奈が退社、2023年にも同じくタレントとしてブレイク中の森香澄が退社した。さらに、今年に入ってからは、『ゴッドタン』などで人気を博した松丸友紀アナ、『日経ニュースプラス9』や『出没!アド街ック天国』などを担当した須黒清華アナ、『モヤモヤさまぁ~ず2』などを担当した福田典子アナ、森香澄アナと同期である池谷実悠アナが退社するなど、多くの人気アナがテレ東を離れているのだ。テレビ局関係者はこう話す。
「テレビ東京では松丸アナや須黒アナのようにある程度キャリアを積んでから退社するケースもありますが、森香澄さんや池谷アナのように入社10年未満の20代のうちに退社するパターンも多い。局アナとしてバラエティー番組などに出演し、自身のキャラクターがある程度確立されると、すぐに次のキャリアに向かうアナウンサーが多いということです」
テレ東に局アナの早期退社が多いのはどうしてなのだろうか。
「日本テレビの水卜麻美アナやテレビ朝日の弘中綾香アナなど、局アナとして全国的な知名度を持つアナウンサーはほんのひと握りです。そこまで上り詰めるには、全国ネットの人気番組に出演する必要があるし、もっと言えば『24時間テレビ』(日本テレビ系)のような国民的な番組の司会をしなくてはならない。
しかしネット局が少ないテレビ東京では全国的に人気となる番組も少なく、局アナのままで天下を獲るのは簡単ではありません。そうなると、どうしても他局のアナウンサーに比べて“結果が出ない時間”が長くなります。自身のキャラクターを上手く活かすチャンスが少ないという現実もあり、才能豊かなアナウンサーほど、上を目指して早期に退社しやすいという事情はあるでしょう」(テレビ局関係者)
局アナを中途採用するメリットは
早期退社によってできた穴を埋めるべく、即戦力を中途採用するテレビ東京。局アナの中途採用について、女子アナウォッチャーの丸山大次郎氏は「テレ東ならではのメリットがある」と話す。まずは採用コストだ。
「アナウンサーの新卒採用は、大規模な面接や新人教育などで大きなコストがかかります。その点、経験のある中途採用であれば、そのコストを圧縮できるというのが利点の1つです。そもそもテレビ局大手6社のなかで、テレ東は企業規模や待遇などの面で他5局に及ばないのが実情です。そのため有望な就活生は、よほどの動機がなければほかの5局に流れてしまうことも珍しくありません。それなら大手5局がほとんど手を付けていない中途採用で、地方局で活躍しているアナウンサーを採用するほうが効率的です。アナウンサーとしての将来的な期待値が読みやすく、即戦力として活用できる」(丸山氏)
地方局出身のアナウンサー側にもメリットがある。
「地方局アナウンサーは準キー局でもない限り、テレ東よりも給与が悪かったり、取材アポから編集までこなす激務だったりします。優秀で野心のある地方局アナウンサーであっても、その後のキャリアはフリーになる・他の地方局に異動するぐらいしか道がない。とはいえフリーで成功するのはいばらの道です。そこで“ちょうどいい選択肢”として浮上するのが、在京キー局で地方局よりも影響力のあるテレ東というわけですね」(同)
キー局でのアナウンサーの中途採用はレアケースだが、テレ東では2016年に元北海道テレビ放送の西野志海アナと元RKB毎日放送の福田典子アナが入社するなど、中途採用に柔軟な姿勢だ。しかしこの西野アナと福田アナはどちらもすでに退社しており、今後は中途採用した人材をしっかりと確保するという点での課題も見えてくる。
終身雇用の時代はとっくのとうに過ぎ去り、自身のキャリアアップのために転職をするのが当たり前となっている今の時代。“新卒のアナウンサーを育成する”という局アナの慣例も徐々に変わっていくのかもしれない。