異常人気の“Netflixドラマ”人気が衰えないワケは? 流行語化したセリフで、一気見する人がゴロゴロ出る
Netflixシリーズ『地面師たち』の勢いが衰えない。7月25日から配信が開始され、日本のトップ10(テレビ部門)で5週連続1位を記録。その後、1位の座を明け渡したものの、依然として5位以内にランクインし、安定した視聴数を獲得している。
配信直後はドラマ好きの人々が多く視聴するため、上位にランクインするのは珍しいことではない。本作がその後も上空飛行を維持できている要因として、ドラマの視聴習慣がない人を巻き込めていることが大きいのではないか。そして、その背景には『地面師たち』内に登場する数々のセリフが、ネット上で真似や改変が起きて広まる“ネットミーム”になっていることが挙げられる。
◆流行語メーカーとしての『地面師たち』
『地面師たち』の配信開始以降、SNSで『地面師たち』の劇中カットと共に、その登場人物が口にしたセリフを改変した“ネタ投稿”を見かけた人は多いだろう。SNSを開けばほぼ毎回『地面師たち』を目にするとなると、ドラマを普段見ない人でも知らず知らずのうちに興味関心を植えつけられてしまう。そのことが今日の人気につながっているように思う。
とはいえ、ドラマに限らず、アニメも毎クール多くの作品が放送されているが、『地面師たち』ほどネタとして使われてはいない。有名人が『地面師たち』のセリフをもじって投稿するケースも多いが、そもそもなぜ『地面師たち』はネタ投稿の素材として使われやすいのか。
◆「死人がゴロゴロ出るような」に代表される秀逸なセリフ
まずセリフそれ自体が秀逸であることが大きい。頻繁に見かける『地面師たち』を使ったネタ投稿として、ハリソン山中(豊川悦司)が1話で口にした「もっと大きなヤマを狙いませんか?」「死人がゴロゴロ出るようなヤマです」を変えたものがある。このパターンが支持されている理由として、とにもかくにも「ゴロゴロ」という擬音が持つ引力だろう。擬音は人の想像力を刺激してくれるため、短い文章との相性が良い。
また、「ゴロゴロ」という可愛らしい言葉と一緒に、神妙な顔を浮かべつつも圧倒的な色気を放っているハリソンの画像がセットになっており、そのギャップが面白さを生んでいる。もしハリソンのセリフが「死人が多く出るようなヤマです」「死人がたくさん出るようなヤマです」であれば、ここまで使われることはなかったはずだ。
◆セリフの強さとユーモアが“投稿欲”を駆り立てる
最近では「多く出る」という意味ではなく、「寝転ぶ様子」「具材の大きさ」を表す意味として「ゴロゴロ」を使用した、意表をついた投稿も見られる。ネタ投稿をフリにしたネタ投稿も続々出ており、「死人がゴロゴロ出るようなヤマです」に関する投稿はさらに広がっていくかもしれない。
また、ハリソンで言えば、裏切った“ある人物”を処刑する際に発した「最もフィジカルで、最もプリミティブで、そして最もフェティッシュなやりかたでいかせていただきます」というセリフも印象的。当然、インパクトが強かったため、使い勝手は悪いもののこのセリフを使用した投稿も散見される。「死人がゴロゴロ出るようなヤマです」をはじめ、セリフが持つ強さ、ユーモアが“投稿欲”を駆り立てているようにも思う。
◆ありえないシチュエーションでも脳内再生される演技
役者陣の演技力も言わずもがな。各ネタ投稿を見ていると「絶対にこのキャラは言わない」と思う内容でも、セリフを発している映像や音声が勝手に脳内再生されてしまう。そのことが投稿の面白さをぐっと引き上げている。使用率の高い後藤(ピエール瀧)の「もうええでしょ」はその典型だ。
役者陣が登場人物の性格や言動を汲み取ったうえで、視聴者の記憶に居座り続けられるほどのインパクトある演技を見せていたからこそ、画像とセリフを見ただけでもパッとその光景を思い浮かべることができ、ついつい笑えてしまうのだろう。
◆ネタ投稿に誘われて、一気見する人がゴロゴロ出る
こうした“地面師構文”はハリソンや後藤が主であったが、最近では竹下やオロチ(アントニー)が起用されるケースも目立つ。いずれも例によって脳内再生余裕なため、人気を博す可能性は高い。
つまりはネタ投稿に誘われて『地面師たち』を観た結果、役者陣の演技はもちろん、目が離せないストーリー展開に圧倒され、一気見する人が今後も増加していくことを予感させる。少なくとも年内は『地面師たち』はトップ10に残り続けるのではないか。
<文/望月悠木>
【望月悠木】
フリーライター。主に政治経済、社会問題に関する記事の執筆を手がける。今、知るべき情報を多くの人に届けるため、日々活動を続けている。Twitter:@mochizukiyuuki