『関心領域』A24製作×スティーヴ・マックイーン監督による大作ドキュメンタリー『占領都市』12月公開へ
『それでも夜は明ける』のスティーヴ・マックイーン監督とA24の製作で、ナチス・ドイツ占領下のアムステルダムを現代に“復元する”ドキュメンタリー映画『占領都市』が12月27日(金)に公開決定。予告編と日本版ポスター、場面写真が解禁された。
オランダの首都として栄えたヨーロッパ屈指の大都市アムステルダム。運河が流れる「水の都」としても知られる風光明媚なこの街には、第二次世界大戦中の1940年5月から5年間、ナチス・ドイツの占領下におかれた恐怖の記憶がある。
この間、人々は人権や言論の自由を奪われ、ユダヤ人を中心に多くの犠牲者が出た。アンネ・フランクのように強制収容所へ移送された人は10万7千人。統計では、その内の実に10万2千人が虐殺されたとされている。
「二度とこうした歴史を繰り返さないために」と映画化を構想したのは『それでも夜は明ける』でアカデミー賞作品賞ほか3部門を受賞した英国出身の映画監督スティーヴ・マックイーン。
スティーヴ・マックイーン監督
製作は『関心領域』を世に送り出したA24、歴史家で妻のビアンカ・スティグターが2019年に著した「Atlas of an Occupied City (Amsterdam 1940-1945)」を原作とし、傑作『SHOAH ショア』をも彷彿させる4時間11分の大作ドキュメンタリーとして完成させた。
アムステルダムを第2の故郷として暮らすスティーヴ・マックイーン監督が目指したのは、単なる知識や情報としてではなく、場所をして語らしめ、当時の記憶を鮮烈に蘇らせるような映画。
アーカイブ映像の使用やインタビューによる回想はあえて使わず、35mmフィルムで130か所にも及ぶ「現場」を正確に捉えることで、計り知れぬ恐怖の日々を体感させる。子どもたちの声が響くにぎやかな公園、美しいレンガ造りの家…それらの美しい風景も、忌まわしい虐殺の記憶を持っている。
これは、約80年前の過去と現在との距離を取り払う挑戦であり、スティーヴ・マックイーン監督とA24にしか到達しえないスケール感と野心に満ちた記念碑的な映画といえる。
解禁となった予告編は、英国や米国の有名メディアの絶賛コメントとともに、その一部を垣間見ることができるものとなっている。また、ポール・バーホーヴェンやヤン・デ・ボンといった名だたる監督とも仕事をしてきた撮影監督レナート・ヒレッジによる撮影は、「ドキュメンタリーの一般的な撮り方は自分に合わない」と話すスティーヴ・マックイーン監督がひと言「素晴らしい」と絶賛するほど。
音楽は同じくA24製作の『aftersun/アフターサン』でも劇伴を担当したオリバー・コーツが担当。王立映画アカデミー、ロンドン・コンテンポラリー・オーケストラ出身でチェリストでもあるコーツ氏は、クラシカルな素養と電子音楽を融合した幻惑的で浮遊感のある音像を作り上げた。
本作は、カンヌ国際映画祭スペシャル・スクリーニング部門で上映されたのち、英国インディペンデント映画賞で長編ドキュメンタリー賞やクリティックス・チョイス・ドキュメンタリー・アワードで監督賞・歴史ドキュメンタリー賞・撮影賞にノミネート。
日本でも今年3月にTBSドキュメンタリー映画祭の海外招待作品としてプレミア上映され、TBS DOCSが買い付けた初めての洋画作品(11月22日公開の『人体の構造について』)に続く2本目として、12月27日(金)より一般公開される(長尺作品のため、上映中にはインターミッションを1回挟んで上映される予定)。
『占領都市』は12月27日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷&有楽町ほか全国にて公開。
(シネマカフェ編集部)