日テレ、漫画原作のドラマまた制作中止…原作者と出版社の不信感の表れか

 日本テレビが来年4月期に放送する予定だった人気コミック原作の連続ドラマの制作を中止していたことが分かった。「ドラマの内容をめぐり、原作者・出版社との調整がつかなかったため」と伝えられており、作者を含めた漫画業界の日テレへの不信感の表れではないかと話題を集めている。

 制作中止になったドラマをめぐっては、9月28日付の「ピンズバNEWS」(双葉社)が、池松壮亮と浜辺美波の「シン・仮面ライダーコンビ」が再タッグを組み、来年4月クールの日本テレビ「土ドラ10」枠で「天才経済学者が経済弱者を騙すペテン師を騙し返す」という内容のドラマを放送予定だったが、クランクイン間近で制作中止になったと報道。記事では、制作中止の理由は「ドラマの台本の内容をめぐって、原作サイド、版元サイドとの話し合いの調整がつかなくなった」とされていた。

 日テレ側は9月30日に開いた定例社長会見で、「4月に放送するつもりで進めていたドラマの制作を中止した事実はある」と認めた。先述の記事を含め複数のメディアで「原作者・出版社との調整がつかなかったため」と報じられたが、局側は「今までも予定していたものを変えることは編成上の問題で何度もありましたので、今回特に何かを申し上げることはない」として中止理由の詳細は明かさなかった。

 局側は「よくあること」のように言ってはいるが、キャストが決まり、旬の人気タレントのスケジュールを押さえた状態から「制作中止」にするというのはただごとではない。以前ならテレビ局側が出版社を説き伏せ、押し切っていた可能性があるが、中止の決断になった背景には「セクシー田中さん問題」があったとみられている。

 日テレは昨年10月期に同名の人気コミックを実写化したドラマ『セクシー田中さん』を放送したが、原作者の芦原妃名子さんが制作側とトラブルがあったことをSNS上で告白。制作側との話し合いが十分でなく、脚本が原作からたびたび大きく逸脱していたため、その内容を受け入れられない芦原さんが終盤で自ら不慣れな台本執筆を手がけなくてはならない事態になり、精神的に疲弊したことを明かしていた。

 その後、今年1月に芦原さんが急逝。日テレ側は世間から強い批判を受け、7月に「原作者と丁寧にコミュニケーションを取り、ドラマ制作の方向性などについて相互理解を深めること」などを盛り込んだ、ドラマ制作における指針を発表した。また、日テレはムロツヨシの主演で今年4月期に人気コミック『たーたん』を原作にしたドラマを放送する予定だったが、事件の余波で急きょ制作中止になっている。

 業界内では、この事件があったことで原作者や出版社が日テレに不信感を抱き、納得できないことがあればしっかりと主張するという土壌ができ上ったのではないかと指摘されている。ドラマ制作側としても、規定された指針に従って進める必要があるため、昔のように「強引に押しとおす」ようなことはできず、引き下がったのではないかと推察されているようだ。

 ある意味で「健全化した」ともいえるが、いまだに「テレビ局の傲慢」を感じさせる出来事もあった。8月末に日テレ系の大型チャリティー特番『24時間テレビ』内で萩本欽一の半生を描いたドラマが放送されたが、萩本が9月中旬にラジオ番組で「普通は日本テレビの人が来て、『萩本さんの奥さんとの本が出てますね? それ読んで、感動したんで、テレビにしたいです』って普通言わない?それがなかった」と告白。「おかしいのにやってるっていう。気がついたらやっている」と話し、当人への「許可取り」がないまま制作された可能性を示唆した。

 これについて、日テレ側は先述の会見で「すべてきっちり確認許可を経て、制作に取りかかっています」「ご本人独特のおっしゃり方だと思います。萩本さんのお怒りを買っている話は一切ありません」と説明し、萩本の発言を否定した。

 しかし、ネット上では「24時間テレビ前の特集番組での萩本さんの反応を見る限り、軽く話があった程度でしっかりと契約を結んでいたとは思えない」「ビジネス上の書面契約は取り交わされているけど、筋を通していないってことを欽ちゃんは言いたいのでは」「こんな否定の仕方したら、欽ちゃんはウソつきって言ってるようなものなんだから言い方を考えないと」などと批判が集中している。許可取りの事実はどうあれ、萩本が「ちゃんと筋を通してくれた」と感じるようにすべきだという意見が多いようだ。

 「セクシー田中さん事件」を教訓にして、原作者を軽んじないドラマ制作を誓ったはずの日テレだが、どこまでその規定は徹底されているのだろうか。

2024/10/1 18:00

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