広末涼子(43)の復帰計画を阻む“誤算と慢心”「私が大きくした会社なんだから」
◆個人事務所「R.H」設立後の静けさ
広末涼子(43)が今年2月に芸能事務所「フラーム」から独立し、個人事務所「R.H」を設立してから約4か月が過ぎた。この間、4月に都内で行われたエコロジーに関するトークイベントに出席したものの、仕事はそれだけ。独立時に広末は「今後も引き続き俳優業に邁進し、お芝居と真摯に向き合っていきたいと考えております」と、やる気満々のメッセージを出したが、ドラマ、映画への登場はない。俳優業を再開する目途すら立っていない。俳優活動の継続に赤信号が灯っている。芸能界ではこう言われている。
「広末さんの俳優再開はかなり難しい。このまま引退同然の状態に追い込まれてしまう可能性もある」(大手芸能事務所幹部)
広末が所属していたフラームは有村架純(31)や戸田恵梨香(35)、田中みな実(37) 、吉瀬美智子(49)らが所属する女性専門の有力芸能事務所。このため、同社が圧力を掛けているという見方も世間の一部にはあるようだが、そうではない。もし、広末がまた世間を騒がせてしまった場合、個人事務所では対処が難しい。ドラマ関係者たちはそれを心配している。仕事の依頼に二の足を踏んでいる。
◆広末涼子、数々の“お騒がせ”遍歴
広末が独立した端緒は昨年6月に発覚したシェフ・鳥羽周作氏(46)とのダブル不倫だったが、お騒がせエピソードは初めてではなかったのは知られている通り。
21歳だった2001年5月にはジャン・レノ(75)とダブル主演した日仏合作映画『WASABI』の制作発表会見で突如として号泣した。直後に涙の理由を問われると、意味不明の答えを口にした。
「夢をかなえることと、自分を守ってくれる人がいること、そういう人がいるから負けてはいけないなと思ったり……」(広末)
その2か月後の同年7月には元俳優と遊んでいた東京・西麻布から、ドラマのロケ地である千葉県白浜町まで100キロ以上移動した際のタクシー代4万円を支払わず、そのうえ奇態をさらしたと写真週刊誌が伝えた。
これで済めば若気の至りだが、そうではなかった。キャンドル・ジュン氏(50)と再婚したあとの2014年2月、佐藤健(35)の自宅に宿泊したと女性誌に報じられた。さらに、佐藤との関係は不倫だったとする証言をジュン氏が2023年6月に行った。
ほかにも広末側が勝訴したものの、男性関係を女性誌に報じられ、訴訟になったことがある。15歳だった1996年のデビュー以来、広末は世間を賑わすエピソードに事欠かない。
◆自分を守ってくれた事務所に背を向けて…
それらを尻ぬぐいし、俳優としての広末の致命的なダメージにならないようにしてきたのがフラームだ。たとえば『WASABI』制作発表での号泣を「奇行」などと報じたマスコミを次の会見では排除した。
男性関係のスキャンダラスな記事に関しては訴訟も含めて徹底抗戦を貫いた。井上義久社長が出版社側と掛け合い、記事化を未然に防いだケースもある。芸能事務所としては当たり前のことであるものの、広末は特に手厚く庇護された。だが、独立後の広末は誰も守ってくれない。
「今の広末さんは保証人が消え、担保も失った状態。デビューからずっと井上社長と二人三脚でやってきたのだから。1人になったら、仕事先は心配になる」(大手芸能事務所幹部)
◆無期限謹慎処分は妥当な処分
独立自体が不可思議だった。まずフラーム側がダブル不倫発覚後の昨年6月、広末を無期限謹慎処分とした。出演していたキリンビール「本麒麟」のCMが打ち切りを余儀なくされ、同じく日本和装やジーンズのEDWINも広告展開の変更を強いられたのだから、妥当な処分と思われた。
しかし、この処分が広末には不満だったらしい。フラームという組織にも不信感を抱き、週刊誌の取材に対して「信頼はしていない」と発言した。もっとも、無期限謹慎処分は広末が受けるダメージをやわらげようとする戦略だったというのが芸能界の見方だ。
「重い処分を与えたと見せることで、世間の処罰感情を抑えようとしたんですよ。ほかの芸能事務所だったら、契約解除になっても不思議ではなかった。また、無期限謹慎とは便利な代物で、謹慎の期限を定めていないから、風当たりが弱まったと判断した時点で、いつでも活動の再開が可能。それが広末さんには分かっていなかった」(大手芸能事務所幹部)
事実、フラーム側は無期限謹慎処分とした時点で、復帰計画を練り始めていた。広末が退社を申し出た際も同社は慰留した。しかし、本人の考えは変わらなかった。
広末は独立のマイナス面が分かっているのだろうか。まず再び広末が騒動を起こした際、個人では処理が難しい。それだけではない。たとえ俳優に復帰できようが、扱いが今までより悪くなるのは必至だ。
◆「私が大きくした会社なんだから」
フラームは広末がドラマや映画に出る場合、主演か準主演級、あるいは特別出演級になるよう努めていた。俳優としての格を保とうとしていた。有村架純や戸田恵梨香らがいるから、バーターなどを持ち出せば難しいことではない。だが、個人で活動するとなると、そうはいかない。
違約金の問題もある。広末はダブル不倫の発覚に伴い、億単位と見られる違約金の支払い義務を背負った。当初はその支払いを渋り、フラームに押し付けようとしたと報じられた。
「広末さんは『私が大きくした会社なんだから』と口にしたと言われました」(大手芸能事務所幹部)
結局、違約金は広末が支払うことで決着したが、違約金をめぐるトラブルが報じられると、やはり起用する側は不安になる。広末が騒動を起こした際、金銭面での補償をしてくれない可能性を感じてしまうからだ。
◆個人事務所に対する懸念
また、これは広末に限ったことではないが、そもそも個人事務所には違約金の支払い能力についての不安がある。違約金は騒動を起こした本人が支払わなくてはならないが、支払い能力がない場合、一時的に所属芸能事務所が立て替える。のちに本人が分割払いなどで返済する。
しかし、資本力が乏しい個人事務所では立て替えることが出来ない。仕事先はこれを気にする。違約金の金額が大きくなるCM界は特にそうだ。
広末には俳優としての才能がある。情実の入り込む余地のない、2022年の「キネマ旬報ベスト・テン」で助演女優賞を獲ったことでも分かる。画面やスクリーンのどこにいても目立つ存在感が特に魅力だ。
半面、芸能人は何をやっても大目に見てもらえる時代は完全に終わった。セルフ・コントロールが強く求められる。はたして広末は個人事務所に向くタイプなのだろうか。
<取材・文/高堀冬彦>
【高堀冬彦】
放送コラムニスト/ジャーナリスト 1964年生まれ。スポーツニッポン新聞の文化部専門委員(放送記者クラブ)、「サンデー毎日」編集次長などを経て2019年に独立。放送批評誌「GALAC」前編集委員