「裸の写真がクラスのグループLINEに…」中学教師に聞いた、令和の学校トラブル
◆今と昔で全く違う、中学校のトラブル
いつの時代にも、学校トラブルは絶えない。
筆者(綾部まと)は新卒でメガバンクの法人営業部門に入行し、都内の学校法人を担当した経験がある。その取引先は中高一貫の学校法人で、主力銀行として深い付き合いをしていた。
今回は、当時の銀行担当者から現代の学校トラブルについて教えてもらってきた。それらは筆者が学生だった頃には、考えられないものだった。
スマホやSNSにまつわるトラブルである。そんな時代の激動を感じる学校トラブルの中から、中学生に焦点を当ててご紹介する。
もちろん、筆者の担当した一部の学校法人に教えてもらったもので、全ての中学校がそうとは限らないことを前置きしたうえだが、お子さんがいる読者の方は手遅れになる前に、事実としてぜひ知っておいてほしい。
◆令和の学校トラブル①「裸の写真がSNSに流出する」
今の中学生は、ほとんどがスマホを持っている。思春期にも当たる中学生はちょうど性に興味が出てきて、身体にも変化が起こる年代だ。スマホを使えば性的なコンテンツを検索することもでき、自分の肉体を撮ることもできる。
そのため彼氏に頼まれたり、友達とふざけたりして、今の中学生はセクシーな写真をLINEで送り合うことがあるという。内輪でとどめておく限りでは、何も問題ない。しかし関係がこじれた時に、悲劇が起きる。クラスのグループLINEで裸の写真を送られてしまったり、最悪の場合、SNSにあげられてしまうこともあるそうだ。
◆保護者がSNSをパトロール
SNSに上がった場合、誰もが目にすることができる。それは生徒の保護者も例外ではない。どの中学でも、クラスに1人はSNSをパトロールしている親がいるらしい。SNSに生徒が上がると、その親からクラスの担任に連絡が行くそうだ。
しかし担任の手に負えないと、学年主任に話が行く。ほとんどのケースは学年主任が生徒に指導することになるらしい。先生たちは生徒のSNSをいちいち確認していないので、そのような親の存在はありがたいのだが、困ってもいるのだという。投稿を消すことはできないし、学校外で起きていることを指導するのは難しいからだ。
今の時代、先生も大変だ。教師の人材不足が嘆かれるのも、無理はないのかもしれない。
◆令和の学校トラブル②「LINEグループから退出させられる」
昔は電話で緊急連絡網があり、何かあった際には電話で連絡を取り合っていた。今やそれはグループLINEに変わっており、「明日の体育で、縄跳びが必要らしいよ」という情報は、クラスのグループLINEで行われているそうだ。
先生としても、それはありがたいらしい。プリントに書き忘れてしまったり、終礼で言い忘れてしまった時、帰りに生徒を一人捕まえて「ごめん!グループLINEで『明日、縄跳びが必要』って送っておいてもらえる?」と言えば済むからだ。
今や必須になっているグループLINEだが、だからこその問題が起きているらしい。生徒同士で喧嘩した際、グループLINEから勝手に退室させられてしまうのだ。退出させられた子は必要な情報が回ってこなくなってしまう。忘れ物や行事についての連絡が回ってこず、そのことに気づけないと聞いた。
◆女子中学生が恐れる、LINEの仲間はずれ
ある日、授業中によく寝ている女子生徒たちがいたので、担任が注意したところ「朝までLINE電話をしていた」とのこと。個別に事情を聞いてみると「だって通話を切ったら、LINEグループから退出させられる。それが怖くて……」と言ったそうだ。
LINEをめぐる問題は、女子中学生に顕著らしい。じゃあ男子中学生に何も問題がないかというと、そうではない。彼らもまた「現代病」とも言える、別の問題を抱えているとのことだ。ソーシャルゲーム、いわゆるソシャゲである。
◆令和の学校トラブル③「ゲームがやめられない」
かつて、ゲームには終わりがあった。ラスボスを倒す前にも中ボスを倒すなど、細かい区切りがあるものが多かった。しかし、ソーシャルゲームは違う。バレンタインやクリスマスにはイベントがあり、期間限定ガチャがあり、やめる隙を与えない。過去のイベントストーリーや追加コンテンツも充実していて、無限にプレイできる。
LINEを巡るトラブルは女子中学生に多いが、ゲームに関するトラブルは圧倒的に男子中学生だという。テスト期間中にゲームをやめることができず、成績が急に落ちてしまう子は珍しくないそうだ。
ある男子生徒が修学旅行にスマホを持ってきてしまい、没収された時のこと。校則を破ってスマホを持参した理由は「ソシャゲのログインボーナスが途切れちゃうから」だったらしい。事情は分からないでもないが、規則は規則である。
中学では校則に反してスマホを持ってきた場合、親が取りに来ることになっている。親と会話をする中で「勝手に親のクレジットカードで課金をしていた」「知らない相手とチャットをしていた」と聞くことは多く、男子中学生の親はゲームに頭を悩ませている割合が非常に大きいのだという。
◆両親ともバリキャリは要注意
トラブルが深刻化してしまう親に多いのは「両親とも仕事でめちゃくちゃ忙しくて、バリバリ稼いでキャリアを築いているけど、子供を全く見ていない」タイプだそうだ。気づくと手遅れになっていて、学校に慌てて駆けこんでくるとのこと。多様化する学校トラブルだが、親が気づくことで、悪化する前に防げる時もあるらしい。
今が働き盛りの人も本記事を参考に家庭でも幸せな未来を築いて欲しい。
<文/綾部まと>
【綾部まと】
ライター、作家。主に金融や恋愛について執筆。メガバンク法人営業・経済メディアで働いた経験から、金融女子の観点で記事を寄稿。趣味はサウナ。X(旧Twitter):@yel_ranunculus、note:@happymother