女傑アーモンドアイにも受け継がれた良血 日本向きの適応力持つヌレイエフについて解説

【栗山求(血統評論家)=コラム『今日から使える簡単血統塾』】

◆知っておきたい! 血統表でよく見る名馬

【ヌレイエフ】

 大種牡馬ノーザンダンサーが送り出した最良の種牡馬の1頭。サドラーズウェルズとその全弟フェアリーキングの4分の3同血(父が同じで母同士が親仔)という超良血で、2歳秋のデビュー戦でいきなり重賞制覇。3歳春の英2000ギニーは1位入線を果たしたものの、他馬の進路を妨害したとして失格となりました。

 種牡馬としてはマイル前後の芝がベストで、ミエスク、スピニングワールド、ジルザル、ソヴィエトスターといった大物を次々と送り出しました。ヨーロッパの重い芝でもアメリカの軽い芝でも優れたパフォーマンスを発揮し、わが国で調教されたブラックホークは安田記念とスプリンターズSを勝ちました。

 サドラーズウェルズと比べるとスピード寄りで、軽い芝への適応力もあります。それゆえに日本向きで、この血が入った輸入繁殖牝馬は信頼性が高く、ソニンク、ハルーワソング、フェアリードールなど、この血が入った名牝系は枚挙にいとまがありません。女傑アーモンドアイはヌレイエフ5×3です。

 父系は、一時は衰退傾向が顕著でしたが、傍流のポーラーファルコン→ピヴォタル→シユーニのラインが巻き返し、現在、ヨーロッパで活発に枝葉を伸ばしています。

◆血統に関する疑問にズバリ回答!

「入っていると産駒が大型になる血統はある?」

 ダート競馬が主流のアメリカは、競走馬が大きくなりがちです。たとえば、米三冠馬ジャスティファイは現役時代570kgあったとされ、わが国に入った産駒の平均馬体重は500.2kgと破格の大きさです。

 その父スキャットダディ、母の父ゴーストザッパーの仔は特別大きいというわけではありませんが、2代母の父プルピットが大柄な仔を出すタイプ。その影響かもしれません。

 アンブライドルズソングは、背の高さが17ハンド(173cm)という巨漢馬だったので、馬格を大きく出す遺伝子を伝えていると思われます。アンブライドルズソング牝馬はサンデーサイレンス系と相性が抜群ですが(コントレイルやスワーヴリチャードを出す)、これは、馬体が大きいとはいえないサンデー系に、馬体を大きく出すアンブライドルズソングがうまくフィットした、という側面もあるのではないかと思います。

 ちなみに、今年春に誕生したコントレイル(引退レースの馬体重456kg)の初年度産駒は、わたしが馬産地で見て回ったかぎり、サイズが小さいという傾向は見られませんでした。母の父アンブライドルズソング、2代母の父ティズナウはいずれも大柄なタイプで、その部分がサイズを補う働きをしているのではないかと思います。

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2023/9/19 22:00

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