ロッテ・佐々木朗希を攻略した「岡田マジック」の深すぎる洞察
佐々木朗希攻略のお手本のような采配だった。
6月4日、セ・パ交流戦2カード目の阪神戦で、ここまで6試合に先発して4勝負けなし、防御率1.18、QS(クオリティスタート)は5と、ほぼ文句のつけようのない投球を見せていた佐々木が登板。対する阪神の先発は、勝ち星には恵まれないものの、防御率2.11と安定感抜群の才木浩人。
「佐々木は160キロ超えのストレートとフォークを織り交ぜ、初回から三振の山を築き、阪神打線をノーヒットに抑えます。一方の才木も安打は2回にポランコに打たれたボテボテの投ゴロが内野安打になっただけで、3回以降は佐々木に劣らない奪三振ショー。両者譲らず無得点のまま6回裏を迎えます」(スポーツライター)
ここで阪神は、今季初という円陣を組む。すると先頭の中野拓夢がフルカウントから四球を選び、2盗に成功。ノイジーが倒れた後、大山の打席で佐々木は暴投し、中野を3塁に進めてしまう。この好機で大山が、佐々木の高めに浮いた球をライト前へはじき返したのだ。チーム初安打はタイムリーとなって佐々木から1点を先制。これが決勝点となった。
結局才木は9回101球、被安打3の12奪三振で完封し今季4勝目。完封勝利は昨年9月1日以来2度目だが、前回は降雨6回コールドだったため、9回を投げきっての完封勝利は初となった。
「ポイントは、阪神打線が佐々木投手に多くの球数を投げさせたことでしょう。佐々木は現状90球前後で降板することが多い。佐々木から多くの点を取るのは困難ですが、打者が待球作戦に出てなるべく早く佐々木をマウンドから降ろせれば、後続の投手から点を取ることは佐々木から取るより簡単ですからね。160キロを超える佐々木の後の投手は、たとえ150キロを投げても打者には遅く感じるのでは」(同)
佐々木はこの試合6回1安打1失点だったが、102球と球数を多く投げさせられ、四死球も5と多かった。そしてこの試合のポイントは、6回に塁に出た中野の盗塁の場面にもあると、先のスポーツライターは言う。
「今季の阪神は、岡田監督のサインで盗塁させています。この場面、中野が最初に走った時の投球はストレート。ストライクゾーンにきたのでノイジーが打ってファウルにしましたが、次はフォークが来ると岡田監督は読んでいたのでしょう。中野は盗塁成功します。続く大山の打席では、佐々木の投じたフォークはホームプレートの随分前で落ち、捕手は取れず中野は3塁に。こうなるとワンバウンドするようなフォークは投げにくい。高めに浮いたフォークを大山は逃さなかった」
岡田監督の読みが的中して1点をもぎ取ったシーンと言えそうだ。
「それにしても才木が1人で投げたのは大きい。前日は延長11回で中継ぎ5人をつぎ込んでますが、雨で中止になったロッテ戦が5日の月曜日に組み込まれて9連戦になりましたからね。中継ぎを休ませられたのは大きい」(前出・スポーツライター)
パ・首位ロッテに連勝し、貯金は再び今季最大の18。再び大型連勝に突入するのだろうか?
(石見剣)