空から落下したのは大量のミミズ? 憶測飛び交うも現地で大騒ぎされなかったワケ(中国)
「ミミズの雨」の現象は、中国東北部に位置する遼寧省で起こった。3月11日に投稿された珍現象の動画には、無数のミミズのようなものが、路上に並んで駐車している数台の車を覆い、地面にも散らばっている様子が映し出されている。その光景は多くの人を不安にさせ、破滅的な状況や世界の終末などを示した「黙示録」の兆候と見る人もいた。
多くの人は、このミミズは雨のように「空から降ってきた」と考えているようだ。竜巻や水面上に発生する円柱状の強い渦「ウォータースパウト」といった気象現象が起きると、鳥やカエル、魚などの小動物は強い渦に巻き上げられて空から降ってくる場合がある。
実際に2021年12月、米テキサス州東部のテクサーカナ市では空から魚が降ってくる出来事があり、その原因はウォータースパウトだと見られている。今回の「ミミズの雨」の動画では雨天だったことが分かるが、気象現象によってミミズが巻き上げられて空から降ってきたと推測するのも頷ける。
一方、ミミズが空から降ってきたという見方とは異なる仮説もある。第2の仮説は、月に由来するものである。3月の最初の満月は「ワームムーン」と呼ばれ、気候が暖かくなって地面からミミズが出てくる時期だ。この月は非常に明るく、虫を強く引きつけるという。つまり月光に引き寄せられたミミズが、車によじ登ったと『Paris Match』は指摘している。
そして最後に3つ目の仮説は、車上や道路に散らばった物体は「ミミズではない」という主張だ。この謎の物体は、木から落ちてきたポプラの花の房である可能性が高いという。確かにこの花は初春が旬の時期であり、花の房は離れたところから見ると毛虫やミミズなどに似ている。
今回の動画には、人々から「最悪の悪夢だ」「もう二度と家を出ることはないだろう」「泣いちゃう」といったコメントが寄せられていた。
このように様々な憶測がされた「ミミズの雨」の真相だが、実はすでに判明している。SNS上を騒がせた「ミミズ」のようなものの正体はポプラの花の房で、ミミズの雨は降っていないと虚偽情報を検証するアメリカのサイト『VERIFYThis.com』が結論付けている。
同サイトが根拠とするのは、まず中国公安部が中華圏最大のソーシャルメディア「Weibo(微博・ウェイボー)」で「米メディアがポプラをミミズと報道している」とコメントしていたことだ。さらにもう一点、SNSで拡散している動画のうち調査で確認された最初の投稿は、現地時間1日付で中国のニュースサイト『東陽日報』が中国版TikTok「Douyin(抖音・ドウイン)」に公開していたことだ。この動画には、2月28日遼寧と記載があり「車の屋根に一面に落ちているポプラの花は、遠目には虫のように見える」というキャプションが添えられていた。
ドウインには、2021年4月にも中国メディア『河南都市報道』が同様の動画を投稿している。キャプションには「遼寧省本渓市、ポプラの花が車の屋根の上に落ちる。ネットユーザーから、洗車したばかりなのに台無しだ!の声」と記され、ポプラ並木の脇に停めた車の屋根やボンネットが、枝から落ちたポプラの花穂で埋め尽くされていた。
今回の騒ぎは、一部のネットユーザーがわざとなのか、それとも勘違いしたのか「ミミズの雨」だと言い出したことに端を発した出来事だったようだ。
China declares emergency & tells citizens to find shelter after worms started falling from sky with heavy rains. Srimad Bhagavatam speaks about these natural calamities when a society is Godless, mindless. This is how nature responds, when you disobey the Laws of nature. pic.twitter.com/MRYbNLip5d
— Radharamn Das राधारमण दास (@RadharamnDas) March 11, 2023
画像は『Radharamn Das राधारमण दास 2023年3月11日付Twitter「China declares emergency & tells citizens to find shelter after worms started falling from sky with heavy rains.」』『中国警方在线 2023年3月12日付微博「#美媒称中国遍地杨树花是遭虫雨袭击#」』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 H.R.)