草彅剛『罠の戦争』人気のわけは?『エルピス』が残した“悲願”を果たすのか

 1月から始まった、草彅剛主演のドラマ『罠の戦争』(関西テレビ/フジテレビ系、月曜夜10時~)が話題だ。本作は、内閣府特命担当大臣・犬飼孝介(本田博太郎)の第一秘書を務める鷲津亨(草彅剛)の復讐劇を描いた物語となっている。

※この記事にはドラマ『罠の戦争』(第3話まで)と『エルピス』(最終話まで)のネタバレが含まれます。

◆『罠の戦争』1分でわかるあらすじ

 まずはストーリーを手短に説明しよう。主人公・亨の息子である泰生(白鳥晴都)は何者かによって歩道橋から突き落とされ、植物状態になってしまう。当然、亨や妻の可南子(井川遥)は犯人を探そうとするが、ある日亨は犬飼から「泰生は事故だった」「犯人探しは止めろ」といった趣旨の忠告を受ける。

 亨は政治的圧力が働いていることに気付き、同僚の蛯沢眞人(杉野遥亮)や蛍原梨恵(小野花梨)と協力しながら、息子に重傷を負わせた犯人を見つけるために政治の闇と戦うことを決意する、という内容である。

◆前クール『エルピス』が作り出した熱量を引き継いで

 『罠の戦争』は、2015年の『銭の戦争』、2017年の『嘘の戦争』に続く、待望の“復讐シリーズ”の第3弾ということだ。草彅剛が6年ぶりに連ドラの主演を務めるということもあり、注目度はとても高い。実際、現在3話まで放送されたが、放送終了後にはSNS上に感想があふれている。

 盛り上がりのもう一つの要因として、前クールで同時間帯に放送されていた『エルピス』が作り出した熱量をそのまま引き継げたことも大きいのではないだろうか。

『エルピス』は『殺人犯はそこにいる―隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件―』(新潮文庫)や『東電OL殺人事件』(新潮文庫)などの参考文献をもとにストーリーが練られた、ノンフィクションに限りなく近いドラマだった。

 その内容は冤罪や根回し、時には人を殺してでも事実を隠蔽(いんぺい)するなど、政治の闇に切り込む挑戦的かつ意欲的な作品で、放送が終了した今でもその余韻に浸っている人は多い

◆『エルピス』は、最終回の“その後”が観たかった

『エルピス』のラストでは、冤罪であった松本良夫死刑囚(片岡正二郎)は無事に釈放された。しかしながら、松本に無実の罪をきせた黒幕である大門雄二副総理(山路和弘)、真犯人の疑いのある本城彰(永山瑛太)がどうなったかまでは描かれなかった。

“政治の腐敗はまだまだ終わらない”というメッセージを伝えるため、あえて不完全燃焼にした印象も受けるが、それでも、ハッピーエンドとは言いきれない終わり方に多少のモヤモヤ感は残った。

 視聴者は『エルピス』最終回の“その後”が観たかった気持ちのまま、『罠の戦争』に引き込まれているのかもしれない。

◆巨大な政治の腐敗を描き、どこまで切り込んでくれるのか

『罠の戦争』もまた、政治を軸にした内容になっている。1話では犬飼の「子を産むのは女の仕事」という発言が問題視されたが、恐らく2007年1月に「15から50歳の女性の数は決まっている。産む機械、装置の数は決まっている」「機械というのはなんだけど、あとは一人頭で頑張ってもらうしかないと思う」などと発言した当時厚生労働大臣を務めていた柳沢伯夫氏の発言のパロディと思われる。

 2話では政策秘書の虻川勝次(田口浩正)が犬飼の金の流れをわざわざ手書きで管理していることについて、亨は「手書きはいざという時に処分しやすい」と説明。これに対して蛍原(小野花梨)は「いましたね。家宅捜索されて慌ててパソコンのハードディスク、ドリルで壊しまくった議員」と反応した。

 これは2014年に政治資金を巡る問題を指摘された際、証拠隠滅のために自身のパソコンのハードディスクをドリルで破壊した、と噂の小渕優子衆議院議員を指したものだろう。

 政治ネタを散りばめつつ、4話以降も『エルピス』同様、巨大な政治の腐敗を描き、どこまで切り込んでくれるのかワクワクしてしまう。

◆『エルピス』では果たされなかった“悲願”

 なにより、泰生を突き落とした犯人は政治関係者に近しい人物の可能性が濃厚であり、『エルピス』では果たされなかった真犯人の逮捕という“悲願”が達成されるかもしれない。『エルピス』が着けた火を絶やさず、『エルピス』が残した課題を、どのように映し出すのかを見届けたい。

<文/望月悠木>

【望月悠木】

フリーライター。主に政治経済、社会問題に関する記事の執筆を手がける。今、知るべき情報を多くの人に届けるため、日々活動を続けている。Twitter:@mochizukiyuuki

2023/2/6 15:45

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