北島康介氏発案!一流アスリートが集結する究極のスポーツプロジェクトが始動

東京2020大会、ラグビーやサッカーのワールドカップなど、ここ数年スポーツで感動的なシーンを見る機会に恵まれてきた。そうした感動を与えてくれたアスリートのひとり、水泳の元日本代表・北島康介氏が発案し2022年7月に始まったのが「TOKYO UNITE」というプロジェクト。未だかつてないその試みの詳細や、参加しているアスリートの思いなどを、実際に行われたイベントレポートと共にお届けする。

発案者は競泳界のレジェンド北島康介氏

TOKYO UNITEは、東京をホームタウンとする14のスポーツチームと団体が協力しあい、新たな価値を生み出そうというプロジェクト。参加しているのは一流アスリートを擁する有名な組織であり、競技の種類も野球やサッカーといった球技のほか、競泳や相撲など多岐にわたる。

【参加している14のチームと団体】

■野球

読売ジャイアンツ/東京ヤクルトスワローズ

■バスケットボール

アルバルク東京/サンロッカーズ渋谷

■サッカー

FC東京/東京ヴェルディ/FC町田ゼルビア/日テレ・東京ヴェルディベレーザ

■ラグビー

東京サントリーサンゴリアス/東芝ブレイブルーパス東京/リコーブラックラムズ東京

■卓球

木下マイスター東京

■競泳

東京フロッグキングス

■相撲

日本相撲協会

この未だかつてない、競技の壁を超えたプロジェクトの発案者は、日本人初となるオリンピック2大会連続2種目制覇を達成した元競泳日本代表の北島康介氏。現在はTOKYO UNITEの参加団体のひとつで、競泳の国際プロリーグISLに参画しているアジア初のプロ競泳チーム、東京フロッグキングスのGMを務めているが、競泳だけでなく、スポーツ界全体の発展のためにこのプロジェクトを立ち上げた。TOKYO UNITEの主な取り組みは以下の2つ。

(1)

東京のスポーツ観戦をもっと楽しくするため、チーム同士のコラボレーションや共同でのプロモーションにより、ファンが通年でスポーツを楽しめる環境づくりを実現する。

(2)

スポーツの体験イベントなどを開催し、子どもたちがスポーツをできる環境、機会をひろげる。また、相対的貧困など様々な困難を抱える子どもたちへの支援、情報発信を行う。

具体的にどんな活動をしているのか、その一例として、2022年12月に行われたイベントを紹介しよう。

子どもたちが夢中になった「TOKYO UNITE キッズスポーツフェス」

2022年12月20日、両国国技館で「TOKYO UNITE キッズスポーツフェス」が開催された。参加対象は都内在住、在学の小学生。TOKYO UNITEからは選手をはじめ、アカデミーコーチ、OBなどが参加し、野球、サッカー、バスケットボール、ラグビー、卓球、相撲、チアダンスなど複数のスポーツを子どもたちに体験してもらおうというもの。

参加した子どもたちは国技館の中に設置された各競技のブースを巡り、さまざまなスポーツに触れて楽しんだ。

たとえば、野球のブースでは、読売ジャイアンツの赤星優志選手、秋広優人選手、同じく読売ジャイアンツの女子チーム、山下陽夏選手、金満梨々那選手ら、現役選手の指導のもと、子どもたちは、投球や打撃の練習に熱中した。

ラグビーのコーナーでは、本物の選手たちが使う練習用タックルバックめがけて子どもたちが本気でタックル。日常ではなかなかできない体験に、子どもたちは目をキラキラさせていた。

普段はサッカーをやっているという小学5年生の男の子は「サッカーも楽しみだったけど、今日は興味のある卓球もやってみたいと思います」と、ワクワクした様子だった。

また、読売ジャイアンツのファンでこの日も好きな選手のユニフォームを着て参加していた小学3年生の女の子は「野球だけじゃなくて、いろんなスポーツができて楽しかった。特にラグビーは面白かった」と満面の笑顔だった。

この他、開会式では大相撲第71代横綱鶴竜(現・陸奥部屋に所属する親方)の指導のもと、参加者全員で力士の体づくりの基本でもある四股(しこ)踏みを体験。野球選手やラグビー選手が、力士と一緒に四股を踏む姿が見られるのは、TOKYO UNITEならではの光景だろう。この他、大相撲の秀ノ山親方(元大関琴奨菊)直伝の「ちゃんこ鍋」がふるまわれるなど、充実のイベントとなった。

子どもたちの秘めた可能性を引き出すスポーツの持つ力

今回のイベントについて手応えを感じたという鶴竜親方は、「スポーツ選手になりたい子も、そうでない子も、TOKYO UNITEのイベントを通してスポーツに親しみ、健康な体、強い体を作っていってほしい」と話していた。また、自身も高校生になるまでは本気で甲子園をめざして野球に取り組んでいたというラグビー元日本代表選手で、現在は東芝ブレイブルーパス東京のアンバサダーを務める大野均氏は「いろんなスポーツに触れることで、子どもたちは自分が得意なもの、不得意なものを知ることができる。イベントではそうした気づきを得ることができるので、ぜひ今後の参考にしてほしい」と、さまざまなスポーツのチームや団体が集まるTOKYO UNITEの存在意義について語っていた。

ラグビー選手だった大野氏は野球をやっていた時期があり、読売ジャイアンツの赤星優志選手も子ども時代に野球以外のスポーツに取り組んでいたという。近年、世界で活躍する日本人のトップアスリートたちが、子どもの頃にさまざまなスポーツに触れていたことが、現在の活躍にもいい影響を与えていると言われている。TOKYO UNITEは、まさにそうした機会を子どもたちに与えてくれるプロジェクトと言えるだろう。

スポーツをあきらめない! すべての子どもたちにチャンスを

TOKYO UNITEでは、こうしたイベントの他に、東京都内で暮らす困窮家庭の子どもたちが少しでもスポーツに触れる機会をつくる「#your_shoes(ユア・シューズ)」プロジェクトを実施。昨年は、「スポーツをあきらめない」をキーワードにクラウドファンディングとチャリティーオークションで集めた支援金で、野球、サッカー、バスケットボール、ラグビー、卓球、テニス、ランニングのシューズ計339足を用意し、東京都内で暮らす困窮家庭の子どもたちに届けた。

また、今年の3月には東京ミッドタウン八重洲の商業施設ゾーンに、初出店となるライフスタイルショップをオープン予定。「東京のスポーツとともにある暮らし」をテーマに、暮らしの一部として気軽にスポーツを楽しめるライフスタイルを提案する新しい形の店舗となる予定だそうだ。

コロナ禍で大きなイベントなどを開催することは難しい状況ではあるが、競技の壁を越えて一流のアスリートたちが協力しあうことについて、TOKYO UNITEの発案者である北島康介氏は次のようにコメントを寄せてくれた。

「スポーツには無限の可能性があり、多くの人を巻き込む力があります。このTOKYO UNITEがモデルケースになって、全国、世界に広がっていけばいいなと思います」

両国国技館でのイベントは昨年のFIFAワールドカップ2022大会の直後に行われた。同時期、世界ではロシアによるウクライナ侵攻が継続中で不安な日々が続いていた。しかし、多くの人がサッカー観戦中は純粋にサッカーに熱狂した。鶴竜親方は、スポーツは社会で起きている問題に対する不安を一時でも忘れさせてくれるし、さらにはその問題に立ち向かう勇気を与えてくれると、スポーツのもつ力について語っていた。TOKYO UNITEは東京を中心としたプロジェクトではあるが、東京だけに留まらず社会のあらゆる課題を解決するための勇気を持った子どもたちを生み出す、大きなきっかけになるのではないだろうか。今後の活動に注目したい。

text by Kaori Hamanaka(Parasapo Lab)

photo by Kazuhisa Yoshinaga,TOKYO UNITE

2023/2/6 7:00

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