ぶら下がり中年社員は不要。35歳以上のミドル転職、人事はぶっちゃけこう見る

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「もう限界だ、こんな仕事辞めてやる……」

 緊急事態宣言が解除されたとはいえ、長引くコロナ禍。約2年の間で職場や生活の環境が大きく変化を遂げた。テレワークやステイホームの機会に、改めて自分の働き方やキャリアについて考える。

 役職に就いたり、大きなプロジェクトを任せられたりする同世代もいるなか、頭によぎるのは「転職」の2文字。しかしながら、35歳以上のミドル世代ともなれば、若い頃よりも慎重にならざるを得ない。

 今回は、若者からシニアまで個人のキャリア支援などを行う株式会社クオリティ・オブ・ライフ代表の原正紀氏にミドル世代の転職の実態を聞いた。

◆長引くコロナ禍で企業の採用意欲は活発化の傾向も…

 そもそも転職のタイミングとして、コロナ禍の今は相応しいと言えるのだろうか。“コロナ転職”なんて言葉もあるが……。

「もちろん業種によりますが、データ上でも明らかに採用は活発になっています。コロナ禍で一時期は企業の求人意欲が大きく落ち込みましたが、2年近く続いているなかで企業も厳しい厳しいとばかりは言っていられないですからね。

 ただ、選別は厳しい。いま企業は事業転換や業態転換、新事業進出が活発で、そこにきちんと貢献できそうな人を求める動きが強まっていますね」

◆「ぶら下がり社員」は不要、人事側の“戦力を見定める目”はシビア

 要するに、なんとなく転職先の会社にぶら下がろうという気持ちでは難しい。

「日本の場合、顕著に人手不足が進んでいるので、単に人手という意味ではチャンスが広がっています。その反面、ホワイトカラー層にかんしては二極化していて、むしろ人事側の“戦力を見定める目”は、かつてよりシビアな印象です。

 また、若手世代も昔のように会社依存型ではなく、自分のキャリアファーストで考えており、転職・兼業・副業にも積極的な傾向が続いています」

 先々のことを考えて会社に籍を置きながらもセカンドキャリアに備えて密かに爪を研いでいる若者たちが増えているそうだ。

◆流動化が進むシニアと若者層の狭間で身動きがとれない中年たち

 シニアの就労支援などにも注力している原氏だが、今年の敬老の日(9月20日)にあわせて総務省が発表した統計では、シニア(65歳以上)の就業率は過去最高の状態。

 シニアと若者層の両面で流動化が進んでいるのに対し、ミドル世代はその狭間でさまざまな葛藤を抱えている。

「人生100年で先を見たらアクティブに動いた方がいい半面、20代に比べれば給料も上がって、若い頃から築き上げてきた実績が社内でようやく実り、さらに上のステージの仕事ができる可能性もある。結婚や出産、マイホームの購入など、ライフステージとしても出費が増える時期なので、多くの人が慎重にならなきゃいけない年齢だとも思います」

◆職場で中途に対しては厳しい目「大前提としてメンタルタフネスが必要」

「将来的に定年が70歳になって、大企業を中心とする企業が競争力を失わない意味でも、若い人にポストを譲る意味でも、高コスト体質の中年社員には、出ていくべき人は出ていってほしいのが本音。企業では役職定年の導入や役割再設定などの研修もすごく増えています」

 急速にAIやIT化が進むなかで、中年社員の価値とは何なのか。ミドル転職のポイントとしてよく挙げられるのが、「マネジメント経験の有無」。しかし実際のところは……。

「それ以前に、ミドル転職の注意点としてはスタンスの問題があります。転職した直後は、大概の場合は苦しくて、ポジティブシンキングじゃないとつらいですね。

 新卒のときは周りも可愛がってくれるけど、中途の人間に対しては『この人は、うちの会社で本当に通用するのか?』と実力の部分を見られがちです。

 大前提としてメンタルタフネス。より本質的な意味では自分の強みを理解し、成果を出せることが大切です。そこに耐性がないと、転職先を早期離職するという結果につながりやすい」

 新しい職場での人間関係もあるなかで、ポジティブな思考で踏ん張り、実績を残していけなければ、ミドル以降の転職には厳しい現実が待っているのだ。

「企業側の人事コンサルティングをするなかで、新卒よりもむしろ中途ほどしっかり入社後にフォローする仕組み(オン・ボーディング)をつくらないと定着・活躍につながらないという話をよくします。

 とはいえ、現場の社員にとっては“新しいライバル”が入ってきたという側面もある。終身雇用を前提とした昔ながらの日本型、いわゆるメンバーシップ型の企業だと、特に色眼鏡で見られやすいんですね」

◆転職前に副業・兼業でネットワークを広げる

「そもそも自分の強みや得意・不得意がよくわかっていないなら、基本的にミドル転職は考え直したほうがいい」と語る原氏。より良いかたちで転職を実現するファーストステップとしては、副業・兼業が選択肢になるという。

「現職の仕事をやりながら、できる範囲で副業や兼業に取り組み、自分でリスキリングして準備を整えていく。あとはネットワークを活かすのもポイントですね。結局、いい仕事ってハローワークや転職情報サイトだと全体的な傾向として数が限られるし、競争倍率も激しい。従来、日本人は1人で自分のキャリアに悶々と悩んできましたが、いい仕事って人脈ネットワークから舞い込むことも多く、結果的にネットワークに救われることがよくある。1人で悩んでいるだけではチャンスにつながりません」

 昨今はSNSを使った転職活動やリファラル採用といった手法も増えているが、年齢に関係なく好奇心を持ってネットワークを広げ、行動を起こしていける人ほど、結局いいチャンスに巡り会いやすいようだ。

◆異業種・分野でもスキルを活かせるならば年収アップの可能性

「相談相手はキャリアコンサルタントのようなプロでも、くわしい知り合いレベルでもいい。ただ、普段から仲の良い友達は、自分と同じような環境で似たような情報しかもっていないことが多い。むしろ、たまにしか会わない親戚や、昔の友達などから意外な話が舞い込むものです。転職やセカンドキャリアについて考えていることをほのめかしておくといいでしょう。

 今までとは異なる業種や分野でも『自分のスキルや経験を活かしてほしい』という職場があれば、そこでオンリーワンの存在として価値が高まる。同僚たちと差別化ができるぶん、年収アップの可能性もあります」

◆会社に身を預けているだけでは危険

 原氏は「キャリアデザインが現在の中年以降の世代では圧倒的に不足している」とも指摘する。自分の強みや市場価値を見極めながら、未来のデザインを重ねていくこと。そのためにはキャリアコンサルティングを受けることも効果的であると説く。

「会社に自分の身を預けて、唯々諾々と会社に従って評価されている状態が、ある意味いちばん危険です。もちろん、そのなかで定年を全うすることも素晴らしい生き方ですが、変化の時代にセカンドキャリアを考えるうえでは、新しいことにチャレンジしたり、リスクテイクしたりすることが大切になる。

 いまの日本企業に大変な閉塞感があるのは、“昭和の勝ちパターン”から時代の変化に対応できなかったから。これは個人レベルでも同じです。まずは、自分が具体的にどんなキャリアを思い描くのか。転職以前に、その思考がなければ備えることもできません」

【原正紀氏】
株式会社クオリティ・オブ・ライフ 代表取締役社長、特定非営利活動法人キャリアコンサルティング協議会 常務理事・事務局長。早稲田大学法学部卒業後、大手メーカーを経てリクルートへ入社。企業や官公庁、大学などへの提案活動を行なった後に、現在の会社を起業。企業への採用・定着・育成・人事制度構築などに関する活動のほか、これまで多数の経営者や個人と面談。人と組織のベストマッチングや、若者からシニアまでの個人のキャリア支援などを行なっている。近著に『定年後の仕事は40代で決めなさい 逃げ切れない世代のキャリア改造計画』(徳間書店)など

<取材・文/伊藤綾>

【伊藤綾】
1988年生まれ道東出身。いろんな識者にお話を伺ったり、イベントにお邪魔するのが好き。SPA!やサイゾー、マイナビニュース、キャリコネニュースなどで執筆中。毎月1日に映画館で映画を観る会"一日会"(@tsuitachiii)主催。

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