『死霊館 悪魔のせいなら、無罪。』が実話を『セブン』のように描くホラー映画になった理由

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 2021年10月1日より、映画『死霊館 悪魔のせいなら、無罪。』が公開される。

 本作は「死霊館ユニバース」の第8作目。つまり、スーパーヒーロー映画のような「同一の世界観の共有」をホラーでやってのけているシリーズだ。とはいえ、ストーリーの連続性は比較的控えめであるため、今回も含めそれぞれが単体の作品として、予備知識がなくても楽しめる内容になっている。

 今回の目玉の1つが、『死霊館』(13)と『死霊館 エンフィールド事件』(13)に続いて「実話」を扱っていることだろう。例えば、劇中のエド&ロレイン・ウォーレンは実在のアメリカの心霊研究家夫妻であり、死霊館ユニバースで大きくフィーチャーされることが多い「アナベル人形」も(映画とはかなり見た目が違うが)実在している。

 今回はそれらに加えてシリーズの新機軸も打ち出した、娯楽性抜群のホラー映画に仕上がっていた。さらなる具体的な魅力を紹介していこう。

実際の殺人事件をモチーフとした娯楽ホラー

 本作のあらすじはこうだ。1981年、心霊研究家のウォーレン夫妻は、11歳の少年デイビッドの悪魔祓いに立ち会う。その悪魔は強大なパワーを秘めており、夫のエドが重傷を負うが、なんとか退けることに成功した……かに思えたが、ほどなくして衝撃的な事件が起こる。そのデイビッドの姉の恋人であるアーニーが、家主を刃物で22回も刺して殺害したのだ。逮捕され裁判にかけられたアーニーは、それをデイビッドから取り憑いた「悪魔のせい」だと語る。

 実際の「アーニー・ジョンソン事件」は、当時に全米を震撼させたセンセーショナルな話題であり、アメリカの裁判所において初めて悪魔憑依が弁護に使われた殺人事件でもあった。今回の映画化に当たって大きなきっかけを与えたのが、当のアーニーの前に悪魔が取り憑いた、少年デイビッドの存在だったという。

 映画の物語は、その少年デイビッドに呪いをかけた(悪魔に取り憑かせた)のは誰か?という謎を解き明かすミステリーの側面が大きい。それ以上に目立つのは、大小さまざまな「怖がらせ方」だ。

 それは大きな音や画で驚かせるという「ジャンプスケア」と呼ばれるホラーでは定番の演出であるが、この死霊館ユニバースではそれぞれの恐怖シーンのアイデアがバラエティ豊かで、「来るぞ来るぞ……!」と思わせておいて絶妙なところでタイミングをズラすといった良い意味で意地悪なテクニックも上手いので、全く飽きることはない。今回は特に「ウォーターベッド」を利用した怖がらせ方に「その手があったか!」と嬉しくなるホラー映画ファンも多いのではないか。

 ただ、実際のセンセーショナルな事件をモチーフにしているものの、「法廷もの」らしいシーンはごく少ない。「悪魔憑依をどう論理的に弁護するか」というドラマではなく、基本的には「さまざまな驚かせ方をする娯楽ホラー」を期待したほうがいいだろう。それでも悪魔憑依の弁護については現実的な観点からの興味深い会話もあり、特に「裁判では聖書を参考にしていることもある。法廷で神を認めるのであれば、悪魔の存在もそろそろ認めてもいいくらいだ」と語る様は面白い。

 本作の製作を務めた​​ジェームズ・ワンは、以前の『死霊館』と『死霊館 エンフィールド事件』が「家の中に閉じ込める物語」であったことから、それとは一味違う、異なる感覚を得られる映画にしたいとも考えていたそうだ。そこには「犯罪を調査し解決するウォーレン夫妻」の世界観をもっと追求したいと言う意図もあり、その物語の発展のための参考となったのは、映画『セブン』(95)だったという。

 オープニングこそド派手な悪魔祓いのシーンがあり、良い意味で完全にオカルトホラーとなっているが、第二幕の捜査を続け謎の解決へと進んでいく様は、おどろおどろしい雰囲気も合間って確かに『セブン』を彷彿をさせる。シリーズ初のR15+指定がされたショックシーンも効いていた。

 さらに後半ではよりフィクションらしい場面により移行していくが、そこにはウォーレン夫妻の妻ロレインと警察の実際のやり取りも盛り込まれているのだという。脚本の制作にあたっては、有力紙の古い記事に加え、事件を毎日報道していた地元新聞も入手した他、実際のアーニー・ジョンソンにもインタビューをしたそうだ。

 つまり、この『死霊館 悪魔のせいなら、無罪。』は、さまざまな驚かせ方をする娯楽ホラーと、『セブン』のような犯罪捜査ミステリー(サスペンス)と、そして入念なリサーチを元にした実話ものをミックスしたような作品でもあるのだ。それぞれの面白さを一挙に味わえる、お得な作品と言ってもいいだろう。

 他にもジェームズ・ワンは、本作の製作に取りかかる前から、ウォーレン夫妻の妻ロレインの透視能力を物語の核に据えたい意図があり、ジョン・カーペンター原案・共同脚本の『アイズ』(78)や、デヴィッド・クローネンバーグ監督の『デッドゾーン』(83)に着想を得て、ロレインが超能力捜査官として力を発揮できる事件を探していたそう。つまり、超能力を恐怖シーンだけでなく、物語にも不可欠な要素にしていくという、やはりシリーズの新機軸を打ち出すことを目指していたのだ。

 ちなみに、そのジェームズ・ワンは過去の死霊館ユニバースである『アナベル 死霊博物館』(19)においても、博物館にあるさまざまな物が動き出す恐怖シーンが満載であるためか、「これはアナベル版『ナイトミュージアム』(06)さ!」 と語っていたこともある。過去の好きな作品を「ホラーでもやってみる」ことにてらいがない、ある種の無邪気さをも感じさせることも、本シリーズの魅力だ。

 前述した通り、この『死霊館 悪魔のせいなら、無罪。』の基本はやはり「さまざまな驚かせ方をする娯楽ホラー」。端的に言って遊園地のお化け屋敷のような楽しさがあるため、一部の劇場で実施されている4D(4DXまたはMX4D)もおすすめしたい。

 4Dは、映画の内容に合わせて、座席が激しく動いたり、水が吹きつけたりといった、まさにアトラクション的な演出が楽しめる上映スタイルだ。4Dは作品によってはあまり演出と作品の内容が噛み合っていなかったり、演出自体が少なくて物足りなく感じることもあるのだが、今回は一味違う。何しろ、冒頭の少年の悪魔祓いのシーンからしてド派手なのだから。

 映像だけでも「ポルターガイストとエクソシストが同時勃発する」というとんでもない見せ場なのに、4D上映ではさらに座席の激しい動きだけでなく、「吹き荒れる風」の演出が楽しめる。悪魔の凄まじいパワーを、まさに「体験」する面白さがあるのだ。

 その後もバラエティ豊かな恐怖シーンが続くので、4D上映も「盛れ」ば、やはりさらに楽しめるだろう。まだまだ続くコロナ禍の厳しい情勢でも安全に楽しめる、デートに最適なホラー映画としても、存分におすすめしたい。

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『死霊館 悪魔のせいなら、無罪。』
2021年10月1日(金)公開
2D/4D同時上映 ※一部劇場を除く
監督:マイケル・チャベス(『ラ・ヨローナ ~泣く女~』
製作:ジェームズ・ワン(『死霊館』『ソウ』『ワイルド・スピード SKY MISSION』『アクアマン』)
ピーター・サフラン (「死霊館」ユニバース 全作でコラボレーション)
脚本:デイビッド・レスリー・ジョンソン=マクゴールドリック(『死霊館 エンフィールド事件』『エスター』『アクアマン』)
出演:パトリック・ウィルソン、ベラ・ファーミガ、ルアイリ・オコナー、サラ・キャサリン・フック、ジュリアン・ヒリアード
製作:ニューライン・シネマ
2021年 アメリカ映画/2021年 日本公開作品/原題:THE CONJURING: THE DEVIL MADE ME DO IT
上映時間:112分/スコープサイズ/2D /5.1chリニアPCM+ドルビーサラウンド7.1(一部劇場にて)
字幕:佐藤真紀/映倫区分:R15+
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  • 10/1 17:00
  • サイゾー

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