「葉っぱ切り絵」がすごい!作者でADHDのリトさんに聞く作り方

 一枚の小さな葉っぱを切り抜いてつくる「葉っぱ切り絵」。SNSで話題の葉っぱ切り絵アーティスト・リト@葉っぱ切り絵さんの作品は、その精巧さもさることながら、まるで絵本のワンシーンのような、見る人の想像力を膨らませ、ワクワクさせてくれる世界が葉っぱの上に広がっています。

 ほぼ毎日SNSで作品を発表するたびに、リトさんのもとには「優しい世界に癒されます」「見るだけで幸せな気持ちになれます」「明日も頑張ろうという気持ちになります」など、多くのコメントが寄せられるそう。

 落ち込んでいるとき。心がモヤモヤするとき。さみしいとき。リトさんの作品集『いつでも君のそばにいる 小さなちいさな優しい世界』(講談社)をめくるたび、そこに自分だけの物語を見つけられるはず。

 本書から、リトさんが葉っぱ切り絵アーティストになったきっかけと、葉っぱ切り絵の素敵な世界をご紹介します。

◆ADHDと診断されてサラリーマンを辞める

 葉っぱ切り絵アーティストとして活動しているリトさんは、もともとサラリーマンだったそう。

「物忘れは多いわ、不器用で要領は悪いわ…。自分で自分のことが嫌いになるくらい、まったく仕事ができないダメ社員だったんです」

 そんなリトさんが、どうして今アート制作をやっているのか。そのきかっけは「ADHD(注意欠陥・多動性障害)」という言葉との出会いでした。異常な物忘れの多さや要領の悪さ、直したくても直らない自分のダメな部分は、ADHDによる先天的なものであることが判明します。

「病院で診断を受け、そのまま逃げるように会社を辞めたぼく。これからどうしよう…。普通の人のフリをして働くか。それとも障害者としての配慮を受けながら働くのか。…ぼくは正直どちらも嫌だった。どうせなら自分の得意なことを仕事にしたい」とあれこれ悩んで、辿りついて一つの答えが「アート」でした。

◆集中力を生かして、葉っぱの切り絵を始める

 小さい頃から、集中力だけは人一倍強かったリトさん。特に細かい作業に集中しはじめると、周りの声も聞こえなくなるくらい何時間も没頭し続けられるそう。この過剰な集中力は「過集中」といって、ADHDの人の特徴として見られるものなのです。

 そんなこんなで、思いつきで始まった創作活動でしたが、あるとき一枚の葉っぱに出会います。それはインターネット上でみつけた、スペイン人の「leaf art(リーフアート)」でした。一枚の葉っぱで表現された、森の中で草を食べる動物たち。その作品に一瞬で引き込まれたリトさんは、次の日には公園に自分も葉っぱを探しに行きます。

 そして、没頭しすぎてしまう集中力を生かして、葉っぱの切り絵を始め、SNSに投稿したところ、沢山の応援メッセージが届くようになったそう。

 見よう見まねで始めた葉っぱ切り絵でしたが、SNSで話題になり今やフォロワー数は20万人超! 作品は400を超え、葉っぱ切り絵の制作を始めて1年で初の個展を開催して以来、作品展では常に作品は即完売する人気ぶりです。

「短所だと自分でも思っていたところが、裏を返せば長所だった。自分がいる場所さえ変えれば弱みだって強みになるんだと、前向きになれた」とリトさんは振り返ります。

◆1本のデザインナイフだけでつくるアートな世界

 リトさんが葉っぱ切り絵をつくる道具はデザインナイフ1本だけ! 精巧さを極めるため、1回の制作で、デザインナイフの刃を2~3回取り替えるのだとか。そんな葉っぱ切り絵制作のプロセスを見てみましょう。

1. 紙に下絵を描きます。

2. 葉っぱの裏側に下書きします。

3. 絵の内側部分から切り抜きます。

4. 余分な箇所を落とします。

5. アウトラインを切ります。

0.1ミリでもずれるとアウトという、繊細な作業。

6. できあがり。

 こうして生み出されたリトさんの葉っぱ切り絵には、それぞれの作品ごとにタイトルがつけられています。このタイトルをつけるのにも、「見たままの状況説明にしたくない」というこだわりがあり、2時間以上悩むこともあるそう。

 最後に、リトさんのセンスが光るタイトルと、本書に添えられた優しい文章をご紹介します。

◆「いつも君のそばにいる」

ウサギくんの目から一粒の涙がポロリ…。

友だちが落ち込んでるときには、そっと寄り添って

あげるのが森の仲間たちの優しさです。

明日はきっとまた笑顔で会えるね。

◆「パパのツノ、また生える?」

ある日突然なくなってしまったパパの自慢のツノ。

子サイくんは毎晩同じ質問をしては、

心配でそばを離れません。

◆「新しいツノ、みんなで作ったよ!」

自慢のツノを失ってしまったサイのお父さんのために、

森のみんなががんばってくれました。

子サイくんもこれからは安心しておやすみができそうです。

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 自分を信じて、自分が選んだ道をひたすら突き進んできて本当によかったと語るリトさん。これからもどんな素敵な世界を生み出してくれるのか楽しみですね。

<文/女子SPA!編集部>

【リト@葉っぱ切り絵】

1986年、神奈川県生まれ。葉っぱ切り絵アーティスト。自身のADHDによる偏った集中力やこだわりを前向きに生かすために、2020 年より独学で制作をスタート。Instagram、Twitter に毎日のように投稿する葉っぱ切り絵が注目を集める。個展で販売される作品も、毎回即完売する人気。初作品集『いつでも君のそばにいる 小さなちいさな優しい世界』(講談社)が大きな話題を呼んでいる。Instagram:@lito_leafart Twitter:@lito_leafart

2021/10/1 8:45

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