「ママ友は友達じゃない」と思う母親が多いわけ。息苦しい関係はもうイヤ

「ママ友」という言葉に、皆さんはどんなイメージがありますか?

 検索エンジンのGoogleで「ママ友」という言葉がどのような言葉と一緒に検索されているかを調べてみると「ママ友 事件」「ママ友 こわい」「ママ友 いらない」「ママ友 マウンティング」など、ネガティブなキーワードが上位に表示されます。

 インターネット上では、「ママ友は友達じゃなくて『子どもの友達の親』に過ぎない」「仲良くなったら『ママ友』じゃなくて『友達』」といった声も見られます。なぜ、「ママ友」と「友達」はハッキリ線引されてしまうのでしょうか。このような声が聞かれる背景について考察しました。

◆グループLINEには参加するけど「深く付き合うのは面倒」

 現在、首都圏で2歳の子どもを育てながら正社員として働いているAさん(女性)は「ママ友と呼べる人はいないし、今のところはまだ必要性を感じていない」と語ります。

 新型コロナウイルスの影響で実家・義実家には1年間以上帰省できていないものの、夫と協力しながら育児をしているAさん。「ママ友はいないし、いなくても困らない」といいますが、保護者同士の交流が全くないわけではありません。

 昨年6月の緊急事態宣言明けに子どもが保育園に入園。翌週に行われた懇談会で初対面の保護者の提案で同じクラスの「グループLINE」を作ることになりました。以来、グループ内の保護者同士でメッセージが交わされています。

お互いのことをほとんど知らないのに、グループLINEに自分の話や子どもの写真を頻繁に投稿するようなお母さんには、ちょっと引いてしまう。深く付き合うと面倒なことになりそうで……」

 グループ内の会話に参加することは「ほぼない」というAさんは、すれ違った際にあいさつする相手はいるものの、「ママ友」とは認識していないと言います。

◆6割の親が「LINEやメアドを交換したらママ友」

 一方で、「ママ友」の認識に関しては、このような調査があります。

 株式会社コズレがパパ・ママ2413名を対象に行った「ママ友・パパ友に関する調査」*によれば「『ママ友』に当てはまると思う関係性」として最も多かった回答が「LINEやメールアドレスを交換している(63.9%)」でした。

 つまり、連絡先を交換した時点で「ママ友」と感じてる人がいれば、そうではない人もいて、両者の認識の食い違いが起きている可能性もあるということになります。親密な響きがある「ママ友」という言葉ですが、実際にはさほど深くはないつきあいでも使われているケースもあるようです。

 実際の保護者同士の関係性は、「ママ友」という一言ではとてもくくることができないほど多様です。すれ違ったら挨拶をする顔見知り、お迎え後に立ち話をする、子ども同士が仲良し、役員活動を通じて必要に応じて連絡先を交換する、待ち合わせて子ども同士が遊ぶ……など。

 あいまいな関係性が数多くあるにも関わらず、母親同士の関係が「ママ友」という言葉に集約されてしまうことが、子育て中女性の違和感につながっているのかもしれません。

◆「友達」と「ママ友」の大きな違い

 「ママ友」と「友達」の違いは何でしょう。筆者は過去にママ友に関する取材を多数おこなってきた中で、ふたつの大きな違いを感じています。

 まず、一番の違いは「ママ友」は子どもが起点の関係であること。子どもを軸とした関係なので、子ども同士のトラブルや、子どもを通じて親のコンプレックスが刺激されることで関係が揺らぎやすくなることもあります。

 もう一つは、普通の友達よりも「メリット」「デメリット」で測られる傾向が強いこと。「つくるものではなく、できるもの」が友達だとしたら、ママ友は「できるものではなく、一生懸命つくるもの」と考えている人も一定数います。

◆情報交換や子育ての悩み相談は“メリット”だけど

 たとえば前出の調査では、ママ友のメリットとして、以下のような項目に多くの回答が集まっていました。(出典:株式会社コズレ「ママ友・パパ友に関する調査」)

【ママ友のメリット】

1位・・・子育ての悩みを相談できる

2位・・・一緒に遊べるから子どもも楽しそう

3位・・・園・学校の情報を教えてもらえる

一方でデメリットとして多かったのが以下の回答です。

【ママ友のデメリット】

1位・・・誘いを断るのが大変

2位・・・子どもを比較される

3位・・・ママ友・パパ友の悪口を聞かされる

 どのような関係性にもあてはまることですが、相手に望むものが増えれば増えるほど人間関係の“地雷”も増えます。「子どものため」「情報収集のため」「寂しさをまぎらすためなどのメリットを求めるということは相手を「利用する」ことにつながる場合も。

 アンケート結果を見ると、特に「ママ友がいない」と回答した女性の間でも、時間や労力を「奪われてしまう」されるリスクを恐れている傾向が見らました。

◆息苦しかった90年代の「ママ友“村”」

 ここまで「ママ友」と「友達」の違いについて考察してきましたが、「『ママ友社会』は現代の“村”である」というのが、筆者の持論です。とはいえ、この「村」は、少しずつ過疎化が進んでいるようです。

 近代の「ママ友史」をざっと見渡してみましょう。Googleトレンドを見ると「ママ友」という言葉が広く使われるようになったのは2010年代になってから。

 とはいえ「ママ友」という関係性自体はもちろん決して新しいものではなく、2000年以前にも母親同士の濃密な関係は存在していました。

 日本が右肩上がりに経済成長していた時代に、夫が外に勤めに出て専業主婦の妻が主に子育てを担うようになると「地域で子どもを育てる」「大家族で育てる」地域・家族は少なくなり、その代わりに母親同士の濃密なコミュニティが形作られていきます。

 1990年代には「公園デビュー」などの言葉が使われ、母親社会に溶け込むためのファッションやコミュニケーションスキルが育児雑誌で特集された一方で、狭い母親社会の人間関係に苦しむ女性の声を集めた書籍も出版されています。

「村社会」「大家族」「同居の姑」など、昔ながらの濃密な人間関係から距離を置いた先には、「ママ友」という別の“村社会”が待っていたのです。比べられたり、噂の的になったり、親・子ともに“平均的であること”を求められたり……そんな村の生活から距離を置きたい母親が増えてきた。それが現在の、ある種ドライな「ママ友関係」に繋がっているのだと思います。

◆近づきすぎたママ同士が、適度な距離を置き始めた

 子育てに人と人とのつながりが必要であることの表れとも言えますが、今の「ママ友」という言葉へのネガティブなイメージは、過去30~40年で母親同士が近づきすぎたことの「反動」なのかもしれません。

 また、共働き化が進んで「職場」という居場所を持つ女性が増え、夫の育児参加率が多少なりとも上がったことも、ママ友同士が適度な距離を置くようになった要因の1つだと考えられます。

 ゆるく社交はしたい。でも仕事も育児も忙しいからべったり付き合うのは避けたい。トラブルメーカーと関係を持つくらいならママ友を作らない方がいい。母親同士が「メリット」「デメリット」を抜きにした関係を結びにくいことを悟り、顔見知りの母親との「ちょうどよい関係」を探り合っている。そんな子育て中の女性が、少なくないのかもしれません。

*出典:株式会社コズレ「ママ友・パパ友に関する調査」

調査主体 :株式会社コズレ 子育てマーケティング研究所

調査方法 :インターネットリサーチ

調査対象 :妊娠中または子どもがいるママパパ

調査期間 :2020年2月3日~2020年3月3日

有効回答者数 :2413名

<文/北川和子>

【北川和子】

ライター/コラムニスト。商社の営業職、専業主婦を経てライターに。男女の働き方、家族問題、地域社会などをテーマに執筆活動を行う。

2021/9/28 8:47

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