北朝鮮人民が恐れる「トンデモ新法」の理不尽実態(3)占い師が独裁者を脅かすと…

 朝鮮労働党による一党独裁体制を敷く北朝鮮。とかく、党トップの金正恩氏の立ち振る舞いを棚に上げた法律が目に余る。その最たるものが、昨年11月に制定された禁煙法だろう。

「喫煙を禁止する法律ではなく、学校や病院などの禁煙場所をいくつか定めたもの。ところが、正恩氏は愛煙家で有名です。禁煙に指定された視察先で、紫煙をくゆらせる姿がしばしば映像で流されます。既に、なし崩し的に規制が解かれているかもしれません」(五味氏)

 時にはユン・ピョウ主演で大ヒットした香港映画「検事Mr.ハー俺が法律だ」さながらに、暴力的な粛清劇も展開され‥‥。

「14年に『喜び組』などの美女を統括する幹部が、正恩氏からの電話に出なかったという理由で射殺されてしまいました。入浴や就寝で出られなかっただけかもしれませんが、当時の正恩氏の逆鱗に触れたのでしょう。15年には、妻の李雪主氏が所属していた国営劇団員4人が公開銃殺刑に処されたこともありました。防音仕様の練習室で卑猥映像を撮影・制作していたのがその理由で、国営劇団の不祥事だけに、法律の条文以上の厳罰が下されました。大衆への見せしめの意味も込められているのでしょう」(在韓ジャーナリスト)

 先進国では当たり前のように認められてきた「信仰の自由」も認められていない。コリア・レポート編集長の辺真一氏が解説する。

「キリスト教連盟や仏教徒連盟がありますが、対外的なアピールを狙った建前の組織に過ぎません。憲法第68条で定められる『公民は信仰の自由を持つ』もないようなもの。町にあるキリスト教の教会も、00年から外交関係を結んだ西側諸国からの旅行者のために建てただけ。つまり、正恩氏を崇めるほか、選択肢がないんです」

 そればかりか、占いでさえも刑法で禁止されているとあって─。

「刑法第7章『社会主義共同生活秩序を侵害する犯罪』の第256条に『迷信行為罪』という罪名があります。金品を受け取って占い行為をした者には3〜7年の懲役刑が科せられる。その日の食事にも苦労する生活なので、占いに救いを求める人は多い。ですが、占い師と正恩氏の言葉が違っていたら、最高指導者の言葉に耳を傾けなくなるかもしれない。心の拠り所をブレさせないために、罰が設けられているんです」(辺氏)

 北には神も仏も関係なく、ただ正恩氏が鎮座しているだけ。次なるトンデモ法律の制定に、国民は戦々恐々としているに違いない。

*「週刊アサヒ芸能」9月30 日号より

2021/9/25 10:00

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