火災保険料がまた値上げへ。なんとなく払うのはやめて、今すぐすべきこと

<女性が一生、お金に困らないためのレッスン vol.12/経済評論家・佐藤治彦>

 マイホームが万が一、被害をこうむった時のための火災保険。でも火災保険の契約内容や保険料をしっかり把握してますか?

 自分にあった保険で、しかもムダに保険料を払わないでおくには、どうすればよいのでしょうか?

(以下、佐藤治彦さんの寄稿です。)

◆保険料を安くおさえるには?

 前回は火災保険の契約上のチェックポイントをお話ししました。ご自分のものだけでなく両親などの実家の火災保険も調べてあげてくださいね。

 さて、今回は保険契約上の問題はないとして、その補償のための保険料、掛け金の話です。同じ保険内容なら、できるだけ安く抑えたいですよね。

◆火災保険の保険料、値上げがたびたび

 ここで保険会社をめぐる状況についてお話ししたいと思います。

 最近の異常気象における台風や集中豪雨では、よく「50年に一度にあるかないかの甚大(じんだい)な被害が予想されます」などと気象庁から警報が発せられます。それが今や毎年のように年に何回も出たりします。そのためか、その表現に慣れっこになってきましたね。

 しかし、そのこと自体は事実なのです。そして、50年に一度くらいしか起きないだろうと考えられて、火災保険料の掛け金も決められてきたのです。

 今までは多くても年に1000億円行くかどうかだった、火災保険の契約者に対する保険会社からの保険金の支払いが、西日本豪雨以降、2年に渡って1兆円を大きく超えるなど、保健会社の想定をはるかに超える保険料の支払いとなってしまいました。もちろん会社の経営を圧迫します。

 そのような背景もあるのでしょう。このところ、火災保険の保険料は度々(たびたび)値上げされています。近いところでは2019年におおよそ平均で6%の値上げがされたばかりです。

 それが、また近いうち、おそらく1年以内に値上げされると言われています。それも、前回の倍近い、全国平均で10%超える保険料改定があると言われています。

◆建物の強度や耐火性などによって異なる保険料

 火災保険の掛け金・保険料は、建物の強度や耐火性、どの都道府県にある建物なのか、そして建設されてからどのくらいの年数が過ぎているかなどを考慮して計算されます。また、同じ火災保険といっても、建物本体に対する補償と、家財道具に対する補償は別契約です。

 例えば、建物の強度や耐火性では、M構造(コンクリート造マンションなど)は一番安くなり、T構造(鉄骨造の一戸建ての建物など)、H構造(木造の戸建てなど)と分けられ高くなっていきます。建物の強度や耐火性などによって保険料は大きく異なります。また、建物のある都道府県でも保険料が大きく変わります。

◆平均で10%を超える保険料の値上げがありそう

 先日、火災保険の保険料の目安となる、損害保険各社でつくる「損害保険料率算出機構」が定める「参考純率」が発表になりました。各社はこの数字に基づいて保険料を決めるのです。

 今までの例でいくと、この新しい参考純率が発表になってからおおよそ1年半以内に保険料が改定されます。それによると、次の改定では平均で10%を超える保険料の値上げがありそうなのです。

 しかし、これはあくまでも平均だということに気をつけてください。なぜなら、全体の保険料がどうなるかというよりも、自宅や両親の住む実家の保険料がどうなるかのほうに興味があるはずだからです。そして、平均で10%といっても、次回の改定では値上がりが40%近くなるところが多数ある一方で、値下げとなるケースも出てくるので厄介(やっかい)なのです。

◆値上がりする前に保険の見直しを

 まずは自分の場合はどうなのか調べてみてください。

 そして、値上がりするものは値上がりする、だけど必要なんだからしょうがない。そんな風に消極的に考えないでください。

 なぜなら、保険は契約した時点で契約期間の保険料が決まる。つまり、値上げ前に長い期間の保険契約にしてしまえば、保険料、掛け金はそこで契約期間中は固定されるのです。

 例えば、2年以内に契約満了の時期が来るとか、保険契約の内容自体を改めたい、そういった場合は特に考えるべきです。値上がりする前に保険の見直しをして、安いうちに長いものに契約、再契約するほうがいいかもしれないからです。

 特に、今までは次回からの契約期間が最長10年というところが多かったのですが、次の保険料改定からは最長5年と短くされる予定になっています。

 温暖化の進展によって、これからも値上がりが予想される地域で、値上げに弱い構造(特に木造一戸建て)にお住まいであれば、是非とも考えてもらいたいのです。

 さらに、今の住宅から住み替えることはなく、これからも10年以上住む。さらに手元にそれなりの現金があって低金利で運用先に困っているのであれば、10年分の保険料を前払いしてしまう選択もあります。これが、同じ保険内容でも最も安くつく保険契約であり、保険料の支払い方になるからです。

◆いまの火災保険の契約期間を調べて検討を

 ここまでの話を簡単にまとめますね。

 近いうちに大きな火災保険料の価格改定が予定されている。多くは値上げになるが、中には値下げになる場合もあるので、自分や実家の火災保険はどうなるのか調べる。

 そして、いまある火災保険の契約期間を調べる。改定で値上げになりそうであれば、保険料を安く抑える方法を考えてみる。特に今だけ有効な10年契約を考えてみる。となります。

◆火災保険の評価方法、時価?再建築向け?

 前回は保険契約の内容を水災を中心に説明してきましたが、もう一つぜひ考えてもらいたいことがあります。

 それは、火災保険の契約の評価の方法が時価になっているのか、再建築向けになっているかということです。

 時価ということは、元々は2000万円で建てた家屋であったとしても、時の流れとともに古くなり、今は時価1000万円の評価となってるかもしれません。この時に火災で全焼したとしても、保険金は時価の1000万円までとなります。再建築のためには、小ぶりの家にするか、自らお金を用意する必要があるわけです。

 一方で再建築ができる保険の評価は、新価(再調達価額)を基準にするものと言います。新しい建物を建てる費用となりますが、別に同じものを建てる必要はありません。最新の設備にしたり豪華さを求めると建築費用はもっとかかります。

◆時価で契約の場合は超過保険かをチェック

 ここで時価で契約している方にチェックしてもらいたいことがあります。それは、時おり超過保険になっていることがあることです。

 時価ですでに1000万円の価値しかない建物なのに、1500万円の補償の保険に入っていることがあります。保険料は1500万円の補償として計算されていますが、その保険料を払っていても、いざという時にはもう1000万の価値しかないものですから、全て失ったとしても、保険金の上限は1000万だからです。

◆保険金の請求に必要な画像

 最後にこんなこともお話ししておきましょう。

 万が一、台風などで被害を被った時には保険会社に保険金の請求を出します。それによって、初めてお金がもらえます。保険会社から、あなたのお住いは先月の台風で被害を被っていませんか?などと聞いてくれません。自ら請求しなければならないのです。

 保険金請求の時に必ず必要となるものに、現場の画像、写真があります。建物全体の写真と、被害を被ったところが具体的にわかるような写真。わかりやすく言うとアップで撮ったものも必要ということになります。

 これらも、被害が起きる前と後で比較ができるように、可能であれば事前に被害を被る前の家の写真をきちんと撮って残しておきたいものです。そして、不幸にして被害を被ったら、後片付けをする前に、証拠画像をできるだけ多く撮っておくことが重要でしょう。

 例えば窓ガラスが割れたところ。瓦が飛んできて屋根にめり込んでいるところ。床上浸水で水がどこまできたのかがわかる壁紙についたシミの写真、といった具合です。

 屋根に何かものが飛んできて、屋根を壊してしまったために、数か月したら雨漏りがするようになる。ありうる話ですね。ところが、台風直後には被害が発覚しないことがあります。なぜなら、屋根は私たちの生活圏からの視界ではで見えにくいところだからです。

 可能であれば、家周りの建物で屋根の状態を調べられるところがあるといいですね。

<文/佐藤治彦>

【佐藤治彦】

経済評論家、ジャーナリスト。1961年、東京都生まれ。慶應義塾大学商学部卒業、東京大学社会情報研究所教育部修了。JPモルガン、チェースマンハッタン銀行ではデリバティブを担当。その後、企業コンサルタント、放送作家などを経て現職。著書に『年収300万~700万円 普通の人がケチらず貯まるお金の話』、『年収300万~700万円 普通の人が老後まで安心して暮らすためのお金の話』、『しあわせとお金の距離について』『急に仕事を失っても、1年間は困らない貯蓄術』など多数 twitter:@SatoHaruhiko

2021/9/18 8:46

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