【WEリーグ開幕直前!】ベレーザ竹本一彦監督インタビュー「30年以上かけて築いてきたベレーザの精神を貫く」

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今シーズンから日テレ・東京ヴェルディベレーザを率いる竹本一彦監督は、日本女子サッカー初の全国リーグとして1989年にスタートした『日本女子サッカーリーグ』時代も、ベレーザを率いて日本女子サッカーの転換期を経験した人物だ。指導者として長らく女子サッカーの発展に貢献してきた指揮官には、30年以上経っても尽きないパイオニア精神がある。

選手が成長していく姿を見ることがやりがい。そこに男女の差はない
──竹本監督は1989年の第1回日本女子サッカーリーグ(のちのL・リーグ、なでしこリーグ)でも、監督として読売サッカークラブ女子・ベレーザを指揮していました。日本女子サッカーリーグ創設に至った背景を聞かせてください。
竹本 当時は日本女子代表の活動が年に1、2回あるかどうかという状況でしたが、そんな中で1990年の第11回アジア競技大会(北京)から、女子サッカーが正式種目に採用されることが決まりました。1991年にはFIFA女子世界選手権(中国大会)が開催されることも追加発表されて、これらに向けて代表を強化していく必要性が出てきました。そしてそのためには、全国リーグを創設するべきだろうという機運が高まったんです。

──当時は「全国リーグを作って運営していけるのか?」という不安の声もあったと聞きます。
竹本 運営にはお金も労力もかかりますからね。ただ、リーグ創設前は全国規模の大会が全日本女子サッカー選手権大会(現・皇后杯)しかなく、あとは数チームが集まって夏に清水市長杯、秋に刈谷中日新聞杯を戦う程度でした。もっと試合数を増やさなければ選手の強化につながらないし、やっぱり全国リーグが必要だろうという結論に至りました。準備期間が十分にあったわけではありませんが、女子サッカーに理解のあった堀田哲爾さん(元静岡県サッカー協会理事長)などの大変な尽力もあり、アジア大会の前年にリーグをスタートさせることができました。

──日本女子サッカーリーグ開幕当時の記憶で、特に思い出されるのはどんなことですか?
竹本 西が丘サッカー場での開幕戦は鮮明に覚えていますよ。全6チームが集結して開会式をして、ナイトゲームでベレーザ対清水FCが行われました。今ほどメディアが多かったわけではないので、せめてサッカー関係者の中だけでも団結してやっていこうという姿勢で開幕を迎えました。スタンドで他チームの選手たちが見ている中、私たちが2−0で勝ち、他の4チームも翌日に西が丘で試合をしました。

──ベレーザは第1回日本女子サッカーリーグで準優勝という成績でした。
竹本 私たちが勝ち点17の1位、清水FCが勝ち点15の2位という状況で、最終節に再び西が丘で清水FCと戦いました。事実上の優勝決定戦ということになりましたが、この試合に1−2で敗れて勝ち点で並ばれてしまい、得失点の差で清水FCに優勝をさらわれました(当時は勝ち点2制だった)。
 当時の私は「リーグ戦は守備力が高いチームが優勝する」と思っていたのですが、優勝を逃したことで「もっと点を取るべきだ」と考えを改め、翌シーズンは野田朱美(現・バニーズ群馬FCホワイトスター監督)をセンターフォワードにして攻撃的に戦いました。その結果、15試合で52得点を挙げてリーグ初優勝を果たすことができました。

──竹本監督は1996年にベレーザの監督を退任した後、一時女子サッカーの現場から離れていました。
竹本 これは日本女子サッカーリーグに関わる以前からですが、私は男女の区別をして指導をしているつもりはありません。もちろん、プロになれば勝つことが大きなテーマになってきますが、プロであってもアマチュアであっても、選手が日々変わっていく、人間的に成長していく姿を見ることにとてもやりがいを感じます。そこに男女の差はありません。
 それに、2014年9月からは東京ヴェルディのテクニカルダイレクターとして、翌年からはGMとして働いていたので、ベレーザが遠い存在ということはありませんでした。ベレーザの選手や指導者のことはよく知っていましたし、チーム編成にも関わっていたので、実はずっと女子サッカーの現場の近くにいたんですよ。



──今季からベレーザの監督に復帰し、WEリーグ開幕という日本女子サッカー界の節目を再び監督として迎えることになりました。
竹本 まあ、これはタイミングとしか言いようがないですね(笑)。日本女子サッカーリーグの開幕に続いて、WEリーグ開幕を再び西が丘で迎えられることについては、私個人としても縁深く感じています。第2回日本女子サッカーリーグで初優勝した時のように、今季もゴールに向かって突き進み、たくさんのゴールを挙げて勝利するベレーザの精神を貫いていこうと思っています。

──WEリーグは今後、どのように発展していくべきだと考えますか?
竹本 日本女子サッカーリーグが始まった1989年当時と比べると、女子サッカーの状況は全く違います。当時は普及も育成も強化もまだまだこれからで、私たちがパイオニアとしてあらゆるものを作っていこうという気持ちでした。
 しかし、今はなでしこジャパンが世界一になり、世代別代表でも結果を残したことで、ある意味で満たされている部分があります。WEリーグが発展していくため、日本がもう一度世界一になるためには、選手も組織も「プロフェッショナルはどうあるべきか」を本気で考えていく必要があると思いますが、「そんなことできないだろう」とネガティブな考えを持つ方に、その本気度を強く発信していくことが現時点では不足しているように感じます。

──ベレーザは選手の育成だけでなく、多くの指導者を女子サッカーの現場に輩出しているのが大きな特徴と言えます。
竹本 その歴史が長いだけに、多くのベレーザ関係者が全国の女子サッカーの現場にいることは確かです。選手生活を終えた後、どうやってセカンドキャリアを築いていくかというのは、ベレーザだけでなく東京ヴェルディというクラブが大切にしていることです。
 先日、ベレーザがヴェルディユースの男子高校生と合同練習をして、互いに選手をミックスして11対11のゲームをする機会がありました。すると普段の所属チームは違うにもかかわらず、味方同士でボールをつなぎ合っていました。100パーセントとはいかないまでも、思い描くサッカーが同じだったんですね。ベレーザの選手はそういう機会で男子選手の力強さやフィジカルを学べますし、指導者同士も男女や年齢の垣根を越えて、一緒に選手を育てるため、チームを強くするために、日々情報交換をしながら刺激し合っているので、指導の幅が広がります。こんなに恵まれた環境、全国でも実はそう多くありません。
 マイナビ仙台レディースの松田岳夫監督、三菱重工浦和レッズレディースの森栄次総監督と楠瀬直木監督、INAC神戸レオネッサの星川敬監督は、ベレーザやヴェルディに関わったことのある指導者です。選手の育成だけでなく、女子サッカーの現場で活躍できる、あらゆる人材をこれからも育成していければと思います。

──9月12日に行われる三菱重工浦和レッズレディースとのWEリーグ開幕戦、そして今季のWEリーグに向けての抱負をお願いします。
竹本 今のベレーザはとても若いチームで、それだけに大きな可能性を感じています。8月16日〜21日には御前崎市でキャンプを行い、昨季まで監督を務めていた永田雅人ヘッドコーチとともに、開幕に向けていい準備ができたと思います。浦和は昨季のなでしこリーグ優勝チームですし、選手も指導者も優れているので、穴を探すのは簡単ではありません。相手をリスペクトしながらも、ベレーザがずっとこだわってきた攻撃力を発揮して、多くのゴールを目指したいです。開幕戦にふさわしいドラマチックな試合をして、ぜひ西が丘に集まった方々と勝利を喜びたいです。
 それ以降もベレーザにとって思い出深い西が丘でホームゲームが組まれているので、積極的なプレーでゴールに向かい続けて、優勝を目指します。お子さんや女子サッカーを見たことがないという方にもぜひ来場してもらい、ベレーザのサッカーが「世界に近いこと」を実感してもらえるような、そんなプレーを数多く見せたいと思います。

インタビュー・文=馬見新拓郎

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