世界の福本豊 プロ野球“足攻爆談!”「絶不調の佐藤輝に伝えたいこと」

 阪神の佐藤輝が不振に苦しんでいる。8月31日の中日戦(甲子園)ではチャンスに代打で登場して、空振り三振。その時点で26打席連続ノーヒットとなった。僕はその試合、ラジオの解説で放送席に座っていた。入場規制のためにスタンドは1万人ほどやったけど、佐藤輝の代打がアナウンスされるとすごい拍手やった。三振でため息が漏れたけど、打っても打てなくても、客を呼べる選手であるのは間違いない。

 ここまで、田淵さんの新人球団記録の22本を超える23本をマーク。清原の持つ31本の新人プロ野球記録にも十分に届くペースで打ち続けていた。これからの日本球界を背負って立つ選手やし、器が大きすぎて、コーチが教えられるような選手やない。ソフトバンクの柳田もそうやったけど、試合を重ねる中で勝手に成長していく。佐藤輝にも壁を自分で乗り越えてもらうしかない。

 打席の内容を見ると、技術的には始動が遅い。タイミングが遅れているので、ストレートに差し込まれてしまっている。でも、タイミングのズレ自体はどんな選手でもあること。足を早く上げるとか、ちょっとしたことでバチッと再び合い出すことがある。

 五輪休み期間に打撃フォームも少し変えて、それがまだしっくりきていない可能性もある。構えた際のグリップの位置を下げるようになった。高い位置からバットを振り下ろすより、速い球に対応しやすくなる。誰かのアドバイスがあったのか、自分で前半戦の反省をしたのか。フォームが悪ければ、元に戻せばいいだけやし、大きな問題ではないんと違うかな。

 それより心配なのがメンタル面。打席の中で配球など、考えすぎている感じがある。これだけ試合を重ねると、得意コース、苦手コースのデータがはっきり出るのは当然のこと。基本的にローボールヒッターやから、内角高めを攻められて、変化球を落とされるか、最後まで速い球で押し通されるか。ミーティングでもスコアラーにいろいろと言われてると思う。1球目はこういう球で、2球目はこう来ることが多い、とか。僕から言わしたら、そんなものは参考程度に聞き流しておけばいい。

 申し訳ないけど、実際に自分の現役時代はスコアラーの話はほとんど聞いてなかった。「その通りに来るはずがない」と思っていたから。結局は速い球と遅い球しかない。内角高めの真っすぐにタイミングを合わせておいて、変化球が来れば拾えばいいだけなんやから。佐藤輝も実際にいい時は、そういう打撃ができていた。変化球に泳がされて、バットをチョコンと当てるだけでホームランにできる選手はそうそうおらん。今は三振の多さは気にせず、ブンブン振るスタイルを貫けばいい。教わっているコーチの誰よりも、新人で打っているんやから。

 まずは代打で結果を出してから、というのは難しいと思う。守りについて、打順が回ってくる間に準備してとか、スタメンで出る野手はリズムが体に染み込んでいる。いつ打ち出すかわからん選手やし、相手は不振でも警戒している。それに外野の守備を考えても、あの肩と正確なスローイングは大きな戦力となる。足の動かないロハスを外野で使うより、打てなくても佐藤輝が守りにつくほうが格段にいい。矢野監督は腹を据えて、スタメンで使い続けてほしいな。

福本豊(ふくもと・ゆたか):1968年に阪急に入団し、通算2543安打、1065盗塁。引退後はオリックスと阪神で打撃コーチ、2軍監督などを歴任。2002年、野球殿堂入り。現在はサンテレビ、ABCラジオ、スポーツ報知で解説。

2021/9/11 6:00

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