ラッシュフォードの壁画に人種差別的な落書き…地元民は愛あるメッセージで対抗

 EURO2020決勝での敗戦後、イングランド代表FWマーカス・ラッシュフォード(マンチェスター・U)の壁画が人種差別的な落書きによって汚されたようだ。これを受け、地元市民は愛あるメッセージで同選手へのサポートと反差別の姿勢を示した。マンチェスターの地元紙『マンチェスター・イブニング・ニュース』が12日に報じた。

 イングランド代表は11日にEURO2020決勝でイタリア代表と対戦。1966年に自国で開催されたワールドカップ以来となるメジャータイトル獲得に大きな期待がかかったが、PK戦にもつれる激闘の末に敗れて悲願の初優勝をあと一歩のところで逃した。ラッシュフォードは延長戦の終了間際に出場し、PK戦で3人を務めたが、シュートは左ポストに弾かれて痛恨の失敗。試合後には、同じくPKを失敗したMFジェイドン・サンチョとMFブカヨ・サカとともに、SNS上での人種差別的な誹謗中傷の被害に遭っていた。

 それに加え、マンチェスターにあるラッシュフォードを称える壁画も汚されたようだ。『マンチェスター・イブニング・ニュース』紙によると、イングランド代表の敗戦後、1時間もしないうちに、壁画に落書きがされた模様。地元警察は人種差別的な破壊行為として調査をしているという。

 マンチェスターのアンディ・バーナム市長は「卑劣で恥ずべき行為としか言いようがない。ラッシュフォードがこの街だけではなく、国全体に貢献してきたことを考えると、誰がそんなことをするのか、本当に信じられない。正気の人間がすることとは思えない。99パーセントの人が驚愕しただろうし、最も厳しい対応を望むはずだ」と一部のファンによる愚行を非難した。

 地元のヒーローへの侮辱行為に対し、市民たちは愛情で対抗している。ラッシュフォードの壁画は、落書きされた部分をシートで覆う応急処置が施された。すると、黒いシートの上には「ヒーロー」や「ロールモデル」などと記されたハートマークのメモが複数枚貼られ、それに続くように同選手へのサポートを示す多数のメッセージが掲載されてカラフルに彩られた。その中には「親愛なるマーカスへ、あなたはとても尊敬され、人々にとってインスピレーションであることを忘れないで」などとのメッセージが掲載されているという。

 壁画は昨年11月、貧困問題の解決に取り組んだラッシュフォードの功績を称えて作られた。同選手が幼少期を過ごしたマンチェスター市南部のウィジントンで、地元のアートプロジェクトの一環としてストリートアーティストのAkse氏が制作。壮大なモノトーンの肖像画はすぐに話題となり、町の象徴的な存在となった。

 同選手は昨年、新型コロナウイルスのパンデミック中に貧困家庭への食糧支援に取り組み、イギリス政府を動かして約130万人の子供たちに無料給食を届けたことで称賛を集めた。多くの子供たちを救った活動が評価され、昨年10月には大英帝国勲章の5ランクのうち5番目にあたる「メンバー(MBE)」が授与されていた。だが、ピッチ内外での活躍にもかかわらず、これまでも人種差別の被害を受けていた。

 壁画を企画したアートプロジェクトのメンバーであるエド・ウェラードさんは、「本当に悲しい。気がめいるよ。PKを失敗した選手たちを見たとき、抱きしめてあげたいと思っただけで、地元の人たちがお金を出し合って作った、素晴らしい若者を称える壁画を汚したいなんて思いもしなかった」と怒りのコメント。なお、損傷を受けた壁画は、作者のAkse氏が修復を行う予定だという。

2021/7/13 6:38

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