元AKBラーメン店主「セクハラ評論家ほかに10人はいる」炙り出される業界の根深い恥部

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 元AKBのラーメン店主が評論家のセクハラやラーメンオタクの誹謗中傷を告発したことをきっかけに、ラーメン業界が揺れに揺れている。店と評論家、ファンが一体となって盛り上げてきた業界で、今、いったい何が起きているのか? 最後に梅澤愛優香さんを取材、今回の「評論家の入店お断り」の真意について語ってもらった。

◆元AKB・ラーメン店女将の告発で業界の暗部が露わに

「ラーメン評論家の入店お断りします」

 9月24日、「麺匠 八雲」などのラーメン店主で、AKB48の派生ユニット「バイトAKB」の元メンバー・梅澤愛優香さんが、評論家によるセクハラとマウンティングをツイッターで告発すると、ラーメン業界に激震が走った。

 28日には、セクハラの“容疑者”として名前が取り沙汰されたフードジャーナリストのはんつ遠藤氏が「それ、僕です!」と認めたが、騒動が収束する兆しは見えない。梅澤さんは7日にも、ラーメンオタク(以下、ラヲタ)と思われる男性から「反社会的勢力と繋がっている」と事実無根のデマをSNSで流されたとして、提訴したばかり。このデマのほかにも、かねてよりSNSで誹謗中傷の被害に遭っていた。

◆「なんであんなに上から目線なのか……」

 今や世界に誇る日本の食文化となったラーメンだが、業界でいったい何が起きているのか。

「厳しく評価するのは構わないし、『あなたのラーメンはここがダメ。こうしたほうがいい』といった助言にも耳を傾けます。でも、評論家の言い分に少しでも反論すると途端に不機嫌になり、ウチの店は結局、紹介されませんでした……。だいたいろくに挨拶もせず、態度も悪いし、なんであんなに上から目線なのか。それでも人気店や有名店ではないウチのような店は、強く出られないんですよね」

 千葉県のラーメン店主(40代・男性)がこう明かすように、不遜な評論家に憤る店は少なくない。

「ある評論家は靴を脱いで、カウンターの椅子にあぐらをかいて、すごく偉そうで……。挨拶がないどころか、肝心のラーメンの話もなし。行儀が悪いな、という印象しか残りませんでした」(神奈川県の店主・30代・男性)

◆評論家といっても玉石混交

 そもそも、店と評論家はどんな関係にあるのか。フードジャーナリストの三輪大輔氏が説明する。

「飲食店は食べログなどレビューサイトの点数を上げたいので、影響力のある評論家を巻き込みたいもの。ラーメン店は評論家の発信力や影響力の恩恵を受け、一方のラーメン評論家は店で実際に食べなければ仕事にならない。また、トレンドの移り変わりが早いラーメンには、和食やフレンチのように確固とした基準がなく、年間何百杯も食べる評論家を介することで、客観的な評価を担保している。

 いわば、両者は一蓮托生のビジネスパートナーとして業界を盛り上げてきた。評論家がラーメン店に対してマウンティングしてもメリットがないどころか、悪評が立てば自分の仕事にも影響する。そんな評論家がセクハラやマウンティングなどするとは考えにくい」

 確かに、取材を進めると、正反対の声も聞こえてきた。東京都の女性店主(30代)はこう話す。

「私の知る限り、ラーメン評論家はモラルも高く、威圧するようなこともない。これまで業界の発展に多大な貢献をされてきた方々ばかりです。評論家を一括りに悪とみなす風潮を危惧しています」

 なぜ、評論家への見方がこうも分かれるのか。“ラーメン刑事”として年間600杯の丼をたいらげる、犯罪ジャーナリストの小川泰平氏はこう指摘した。

「評論家といっても玉石混交で、『店を紹介してやる』という態度の人もいる。ただ、店側も悪くて、紹介してもらえるならと低姿勢に出て、お代を貰わない店もあれば、お金を払うから紹介してくれという店さえある……。現在のラーメン業界では評論家の力が大きくなりすぎたし、店側もそれに甘えてきた。そんななか、評論家に毅然と対応した梅澤さんは立派です」

◆ラヲタが事実無根の店の悪評を撒き散らす!

 今回の騒動では、ラヲタがSNSで撒き散らす誹謗中傷やデマに苦慮するラーメン店の姿も浮き彫りになった。愛知県の男性店主(40代)は、悔しそうにこう話した。

「初めはいいお客さんだったんです。でも、知識をひけらかしたいのか、『こうすればもっと旨くなるなどと言うようになり、聞き入れなかったら『あの店のスープは業務用で、麺も自家製じゃない』『嘘までついて、ラーメンという食文化を汚している!』などと、事実無根のデマをSNSで流され、これを真に受けたのか客が減ってしまった……」

 評論家が訪れる店は限られるが、ラヲタは全国の至るところに存在するので、被害も多くなる。

「ラヲタが集団で来店して、私にするならまだしも、お客さんに『ラーメンとは……』などとマウンティングしたから注意したんです。その後、行列もないのに、『通行の邪魔だ』と通報され、パトカーが来たこともあった。レビューサイト、SNS、それに5ちゃんねるでも散々悪口を書かれました」(東京都の男性店主・50代)

◆ラーメン業界に被害が集中する理由は?

 飲食業のなかでも、なぜラーメン業界にこうした被害が集中するのか。前出の三輪氏はこう話す。

「ラーメンにオタクが多いのは、安価で全国に店があり、誰でも食べられ、情報も多いので知識を得やすい。誰もが評論家になれてしまうからでしょう。また、コロナ禍になり、ネットで店へ誹謗中傷する事例が増えています。ラーメン店はほかの業態に比べ店主の顔が見えやすく、コロナのストレスの捌け口にされた格好です。近年はグーグルの口コミを見て飲食店を訪れる客が多いが、グーグルは複数のアカウントを簡単につくれるので、悪評の投稿が急増している。レビューサイトでは意図的に店の点数を下げることは難しいが、グーグルの場合、やろうと思えばできてしまうのです」

 ひとりの若き女性店主が、図らずも炙り出したラーメン業界の恥部……。闇は思いのほか深い。

◆ラーメンブームとSNSの普及

1985年 荻窪ラーメンが人気を集める。ラーメンがテーマの映画『タンポポ』公開
1986年 全国のラーメン店を紹介した『ベストオブラーメン』(文藝春秋)発刊
1989年 「なんでんかんでん」「九州じゃんがら」など、とんこつブーム
1994年 新横浜ラーメン博物館開館
1998年 ご当地ラーメンブーム。「吉村家」を祖とする家系がブレイク
2000年 作る人に注目した「ご当人ラーメン」ブーム
2002年 ラーメンテーマパークが全国でオープン
2005年 食べログがサービス開始
2008年 ツイッター日本語版リリース
2012年 食べログのやらせ評価が発覚。「ステマ」が流行語大賞にノミネート
2013年 和食がユネスコ無形文化遺産に認定
2014年 訪日外国人客が増加、ラーメンが人気に
2015年 グーグルが口コミサービスを開始

◆セクハラ評論家は、ほかに10人はいる!?

「はんつ遠藤さんはブログで謝罪したけれど、お酒を飲みながら書いており、到底受け入れられません。それに、セクハラしてきた評論家は彼だけじゃない」

 アイドルから「麺匠 八雲」など3店舗のラーメン店の店主に転身した梅澤愛優香さんは、今回の「評論家の入店お断り」の真意についてこう語った。

「これまでお会いした10人ほどの評論家の方からは、いきなり手を握ろうとしたり、集合写真を撮るときに肩に手を回してきたり……さまざまなセクハラを受けたし、上から目線のマウンティングも多く、閉口していました。評論家の方たちはSNSが浸透する前に活躍していた人が多く、当時はテレビや本でしかラーメンの情報を収集できない時代だったから、彼らが店の命運を握っていた。そして今もその頃と同じ感覚で立ち振る舞っているのだと思います。ただ、私はすべての評論家を一括りに悪いとは考えていません。ちゃんと申し入れていただければ、取材も受けますよ」

◆「卑劣なラーメンオタクが増えている」

 梅澤さんは、ラヲタの誹謗中傷にも苦しめられてきた。事実無根のデマにより、新店の開業延期を余儀なくされたという。

「1店目の開業当時から、『所詮、アイドル上がり』『本人が作っていない』『1年以内に潰れる』などと、事実ではない中傷をされました……。彼らが評論家と違うのは、メディアに登場せず、SNSで情報を発信するところ。だから、モラルもなく、言いたい放題の人が多いのでしょう。また、ラーメンは注目を集めやすく、写真をアップしただけで『いいね』が1000もつくことも珍しくない。あくまでも発信した人ではなく、ラーメン自体に『いいね』がついているのに、ラーメンオタクのなかには、自分がインフルエンサーだと過信して、気に入らない店を誹謗中傷したりする。さらに、タチが悪いのが、SNSで店への中傷を煽って、賛同する人が増えたら集団で袋叩きにする……そんな卑劣なラーメンオタクが増えているんです」

 大衆的なのがラーメンの魅力だが、それゆえに不届きな輩も入り込みやすいようだ……。

【フードジャーナリスト・三輪大輔氏】
外食産業を精力的に取材。’19年7月より『月刊飲食店経営』副編集長。現代ビジネスなどネットメディアからテレビまで多岐に活躍

【ラーメン刑事・小川泰平氏】
犯罪ジャーナリストとして活動する傍ら、”ラーメン刑事”としてデイリースポーツ、まいどなニュースでラーメンの記事を執筆

取材・文/齊藤武宏 取材/山本和幸 大田栄作 写真/PIXTA


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