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吉原の大イベント俄(にわか)開催! そして涙を流して感動する女郎の姿に…【NHK大河『べらぼう』#11】

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*TOP画像/蔦重(横浜流星) 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」11話(3月16日放送)より(C)NHK

 

吉原で生まれ育ち、江戸のメディア王に成り上がった蔦重の人生を描いた、大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」(NHK総合)の第11話が3月16日に放送されました。40代50代働く女性の目線で毎話、作品の内容や時代背景を深掘り解説していきます。

馬面太夫が心に秘める吉原での苦い思い出

先週の放送回のラストでは、地本問屋のリーダー格・喜右衛門(風間俊介)が、蔦重(横浜流星)渾身(こんしん)の『青楼美人合姿鏡』について「これは 売れません」と言いながら、あやしげな笑みを浮かべていました。筆者は“この男が蔦重の邪魔をしようと悪だくみをしている”と勘ぐっていたのですがどうやら違ったよう。

 

喜右衛門は『青楼美人合姿鏡』がマニアックな内容であるゆえに、大衆の心をつかめないと察していたのです。この本は彼の予想通り売れ行きが悪く、蔦重は借金を抱えることに…。

 

そうした中で、大文字屋・市兵衛(伊藤淳史)は日光社参の行列から俄(にわか)の大々的な開催をひらめきました。

 

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日光社参の行列 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」11話(3月16日放送)より(C)NHK

 

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市井の人びと 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」11話(3月16日放送)より(C)NHK

 

市兵衛が俄を祭として開催することを女郎屋の主人らに提案すると、りつ(安達祐実)を中心に女郎屋の主人たちはのりきです。

 

そして、女郎屋の主人たちは女性ファンも多い富本節・馬面太夫(寛一郎)を俄の目玉として吉原に招くことを望みます。とはいえ、彼らにはツテがないため、馬面太夫を呼べるかどうかは人脈がある蔦重頼みに…。

 

みんなの期待を背負い、馬面太夫の説得に出かけた蔦重。「太夫に吉原の祭りに おいでいただきたく…」と公演後の馬面太夫に声をかけたものの、「悪いが 俺は吉原は好かねえんだ」とそっけない返事をされるだけでした。

 

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孫兵衛(片岡愛之助) 馬面太夫(寛一郎) 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」11話(3月16日放送)より(C)NHK

 

りつによると、馬面太夫は吉原に苦い思い出があるといいます。馬面太夫と門之助(濱尾ノリタカ)は売れっ子になる前に、役者の出入りが禁じられている吉原に素性を偽って遊びに行きました。このとき、若木屋(本宮泰風)に「二度と大門 潜んじゃねえぞ」と、ぶっきらぼうに追い出されたのです。

 

吉原は男にとってのロマンであり、憧れの場所…。馬面太夫も役者といえども、一人の男。素性を偽ってでも行くとは吉原に並々ならぬ憧れを抱いていたと思われますが、そんな気持ちを踏みにじられては恨みの1つや2つは抱くものです。

 

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りつ(安達祐実) 蔦重(横浜流星) 次郎兵衛(中村蒼) 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」11話(3月16日放送)より(C)NHK

 

馬面太夫がぞんざいな扱いを受けたのは上様の方針とも関係がありました。役者は売れれば騒がれるし、千両の給金も夢ではない職業。みんなが役者を目指せばまともに働く人がいなくなるため、役者は“四民の外の分”と位置づけられていたのです。

 

筆者はこの位置づけに賛同するわけではないものの、国を維持するには仕方がない取り決めなのかもしれないと思いました。現代の日本では労働人口の減少が深刻な問題であり、人手不足の職業は多々あります。そうはいっても、煌びやかな職業を目指す人は多い一方、社会に不可欠な業界には人が集まっているとは言いがたい状況です。今のこうした状況を踏まえると、“まっとうに働いているもん”が煌びやかに見える職業に就く人を“世間様の外”と吐き捨てられることで維持できる社会秩序もあるかもとふと考えてしまいました。

 

虚言と真心のはざまで 次ページ

女郎の涙が馬面太夫を動かす

蔦重は馬面太夫が吉原を拒む理由をりつから聞くと、さっそくアクションを起こしました。馬面太夫と門之助を座敷に招待し、女郎たちとともに謝罪をした上で、真心を込めてもてなしました。女郎と時間を共有する馬面太夫と門之助は楽しそうで、幸せな時を過ごしているように見えました。

 

馬面太夫と門之助は蔦重に頼まれて、富本を披露することに。女郎たちは彼らの声に真剣に耳を傾けていました。

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馬面太夫(寛一郎) 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」11話(3月16日放送)より(C)NHK

 

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女郎 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」11話(3月16日放送)より(C)NHK

 

富本に涙を流して感動する女郎の姿におどろく馬面太夫に、蔦重は次のように事情を説明しました。

 

「幼い頃より廓で育ち まことの芝居を見たことない者がほとんど。この江戸にいながら一度も芝居を見ず この世に別れを告げる者もおります。 吉原には 太夫のお声を聞きたい女郎が千も二千もおります。救われる女がおります。どうか……女郎たちのためにも 祭りで その声を響かせてはくださいませんか!」

 

吉原は今でいうところの風俗街。男の心を動かすのは女の色気や身体、虚言という印象を抱いている人は多いと思います。しかし、本作では、男の心を女郎たちは“心”で動かしています。瀬似(小芝風花)が花の井時代に源内(安田顕)の心を動かしたのも“心”でしたが、馬面太夫らの心を動かしたのも女郎たちの“心”でした。

 

金にものを言わせる鳥山検校 次ページ

鳥山検校は“愛する女”の望みを叶えるために

馬面太夫は「豊前太夫」襲名がようやく認められましたが、それは鳥山検校(市原隼人)の力添えがあったためです。この男は瀬似の望みを叶えるため、蔦重らの頼みを聞き入れて、馬面太夫の声を聞きに行き、彼の襲名が認められるように動きました。

 

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瀬似(小芝風花) 鳥山検校(市原隼人) 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」11話(3月16日放送)より(C)NHK

 

鳥山検校はお金にものを言わせて、瀬似を自分のもとに置いています。とはいえ、瀬似に対する愛は本物。

瀬似の心が自分にはないと察しつつも、彼女の望みを叶えてやる鳥山検校の姿を見ているとやるせない気持ちになります。

 

2025/3/18 12:31

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