「まだ若いから大丈夫」そう思っていた28歳女の誤算。経営者の男がなびかなかったのは…
男と女は全く別の生き物だ。それゆえに、スレ違いは生まれるもの。
出会い、デート、交際、そして夫婦に至るまで…この世に男と女がいる限り、スレ違いはいつだって起こりうるのだ。
—あの時、彼(彼女)は何を思っていたの…?
誰にも聞けなかった謎を、紐解いていこう。
さて、今週の質問【Q】は?
▶前回:3回目のデートで、彼が30歳女に感じた違和感。本気だったのに、年収1,000万男が彼女に告白できなかったワケ
潤から、連絡が来ない。
二度目のデートの後から急によそよそしくなったことに気が付いてはいたけれど、何となくその事実を認めたくなくて、私は少し足掻いているのかもしれない。
なぜなら、初対面の時にかなりグイグイと潤が来たからだ。
「真由香ちゃんって、本当に可愛いよね。今度デートしようよ」
そう言ってデートをした結果、「可愛い」と何度も言われたし、好意の矢印が私へ向いていたことは確実だったと思う。
それなのに、二度目くらいから急にトーンダウンした潤。
― 男の人は、外見が好きなら大概のことはクリアできるはずじゃないの?
それに、私はかなり気遣いができる方だと思う。ワガママや束縛などもしないし、しつこくした記憶もない。まだ28歳で若さもある。
誰に会っても「真由香ちゃんって、本当にいい女だよね」と言われる。
一体、私の何が悪かったのだろうか…?
Q1:男が初デートの時に感じた印象は?
潤と出会ったのは、知り合いのお姉さんが連れていってくれた食事会だった。
経営者が多く参加していたその食事会は、男性が既婚者と独身者が交じっており、出会いが目的というよりは、みんなで楽しく飲む会という感じだった。
そのため、全員が必死に出会いを探していたわけではなかった。
しかし、潤は彼女と別れたばかりのようで、食事会の最初から大きな声でこんなことを言っていた。
「いや〜、ついに別れちゃって。新しい人を探そうと思ってるんだよね」
39歳だという潤はバツイチらしいが、デザイン会社の社長をしているらしく、身なりも雰囲気もおしゃれだった。
そして食事会の最中から、潤は積極的に私に話しかけてくる。
「真由香ちゃんって、モデルさん?それとも、何かそっち系の芸能の仕事をしているの?」
女慣れしているのはわかっていた。でも、そんなふうに言ってもらえると、少しは嬉しい。
「私ですか?いえ、普通の一般人ですよ」
「真由香ちゃん、本当に可愛いよね。今度デートしようよ」
こうして、気がつけば潤とのデートが決まっていた。
しかも潤がデート場所に指定してきたのは泣く子も黙る名店で、一度は行ってみたいとずっと願っていながらも、半ば諦めていた超予約困難店『長谷川 稔』だった。
「さすが…」
潤が、何となくお金持ちで、センスが良く、顔も広くモテそうだということはわかっていた。けれども、このお店選びで、一気にそれが真実だとわかる。
「潤さん、さすがですね。私、このお店ずっと来てみたかったんです」
そう素直に伝えると、潤もまんざらでもない顔をしている。
「そう?よかった。何飲む?真由香ちゃんは普段、何を飲む人?」
「私は、何でも。潤さんは何にされますか?」
「僕は一杯目はビールにしようかな」
「じゃあ、私も同じのをいただきます」
二人で乾杯し、楽しい初デートが幕を開けた。
潤は話してみるとさらに魅力的で、話も上手だった。いつの間にか潤のペースに巻き込まれていたけれど、決して嫌な気持ちにはならない。
しかも潤は結構仕事の話もしてくれて、「心を許してくれているのかな?」と。少し期待してしまう。
「え!あのデザインも潤さんがされたんですか?すごいですね!」
「そんなすごくないよ。知っていた?」
「はい、もちろん。知らない人、いないですよね?」
「そんなことないでしょ〜」
「いやいや、本当にすごいです」
そのタイミングでグラスが空き、お互い少し顔を見合わせる。
「真由香ちゃん、次は何飲む?無理はせずにね」
「ありがとうございます。潤さんは何にされますか?」
「僕は日本酒にしようかな」
「じゃあ私も、お付き合いします」
「本当に?結構、いけるクチ?」
「そんなに強くはないですが…一緒に飲みたいので」
そう言うと、少し潤の口元が緩んだ。
「何それ、そんな可愛いこと言ってくれるの?嬉しいねぇ」
「いえいえ」
二人で美味しい食事を心ゆくまで堪能し、美食と美酒に酔いしれた。会話も盛り上がったし、結構私は気を使って話していたので、潤も終始楽しそうにしている。
「真由香ちゃん、もう1軒いける?」
「はい、もちろんです♡」
最終的に、この日は2軒目まで行って盛り上がった。そして解散間際、潤はたしかにこう言っていた。
「真由香ちゃん、またご飯行こうよ」
「ぜひぜひ!」
たしかな手応えを感じて、私たちは解散した。そして二度目のデートも、同じようにとてもスムーズに、順調だったはずだったのに…。
Q2:二度目のデートで男が女に対して思ったことは?
二度目のデートも、潤は素晴らしいお店を予約してくれていた。
― 潤と付き合えば、これが日常になるってことだよね…?
そう思うと、自然と笑みが溢れる。お金持ちで、優しくて独身。最高の条件だし、潤とはここまでデートをしたからには、確実に交際にまでこぎつけたい。
出会いは無限ではない。
東京にはこんなに人がいるのに、“いい男”と出会えるチャンスは限られている。
素敵だと思っても既婚者だったり、誰かのものだったり…。そう考えると、私は今日のデートを何としてでも成功させて、潤に気に入られなければならない。
だから現状で私にできることは、すべて出し尽くしたと思う。
まず待ち合わせの場所にも少し早めに行って、遅刻もしていない。経営者の人とデートをするならば、遅刻は厳禁だから。
するとこの作戦は功を奏したようで、お店に来た潤は驚いた顔をした。
「えらい!!真由香ちゃん、オンタイム?」
「はい、一応」
「俺さ、時間守れない人嫌いで。真由香ちゃん、素晴らしいね」
この日も掴みはOKだったらしく、潤がじっと私を見つめてくる。
「意外だよね。真由香ちゃんって、華やかだからもっとワガママというか…良い意味で、我が強いのかと思っていたけれど、そうじゃないんだね」
「そうですね。全然ワガママじゃないと思います」
本当はわがままも言いたいけれど、自己主張するのはもっと後になって、仲良くなってからでいい。しかもここまで褒めてくれるなんて、脈アリでしかないだろう。
「こんな可愛いのに性格までいいなんて…すごいよね。なんで独身なの?」
「いや、それは私が知りたいです(笑)」
「そっか、そうだよね」
そんな冗談も言いつつ、今日も潤は絶好調だ。
「真由香ちゃん、兄弟は?」
「私は妹が一人います。潤さんは?」
「僕は姉が一人いるよ」
「あ〜なるほど。だから女性に、こんなに優しいんですね。気遣いもできるし」
偏見かもしれないけれど、女兄弟がいる男性は、基本的に女性慣れしているせいか、よく女心がわかっていると思う。
「そんなことないでしょ。でも、姉から“モテる男とはなんぞや”は、常に教育を受けてきたかも…。女性には支払わせない、とか」
「さすがですね。お姉様も、よくわかっていらっしゃる」
「うちの姉貴、怒ると怖いからさ」
「それくらいの方がいいですよね。でも潤さんがこんなにも素敵な理由が、よくわかりました」
「褒めすぎだよ〜」
今日も潤は楽しそうにしているし、会話も弾む。それに潤の話もたくさん引き出せた。デートの成功は、とにかく“男性の話を聞き、語らせること”だと思う。
自分の話をベラベラとする女性はモテない。
その点、私は完璧だった。
「真由香ちゃんってさ、聞き上手だよね。気遣いも素晴らしいし」
「そうですか?嬉しい」
「うん。なんかついつい、話しちゃうもん」
「潤さんのお話、面白いので」
こうして、二度目のデートも満足度100%で終わった。潤は今回も、「またね」と言ってくれた。
しかしこれ以降、潤から連絡が来ることは無くなった。相手のテンションが下がっているかどうかくらい、もうわかってしまうほど大人になった。
でも理由が、まったくわからない。
デート中も、その前後も。
完璧だったし、マイナスな印象を与える言動は何もしていない。それなのに、どうして潤は、急に連絡をよこさなくなったのだろうか…。
▶前回:3回目のデートで、彼が30歳女に感じた違和感。本気だったのに、年収1,000万男が彼女に告白できなかったワケ
▶1話目はこちら:「あなたとだったらいいよ♡」と言っていたのに。彼女が男を拒んだ理由
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完璧な女が見過ごしていたこと