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マクドナルドは売上高・営業利益ともに過去最高を更新。モス、ケンタ…“競合チェーンとの違い”は明白

マクドナルド(以下、マクド)の2024年の売上は4054億円(FCを含むと8291億円)、本業の儲けの営業利益は480億円、営業利益率は11.8%とかなりの好業績だ。

◆“利益第一主義”で好調を維持するマクドナルド

前年に対して売上は+6.1%、営業利益率は+17.5%と著しい伸長度であり、計画を上回る実績。今期(2025年12月期)に入っても1月度は既存店ベースで売上+4.3%、客数+2.1%、客単価+2.2%と好調を維持している。

商品力を強化し、CMにも相当な費用を投じたことが奏功し、客数も2.4%増加している。店舗数もスクラップ&ビルドで、新規に106店出店し2988店(純増6)となった。

外食売上ランキングも2位の座を堅持している。自己資本利益率(ROE)は13.3%と収益率と投資効率が高い。財務構造も自己資本比率が75.1%と盤石で、経営の安定性は十分すぎるほどだ。

外食売上ランキング1位のゼンショーは売上が9658億円(2024年3月期)とマクドの倍以上あるが、マクドがFC売上を含めれば大きな差はない。

多業態戦略で経営資源を分散させているゼンショーと単一業態で経営資源を集中させているマクド。売上至上主義と利益第一主義の業績の差異は利益に表れる。

両社の最終利益(純利益)は、ゼンショーの307億円に対し、320億円とマクドの方が上だ。マクドは直営店3割、FC店7割の構成比率で利益率を高めているのが顕著だ。

◆加熱するハンバーガー市場の分布図

店舗数・好業績・ブランド力で2位以下に圧倒的な差をつけるマクド、昔から商品力に高い評価があるモスバーガー(以下、モス)、1970年に設立され今年で55年を迎えるフライドチキンが売りのケンタッキー、外食最大手のゼンショーの傘下に入り再生を目指すロッテリアと融合店のゼットリア、一度、撤収したが、新たな発想でまた市場を開拓しようと店舗数を最も増やしているバーガーキング、などが競い合っているのが現況だ。

現在の店舗数上位3社は、1位マクド2,988店、2位モス1,312店、(1位・2位共に24年12月末時点)3位ケンタッキー1,232店(24年3月末時点)となっている。

店舗数2位のモスとはよく比較されていたが、店舗数では倍以上の開きがある状態だ。また、マクドもFC比率を高めているとは言え、殆ど(構成比96.5%)がFCのモスとはビジネスモデルが異なる。

昔は安さが強みのマクドに少し高いが商品力があるモスと対立構図が明確だった。今はマクドも商品価値を高め、価格に対する価値より品質に対する価値を追求し、2位以下を引き離しにかかっている。

立地戦略も一等立地に出店するマクドと二等立地に出店するモス。マニュアルを遵守した接客サービスのマクドとフレンドリーな接客のモスなど、色々な点で好対照だった。

かつては、コストリーダーシップ戦略で市場を牽引してきたが、付加価値化に路線変更した結果、モスとの価格差は殆どなくなっている。

通常、価格差がないのであれば商品に価値があるモスに客足は向かいそうだが、マクドのブランド力とマーケティング力に苦戦している現状だ。

ブランドは重要な無形の経営資源であり、お客様への信頼の証と競争力の源泉で、それらを巧みに使い首位の座を維持するのがマクド。そして、追随するモスとそこに独自のポジショニングを持ったケンタッキーが存在価値を高めている。

4位以下も店舗数の急伸や新たな業態開発で奮闘はしているものの、店舗数に大きな差があるのが現況だ。

◆400円の壁に苦しむハンバーガー業界

市場規模は約7,000億円市場と推計され、市場自体は僅かだが伸びている。

昔はデフレの象徴とも呼ばれていたが、ここ数年の値上げブームでハンバーガー価格も上昇傾向にある。実質賃金が上がらず節約志向が高まる中で、個人消費も力強さを欠いている消費事情。

消費者が求める価格と店の価格は乖離している状態だ。ハンバーガー業界もあらゆるコストの上昇で、収益が上がりにくい経営環境の中で戦っており、ハンバーガーの400円の壁を一つの基準にしながら、成長を模索している段階だ。

かつてはデフレの勝ち組だったマクドも、半額(65円)バーガーを販売し、他社が真似できない低価格戦略で市場シェアを高めた時期があった。それに負けじと、各社も追随し価格競争が激化したのである。

合理的基盤ができてもいないのに、単に追随型のディスカウント戦略を展開し、早々にやめて価格を元に戻すなど失敗した店も出現し、混乱した時期であった。

コストリーダーで仕掛けた先駆者のマクドも、今は定番商品の価格はビッグマック480円を中心に400円台が主力で、新商品もこの価格帯である。ハンバーガー単品が400円台ならドリンクやポテトをセットにしたら600円を超してしまう。

だが、この物価高騰の中、安売りは経営を圧迫するからできないのが実情で店は苦しい選択を強いられている。

働く人のランチ予算は452円(ホットペッパーグルメ総研の調査)となっており、完全にオーバーする価格設定だ。お客さんの動向を見ながら、適切なプライシングが重要となってくる。

◆FC比率増加と客層の幅広さで他社を圧倒

1971年創業今年54年目であるマクド。経営環境の変化に柔軟に対応する為、日々進化を続けている。

運営形態もフランチャイズ店(以下、FC)の構成比を徐々に上げている。これは固定費を低減させて損益分岐点比率を引き下げ、経営効率の向上とリスク分散を狙える。

2008年、リーマンショックを契機に、より一層FC比率を高め、経営基盤を強固にした。FC展開も社員の暖簾分けだけでなく外部からの募集も積極的に進め、現在、FC比率は約7割だ。

直営店で実績を作ってから、FCオーナーに譲渡するパターンも多い。新たに始めるオーナーは既に実績と顧客基盤があるから、早期回収に期待ができる。

マクド本体も譲渡した店舗が変動費化できるから、リスクは低減できるのでお互いが最適のはずだ。今は、マクド232人のFCオーナーと志を同じにし、経営理念共同体として、共にブランド価値向上に向けて、一体感を醸成させている。

店舗数の平均所有は1人当たり10店舗と多く、それだけ経済的にも価値があることの証明であり、平均年商も約20億円あるそうだ。

マクドの創業者が提唱し全世界の店舗で日々実践しているQ(品質)S(サービス)C(清潔さ)&V(価値)を実践し、各店がブランド価値の向上に努めている。

客層は幅広く、ファミリー層、若年層、会社員を標的顧客に設定している。

ファミリー客には「家族での食事の場」を提供。若年層に対しては、飽きの来ない新メニューやトレンドに合わせた商品を提案し、SNSなどでの拡散効果も狙っている。 忙しい会社員には短時間で食事が済ませられる利便性を提供。

それぞれのターゲット層に適した商品や企画の提供を通じて、業界首位の座をキープしているのだ。

また、社会とのつながりを大切にし、子供たちの未来がより幸せなものになるように、社会貢献活動(ドナルド・マクドナルド・ハウス支援・学童野球・食育支援など)にも取り組んでおり、こういった活動も評価されている。

◆徹底的な効率経営で高い利益率を維持

多様なニーズに対応し、収益機会の増大と経営リスクの分散を図る為に多業態戦略を展開する外食大手が多い。一方、単一業態戦略で一気に攻勢をかけるのがマクド。

経営資源の集中で効率経営を実現しており、利益率の高さは最適なビジネスモデルであることを物語っている。

2025年~2027年の中期経営計画に於いても、店舗ポートフォリオの最適化とFCビジネスの強化・拡大を目標に掲げて、更なる成長を目指しているようだ。

店舗運営では、店内飲食・テイクアウト・ドライブスルー・デリバリーと4つの販売機能を有しているが、ムリ・ムダ・ムラが生じる体制をなくし円滑な運営ができるようクルーを各機能に効果的に割り当てている。

店外販売では、デリバリー機能でウーバーなど外部配達員と自前のマックデリバリーの拡充で、更なる比率(売上の約10%)の向上を目指しているなど、限られたキャパシティを有効活用している。

ドライブスルーにも各担当者が付きお客さんにサポートや誘導で1台当たりの注文時間と引き取り時間の短縮化を目指している。

また、店内もモバイルオーダーの活用でテーブル席やドライブスルーからも注文できて、受け取り方や支払い方法もいろいろ選べて顧客の利便性を向上させている。

これらで、レジ前の混雑状態を解消して、並ぶことに苦痛を感じて帰る客を防止し、機会損失防止にも役立っている。

工程管理や動作研究も勘案し、作業動線の短縮化を実現したカウンターと厨房の中で、クルーが各自の役割を認識しながら作業している。

ランチタイムなど時間に制約があるケースでは、ピーク時に一気集中する約1時間をクルーの集中投入でチャンスロスを防止し、効率的に捌きながら人時生産性を向上させているようだ。

◆マクドナルドの勢いを止めるバーガーチェーンは現れるか

商品戦略として、①お客様のニーズに合わせた魅力度の高いメニューを全ての時間帯で販売、②マクドならではのおいしさと定番メニューの充実、③四季折々の季節感や楽しさを提供する期間限定メニューの提供、などで、売上成長と収益性向上を実現している。

調達に関しても、約3000店舗への安定供給を実現するため、世界各国と連携したグローバル・サプライチェーン・システムがあるのもマクドの強みの一つだ。

スケールメリットだけでなく、特定の地域や国での災害といった不測の事態にも、緊急調達網としても活用することで、お客さんに安定的に届ける仕組みが確立されている。

プロモーション戦略としては、店舗体験向上を通じてお客様にバリュー(価格以上の価値)を提供している。約2500万人の公式アプリ利用者など盤石な顧客基盤を有効に活用し、来店を促進。

労務政策は、「働きがいを全ての人に」をスローガンにしている。多様な人材が働きやすい職場環境、地域社員制度、ワークライフバランスを実現する勤務制度など、エンゲージメントを高めることを目的に人材投資を積極的に行っている。

女性も率先して管理職に採用し、女性店長も34.2%と高い構成比だ。社会の課題である男女共同参画社会の実現に向け企業イメージを向上させている。

各社がマクドをどういった差別化手段を講じて猛追するか、マクドを脅かし、勢いを止めるのはどの店かに注目が集まる。

また、消費者が妥協できるハンバーガーの価格は400円とされるが、その壁にどう対応し、価値ある商品の提供ができるか否かで栄枯盛衰が決まる。

ハンバーガー業界に競争と刺激を与え、より一層の品質向上と価格低下を期待したい。

【中村清志】

飲食店支援専門の中小企業診断士・行政書士。自らも調理師免許を有し、過去には飲食店を経営。現在は中村コンサルタント事務所代表として後継者問題など、事業承継対策にも力を入れている。X(旧ツイッター):@kaisyasindan

2025/2/14 8:52

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