「私の実家なのに」離婚して出戻った35歳女性がすごした切ない正月。母の“まさかの一言”で
年末年始は、実家で家族や親戚とゆっくり過ごしたいと考える人も多いでしょう。しかし、実家の部屋数に限りがある場合、大勢で泊まるのが難しいこともあります。
「自分の家のはずなのに、一人で過ごすはめになりました……」。そう語るのは関西在住の大森智子さん(仮名・35歳)。昨年の秋、離婚して実家へと戻ってきた智子さんが経験した年末を聞いてみました。
◆コロナ禍を機に離婚し、実家へ出戻り
「元夫とは結婚して、3年でコロナ禍がやってきました。夫はIT企業に勤めていたのですが、パンデミックの影響で仕事が急激に忙しくなったんです。最初は会社に泊まる日が増え、やがて帰ってくるのも3日に1回程度になりました」
そんな生活が続いた後に、社内命令でホテル暮らしになった夫。智子さんはそれから1年以上も夫のいない家で1人、待ち続けていたといいます。
「最初は頻繁に連絡を取り合っていた夫とも、次第にやりとりが減っていきました。気づけば、いつかは子どもがほしいという思いが強くなり、焦りを感じるようになりました。35歳の誕生日が近づく中で、このままでは子どもを持つことが難しくなるかもしれないと考え、夫に相談してみましたが、夫は仕事で忙しく、私の話に耳を傾ける余裕がない様子でした」
夫の態度をきっかけに、次第に夫への気持ちが冷めていった智子さんは、最終的に離婚を決断しました。
「離婚の話を切り出しても、夫は特に反論することもなく、あっさりと受け入れていました。その姿を見て、私も未練が完全になくなりましたね。離婚後に夫と会ったのは、2人で住んでいたマンションを引き払った日だけでした」
◆母の一言に耳を疑った
傷ついた心を抱え、行き場を失った智子さんは実家に戻ることに。久しぶりに帰った実家では両親が暖かく迎え入れてくれ、そのおかげで少し気持ちが落ち着いたといいます。
そして、離婚後初めて迎えた昨年の年末年始。智子さんにとって、毎年妹とその子どもたちに会えるのは大きな楽しみでした。結婚していた頃は、姪っ子たちとたまに会って遊ぶ程度だったため、今回は家に泊まりに来ることを心待ちにしていました。しかし――。
「実家で過ごす正月には問題が1つありました。実家は広いわけではなく、寝られる部屋が限られているんです。両親の部屋、私の部屋、そしてリビングがある程度で、妹夫婦や姪っ子たちが泊まるとなると、部屋がどうしても足りません。最初は私の部屋で姪っ子たちと一緒に寝ようと考えたのですが、母がこんな提案をしてきたんです」
「智子はホテルに泊まればいいじゃない?」
一瞬、耳を疑った智子さん。まさか、自分の家に帰ってきているのに追い出されるようなことを言われるとは!
「母の理屈はこうでした。『あなたは独り身で大人なんだから、ホテル泊くらい問題ないでしょう?』と。確かに、妹夫婦は子連れで何かと大変なのは理解できますし、私がホテルに泊まることで妹たちが快適に過ごせるなら、それが家族を思う行動なのかもしれません。でも、どうしてもモヤモヤする気持ちは消えませんでしたね……」
◆円安で海外旅行もできない
結局、智子さんは正月の間、近くのビジネスホテルに滞在することになりました。夜遅くまで実家でテレビを見たり、お酒を飲んで過ごした後、家族や姪っ子たちが寝るころになると、1人でホテルへ帰るという日々だったといいます。
「今年も妹の家族がやってくるので、またビジネスホテルを予約して1人で泊まるつもりです。正直なところ、いっそのこと1人で海外旅行にでも行って、優雅な時間を過ごしたいくらいです。でも、円安の影響でどこにも行けない状況です。元夫と別居していた頃に、1人でお正月を迎えたことがあったんですが、そのとき『二度とこんな寂しい思いはしたくない』と思いました。それで実家に戻れば家族と一緒に過ごせると思っていたのですが……まさか、こんな展開になるなんて想像もしていませんでした」
家族が結婚すると、その分家族が増え、賑やかで華やかな正月を迎えることができます。しかし、智子さんのように部屋の数が限られているため、全員が快適に泊まれるわけではない状況に直面する人もいます。
「こんなことなら、いっそさっさと再婚して家を出ていきたい……」
そう呟く智子さんの表情には、複雑な思いがにじんでいました。
<文/結城>
【結城】
男女観察ライター。鋭い視点で世の男女を観察し、 夫婦問題からイタい火遊びまで、幅広いエピソードを華麗に紡いでいく。Twitter:@yuki55writer