「今じゃ冷やかしの人しか来ないよ」住民は10人弱の高齢者のみ…千葉の巨大団地がゴーストタウンと化した理由
かつては企業誘致で栄えた地方都市が急速な荒廃に直面している。不況によって、地元を支えてきた大手企業の工場閉鎖・縮小が相次いだためだ。活気を失い、まるで“ゴーストタウン”と化した現在の街に迫った。
◆住民は10人弱の高齢者のみ…解体を待つ巨大団地の今
千葉県茂原市の街外れの山の中を車で走行中、突如廃墟のような団地群が現れた。
1970年代に造成されたこの真名団地は、約5万6000㎡という広大な敷地に建てられた低所得者向けの市営住宅だ。約60棟、299戸。しかし、現在の住人は10人弱。それも、来年3月には全員が市から転居を打診されている。
「この地に50年以上住んでいる」という80代の近隣住民に話を聞いた。
「昔は街にも団地にも、活気と勢いがあったよ。この団地だけで小学校がつくれると言われたほど、子供もたくさんいたんだから」
活気あふれる当時の姿が想像できないほど、今では建物全体が草木に覆われ、窓や扉は朽ち果てている。まるでゴーストタウンと化してしまった街を見渡し、男性はため息交じりに語った。
「今じゃ勝手に心霊スポットにされちゃったみたい。外国人とかユーチューバーのような、動画を撮る冷やかしの人しか来ないよ」
◆防犯面の不安もあるが…「団地のみんなは家族同然」
かつてこの茂原市は、日立製作所や東芝、パナソニックの関連企業のほか、三井東圧化学など天然ガスの関連会社が進出し、工業都市として賑わっていた。
しかし、’00年に入ってから撤退や縮小が相次ぎ、市の人口や税収は減少。周辺にあるほかの団地も含め、相次いで過疎化していった。
取材中に「この団地の敷地を市に貸している」という地主の家族に遭遇した。
「これだけ広い土地でしょう。その一部は元農地で、市に土地を貸している人は私のほかに10人近くいるの。昔は市の財政が潤っていたからか、市のほうから『20年まとめてこの額でどうですか?』と、大きな金額を言ってくれて。でも財政が厳しくなるにつれて、『借地料を下げてほしい』『土地を返したい』と。市の苦しさもわかるけど、今さら返されてもね……」
さらに、80代と90代の住民にも話を聞いてみた。
「団地のみんなは家族同然。しかも残った人はそれ以上の絆がある。市はやんわりと転居を勧めてくるけど……。この年で新しい土地で新しい人間関係をつくるなんて、気がめいっちゃうよ」
驚くことに、団地には鍵が開いている空き部屋があり、何者かが侵入した痕跡もあった。防犯面も気になる団地の荒廃化。市と住民との間では、話し合いが続いている。
取材・文/週刊SPA!編集部
―[[企業が捨てた街]の悲惨なその後]―