「毎日飲んだくれてとかはもうやらなくなった」31歳俳優が目指す“カッコよさ”とは

 12月6日(木)に東京・日本青年館ホールで開幕し、12月26日(木)からは京都での公演が始まる、草彅剛主演のウィリアム・シェイクスピア作品『ヴェニスの商人』の舞台に出演している俳優の野村周平さん(31歳)。

 演じるのは、富豪の美女ポーシャ(佐久間由衣)に求婚するバサーニオ。野村さんは、「生半可な気持ちではやれない」と意気込みを語ります。

 これまで数々の映画・ドラマでさまざまな役を演じ、来年はデビュー15周年という節目を迎える野村さん。ここ1~2年「自分なりに頑張っているところがあります」と仕事への向き合い方に変化が。お話を聞きました。

※インタビューの内容は、すべて取材当時のものです

◆「人生のそういう時期なんだなと思った」

――今回の舞台、オファーが来たときの心境はどうでしたか?

野村周平(以下、野村):今までやって来なかった、自分にとって初めてのシェイクスピア作品ということで、最初はいろいろと思うところがありました。というのも今まで自分には難しそうだ、僕には到底できないだろうと避けていたような題材だったので。でも今回、ご縁がありお話をいただいて、これもちょっとした運命かなと思って引き受けました。

――どういうところに運命を感じたのでしょうか?

野村:少し前から自分の考え方が変わってきて、いろいろな音楽、映画、勉強、書籍などを読み、シェイクスピアみたいな作品が好きになってきていたんです。その過程で今回のお話が来たので、シェイクスピアをやるべきときなんだろうと。運命以外の言葉が見当たらなかったのでカッコつけてそう言いましたが(笑)、人生のそういう時期なんだなと思ったんです。

――どのような役柄を演じられますか?

野村:バサーニオを演じます。金持ちですが、だらしなくて金遣いが荒い。すぐなくなり年上の親友アントーニオ(忍成修吾)に金を借りに行くような人です。アントーニオはバサーニオの為に高利貸しシャイロック(草彅剛)から借金をする。人の懐にすぐ入る人たらしなところもあり、詐欺師っぽいところもある。人間味もあり、最後は「走れメロス」的なところもある(笑 )。とてもいい役柄ですよ。

◆作品への意気込み「生半可な気持ちではやれない」

――野村版バサーニオはどのような感じになりそうですか?

野村:自分を寄せていく感じになるのかなと思います。だいぶ昔の人なので、僕のほうへ来てくれることはないので(笑)。自分をどれだけその時代の人間に近づけられるかという感じで演じるわけですが、もともとは英語のセリフを日本語に訳しているわけで、その壁もあるなと。また新たなバサーニオ、『ヴェニスの商人』という感じがします。セリフはあるのですが、作り上げなくてはいけない感じがしています。もっと掘らないとって。

――改めて舞台『ヴェニスの商人』への意気込みを教えてください。

野村:こんなに素晴らしい方々とやらせていただけて光栄です。このバサーニオという人物はめちゃくちゃ重要な役で、彼がいないと話が始まらないと言いますか、ちゃんとしていないとダメな役柄。彼がいなければただ平和に終わりそうというか(笑)。なので、生半可な気持ちではやれないなと思っているところです。

◆「いろいろなことを知っている人の顔つき」

――来年でデビュー15周年になるかと思いますが、ひとつの区切りという意味では何か思うことはありますか?

野村:16歳のときにオーディションで受かってデビューしたので、もうそのくらいになりますね。これからどうするか、思うことはありますが、まだ今は言わないんです。考えてることはあります。それが実ったとき、「ああ、こういうことをやろうとしていたんだ」という感じでみていていただければいいかな。

――30代に入り、改めて仕事への向き合い方について考えたりは?

野村:1~2年前から自分なりに頑張っていることがあります。このままもっといろいろな映画を観て、勉強をして、ドラマや小説を読み、もっと知識をつけて博識になっていければいいなっていう感じですかね。今をぬるく生きてしまうと、たぶん40歳のときにダサい俳優になってしまうと思うんです。なので、未来のための貯金を増やしている感じです。

――将来のために蓄えている時期ということ。

野村:文化貯金です。お金の貯金ではなく(笑)。その年になって何も知らない人になるのは嫌だし、いろいろなことを知っている人の顔付きってあると思うんですよ。知れば顔つきが変わってくるはずだと思うので、そのときにカッコいい顔になれていればなと。なので海外もたくさん行くし、映画もいっぱい観たり、小説もたくさん読んだり、そういう勉強ですね。

◆“やんちゃなのに博識”のほうがカッコいい

――1~2年前に何かきっかけがあったのですか?

野村:いえ、実際にやってみて楽しくなって、知ったほうがカッコいいとも思ったんです。もう31歳になりますが、今だっていろいろなことを知っていたほうがカッコいいじゃないですか、ただのやんちゃではなく、やんちゃなのに博識のほうがカッコいいなって(笑)。

――それまでの自分を否定することではなく、積み上げていくわけですね。

野村:これまでの自分があったからこそ、今があるわけなので。なので、毎日飲んだくれてとかはもうやらなくなりましたし、それよりも1本面白い映画、ないかなと探して観たり、小説を読んだほうがいいと思うんです。40歳、50歳、60歳のときにカッコいい俳優でいるために、今をどう生きるかを考えています。

<取材・文/トキタタカシ>

【トキタタカシ】

映画とディズニーを主に追うライター。「映画生活(現ぴあ映画生活)」初代編集長を経てフリーに。故・水野晴郎氏の反戦娯楽作『シベリア超特急』シリーズに造詣が深い。主な出演作に『シベリア超特急5』(05)、『トランスフォーマー/リベンジ』(09)(特典映像「ベイさんとの1日」)などがある。現地取材の際、インスタグラムにて写真レポートを行うことも。

2024/12/25 15:46

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