“15年間フルーツしか食べない人物”に起きた驚きの変化。「ラーメンもお菓子も食べたいとは思わない」――仰天ニュース傑作選
2024年の大反響だった記事をピックアップ! すご過ぎて順位はつけられない「すごい人生」部門はこちら!(集計期間は2024年1月~10月まで。初公開2024年4月30日 記事は取材時の状況) * * *
焼肉に寿司、ラーメンにパスタなど、飽食の時代と言われて久しい現代日本では、あらゆるものが好きな時に食べられる。
しかし、選択肢が無限にあるにもかかわらず、15年間フルーツのみを食べて生活している人物がいる。フルーツ研究家の中野瑞樹氏だ。一体なぜそんな生活を始めたのか、体にどんな変化があったのか、本人を直撃した。
◆水も飲まない驚きの食生活。野菜やナッツはたまに食べる
――2009年から約15年にわたって、ほぼフルーツしか食べていないそうですが、具体的にはどんな食生活なのですか?
中野瑞樹氏(以下、中野):肉や魚はもちろん食べていません。豆や芋、米やパンなどの穀物も野菜も食べていません。水やお茶も全く飲んでおらず、水分の補給もフルーツからのみですね。
――フルーツ以外は全く食べていないということですか?
中野:最初は本当にフルーツだけでした。でも、初めて1か月程で、体がものすごく塩分を欲するようになって塩を舐めはじめました。また、果実野菜(キュウリ・トマトなど)も食べています。さらに、たんぱく質の不足を補うため、ナッツ類を食べることもありますね。厳密にいうと、食事の99%以上をフルーツ中心に果実だけで賄っているということです。
――1日にだいたいどのくらいのフルーツを食べるんですか?
中野:季節や日にもよりますが、平均すると1.5~2kgくらい食べています。
◆フルーツは「好きでも嫌いでもなかった」
――もともと、フルーツ好きだったんですか?
中野:好きでも嫌いでもなかったです。フルーツに興味をもった2003年以前は、スーパーに買い物に行ってもフルーツを買った記憶がありません。実家からたまに送られてきたり、外食した際にデザートに出てくるようなタイミングでしか食べていませんでしたね。
――そこからなぜフルーツに興味を持つようになったんですか?
中野:学生時代、沙漠緑化の研究をしていました。当時、ある途上国での植林の事業などを間近で見た時、地元の人が国からやらされているという状況でした。そうなると、やりがいもやる気も出ないので、長続きしません。そこで、緑化を進めるには「地元住民も経済的に潤うやり方でないだろう」と思ったんです。
――儲かるかどうかですね。
中野:そうです。そんな時、ある本を読んで「フルーツは総合栄養食」だと知りました。そこで、ひらめいたんです。フルーツが体にいいことをを広く知ってもらえれば、農家の方が自発的に果樹園を増やしてくれて、ひいては地球温暖化対策にもなるんじゃないかと。
◆きっかけは「フルーツへの誤解を解くため」
――そこから、なぜほぼフルーツだけの食生活をするようになったのですか?
中野:医療関係の方がよく、「フルーツは甘いから食べ過ぎ」などと注意されますが、フルーツの食べ過ぎについて、人の体で調べた研究がなかったからです。地球の樹を増やすにはみんながもっとフルーツを食べるのがいいんだけれど、食べ過ぎや食べ方に関する不安をぬぐう必要があります。
――確かに「食べ過ぎ注意」というイメージはありますね。
中野:「フルーツは甘いから糖尿病になる」「フルーツは果糖が多いから中性脂肪を増やす」など、医学的に誤ったことを、医師や栄養士などの肩書のある方が、病院やメディアなどでしばしば吹聴するので、日本ではフルーツに対する誤解が広まっています。
――あくまでデザートとして少量食べる程度のものだと。
中野:そうです。肩書きもなく医者でもない私がフルーツの良さをどんなに熱く語っても、誰も耳を傾けてくれません。だからこそ、私自身が体を張って調べてみようと思ったんです。フルーツを食べ過ぎた場合に起こる影響について研究した人はどこにもいませんでしたから。
◆15年間、他の食べ物を食べたいと思ったことがない
――単純に“飽きる”ということはありませんでしたか?
中野:ないですね。みなさんも、水やお茶を毎日飲むと思いますが、飽きることはないですよね。私は、夏ならスイカで冬ならみかんを、水やお茶の代わりに食べているので、飽きることはないです。
――理屈上はわかりますが、私ならどうしても他のものを食べたくなってしまいそうです。
中野:実は、実験開始の前の年に3週間、“フルーツだけ生活”を試して、比較的たやすく達成できたんですね。でも、それは「3週間後には好きなものが食べられる」というゴールが見えているからできたことなんです。実際、期限を決めずに始めた時は、2日ともたずに、何度か失敗しています。
――街に出れば、いい匂いもしますし、ネットやテレビでも美味しそうな食べ物の情報ががわいて出てきますからね。
中野:そこで、この実験をはじめる直前の4か月は、死ぬまでに食べておきたいいものはないかを探して、一つずつお別れしていきました。おかげで、今回の実験を始めて15年、ラーメンもお菓子も食べたいと思ったことはないですね。
◆出張時は持参し、現地で調達することも
――外出時はどうしているんですか?
中野:基本的には家から持って出かけますよ。なので、連泊の出張の時などは大変ですね。とにかく、行く時が重たい(笑)!
――出張にまでフルーツを持って行くんでですね(笑)。
中野:流石に全て持っていくわけではありませんが、数日間の出張後は肩が痛くなります(笑)。
――現地でも購入するんですよね?
中野:ホテルの近くのスーパーなども調べますが、仕事が終わる時間には開いていなかったりします。水やお茶を飲まないので、フルーツがなくなることは私にとって本当に死活問題なんです。最悪、コンビニがあれば冷凍フルーツがあるので、それでしのぐこともあります。昨日も、スーパーを見つけるまでファミマで冷凍マンゴーを買ってしのいでいました(笑)。
――食事会や飲み会などもあると思いますが、そんな時はどうしていますか?
中野:もはや呼ばれなくなりました。だって、呼ばれて行っても僕は水すら飲まないでただ座っているだけですからね。そういう点からも、私のようなフルーツ生活は、他の人には絶対に勧めませんね(笑)。
◆健康診断の数値はどうなったのか
――健康診断の数値などは変化しましたか?
中野:33歳でこの実験を始めて、今48歳ですが、看護師さんやお医者さんにはしばしば検査結果を褒められますね。血糖値も血圧も肝機能も正常、特に腎臓の機能がとてもいいようです。
――見た目にも、ほっそりされていますが、若々しく健康的に見えます。
中野:以前にテレビの企画で骨密度を調べてもらったことがあったんですが、同年代の男性に比べて3割も高い骨密度で驚かれました。
――糖分を多く摂ると骨が溶けると、昔はよく言われましたね。
中野:担当のお医者さんも結果を信じてくれなくて、2回計測し直しましたが、もちろん数値は同じでした。ひとつわかっていることは、温州みかんの色素に含まれる「βクリプトキサンチン」という成分が骨密度を高めるという、エビデンスがあります。なので、その影響もあるのかなと思います。
◆一生涯続けて、死んだら検体にしてほしい
――15年もやっていれば、本来の目的は達成できたのではないですか?元の生活に戻ろうと思わないんですか?
中野:体が自然に衰えてくる50~60代でもどうなるか調べたいと思いますからね。できるなら一生涯続けたいですし、死んだ時には私の臓器を検体として出したいので、今の所やめるつもりはないですね。
――解剖して診てもらうんですね。
中野:はい。例えば、冬場は、温州みかんの色素(βクリプトキサンチン)のせいで、手のひらや足の裏はもちろん顔も黄色いです。ところが近年、骨粗鬆症、2型糖尿病、肝臓病予防など、βクリプトキサンチンの健康効果が明らかになってきてるんですが、食品から大量に摂り続けた人体実験例はありません。医学の発展にも寄与できると思うので、臓器を含めていろいろと調べてもらいたいです。
◆日本のフルーツ消費量は先進国で「断トツ最下位」
――世間のフルーツに対する誤解は解けてきましたか?
中野:まだまだですね。日本人はフルーツを平均で100g/日も食べていなくて、先進国で断トツ最下位です。世界平均も200gを超え、フルーツは調理しなくていい分、野菜よりも手軽に食べられる健康食品としての認識が高い国もあります。
――日本でのフルーツは、あくまでデザートとしての認識で極端に言えば、お菓子に近いくらいに捉えられていますね。
中野:本来は野菜と同じように毎日しっかりフルーツを摂るべきなんですよね。厚生労働省も1日200gは食べることを推奨してています。バナナなら2本、みかんMサイズなら3個分くらいです。一食で食べる訳ではなくて、分けて食べると考えると、大した量ではないですよね。私は「先フル」と言って食前にフルーツを食べることをオススメしています。食事前にフルーツを食べると、血糖値の上がり方がなだらかになることも、2021年に論文が発表されるなど、明らかになってきたからです。
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誰も経験したことがない検証を黙々と続ける覚悟には頭が下がるばかり。かく言う筆者もフルーツをほとんど食べない派の人間。たまにはスーパーのフルーツ売り場の前で立ち止まって見ようと思った。
<取材・文/Mr.tsubaking>
【Mr.tsubaking】
Boogie the マッハモータースのドラマーとして、NHK「大!天才てれびくん」の主題歌を担当し、サエキけんぞうや野宮真貴らのバックバンドも務める。またBS朝日「世界の名画」をはじめ、放送作家としても活動し、Webサイト「世界の美術館」での美術コラムやニュースサイト「TABLO」での珍スポット連載を執筆。そのほか、旅行会社などで仏像解説も。