「廃墟のまま」保存しなければならず…「軍艦島」の整備費に「30年で110億円」の壁

 現在放送中のドラマ「海に眠るダイヤモンド」(TBS系)の舞台、「軍艦島」に、ある異変が起きているという。

 神木隆之介主演の物語は、海底炭鉱の前線基地として世界一の人口密度を誇った軍艦島こと、長崎県の端島を軸に展開されるが、ドラマ効果もあってか同島には連日多くの観光客が訪れている。

 炭鉱は1974年に閉山。その後は無人島になったが、2009年から一般の上陸、見学が可能になった。15年には世界遺産に認定され、海外からの観光客も多く訪れるようになった。

 だが、建物はほぼ閉山当時のままで、すでに半世紀が経過。現在では島の至るところで建物の崩壊が確認されているのだ。

「軍艦島は周囲を海に囲まれているので、塩害や海水による腐食に加え、紫外線や台風など、崩落の原因となるものはいくらでもあります。特に高層アパート群では、ベランダのほか、建物の骨組みにあたる梁の崩落も一部で確認されています」(トラベルライター)

 島内には遊歩道と柵が整備されており、それを超えて中に入ることはできないが、非公開エリアを見学できる特別ツアーなども実施されている。そのため、《観光地化が島の崩落を加速化させた》との批判もあるようだ。

「ただ、建物へ自由に出入りしているならともかく、基本的にはNGですし、そもそもとっくに寿命を迎えている。それでもなんとかして崩落を食い止めようと保存活動を進めている状況なんです」(前出・ライター)

 軍艦島の場合、廃墟としての価値を損なわずに保存しなければならず、難易度は非常に高い。しかも、それには莫大な費用がかかり、島を所有・管理する長崎市の財源だけで賄うには限度がある。

「そのため、軍艦島の保存・活用のための整備を使い道とした『端島整備基金』というのがあり、24年3月末時点で約15億7000万円が集まりました。ただ、18年からの30年間で整備には約110億円必要との試算もあり、全く足りないのが現状です」(同)

 最盛期には5000人以上が暮らし、日本の近代化と高度経済成長を支えた端島。往事の住人の生活に思いをはせながら、保全活動を支援してみてもいいかもしれない。

2024/12/10 10:00

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