『エマニュエル』『山逢いのホテルで』ほか、この冬堪能したい女性の目覚めを描いた映画3選
女性の主体性や自立を応援する映画が数多く発表されている昨今、現代に生まれ変わった『エマニュエル』をはじめ、この冬は女性の欲望の解放を鮮やかに描いた作品が順次日本公開を迎える。
女性の欲望に焦点をあて、新たな視点や考えを与えてくれる作品として、体裁と欲望の間で揺れ動きつつも様々な人と交流をきっかけに自身を解放させていく女性主人公たちが背中を押してくれるような、“女性の目覚め”を描く3本を紹介する。
『山逢いのホテルで』公開中
成熟と可憐さの狭間で揺れ動く、しなやかで鮮やかな女性讃歌
舞台はスイスの壮麗な山々と湖畔に囲まれた優雅な景色の中にたたずむ実在のホテル。息子への献身的な愛と現実逃避の夢の間で揺れ動く大人のラブストーリー。
主演を務めるのは『ボレロ 永遠の旋律』『バルバラ セーヌの黒いバラ』などで知られるフランスの俳優ジャンヌ・バリバール。ファッションデザイナーとして活躍してきたスイス出身のマキシム・ラッパズの初の長編デビュー作で、カンヌ国際映画祭AICD部門オープニング作品に選ばれた。
酸いも甘いも嚙み分けてきた大人でも、新しく巡ってきた解放のチャンスの前では戸惑ってしまう。
現実のしがらみを抱えながらも再び女性としての目覚めを味わった主人公クローディーヌの選択とは? スイスの大自然の中で描かれる目覚めは大人の円熟味があってこそ。絵画のような映像美にも注目の1作。
『ブラックバード、ブラックベリー、私は私。』2025年1月3日(金)より順次公開
力強くて愛おしい、中年から始まるポップな青春
ジョージアの新進女性作家タムタ・メラシュビリの大ヒット小説を原作に、新しい人生を踏みだそうとする女性の葛藤を描いた異色の青春ドラマ。
30代の新星監督エレネ・ナヴェリアニが、いままで結婚したいと思ったことが一度もない女性の「性」をカラフルな画面と絶妙なオフビート感でポップに、そして大胆に描きだす。
主人公エテロを演じたのは、ジョージアで舞台を中心に活躍してきたエカ・チャブレイシュビリ。“おひとりさま”を謳歌する女性がひょんなことから突発的に男性と肉体関係を持ってしまったら――? 現代女性の心に染み入りそうな力強くも愛おしい作品。
『エマニュエル』2025年1月10日(金)より公開
刺激的で大胆、かつてない“快感”に溺れる――
1974年にジュスト・ジャカン監督×シルヴィア・クリステル主演で映画化され、全世界を熱狂で包んだエマニエル・アルサンによる官能文学の傑作「エマニエル夫人」。日本でも一大ブームを巻き起こした大ヒット作が50年ぶりに完全新作として蘇る。
メガホンをとったのは、前作『あのこと』でヴェネチア国際映画祭金獅子賞、リュミエール賞作品賞を受賞し、英国アカデミー賞、仏セザール賞の監督賞にノミネートされ、フランス映画界で最も重要な存在の1人となったオードレイ・ディヴァン。舞台を現代に移し、観る者にめくるめく興奮と陶酔、さらには幸福感までも与えるエロティシズムを、大胆かつ刺激的に描き切った。
『あのこと』では、堕胎の“痛み”を観客に体感させたオードレイ・ディヴァンが、本作で挑むのは“快感”。いかにして映像作品で観客に体感させるか、音、色彩、台詞の抑揚など細部まで綿密に計算し尽くし、新たな映像表現の可能性を堪能できる力作となっている。
主人公エマニュエルを演じるのは、『燃ゆる女の肖像』『TAR/ター』など多くの話題作で忘れ難い輝きを放ったノエミ・メルラン。リアルな人との関わりが極端に少なくなった現代を生きる女性が、人間の欲望に果敢に向き合っていく様を、脆さと強さをもって見事に体現している。
コロナ禍を経た現代だからこそ生まれ、共感を誘うエマニュエルの新たな目覚め。自身の価値観が揺さぶられる1作となっている。
(シネマカフェ編集部)
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山逢いのホテルで 2024年11月29日よりシネスイッチ銀座、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開
© GoldenEggProduction | Paraíso Production | Fox the Fox 2023
ブラックバード、ブラックベリー、私は私。 2025年1月3日よりヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国にて公開
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エマニュエル 2025年1月10日よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国にて公開
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