義理の妹を居候させた部屋が「数カ月でゴミ部屋」に。「自立する資金を援助する」ことで厄介払いに成功したが…
「夢のマイホーム」などという古い言葉があるが、自分の家を持つことは、一生に一度あるかないかの大きな出来事であることには、昔も今も変わりはない。それゆえにできれば揉め事とは無縁の状態を保ちたいものだが、そうもいかないケースもある。
物流システム関連の仕事をしている宮瀬直登さん(仮名・33歳)にとって、家に関する考え方が大きく変わった経験だったという。
◆妻の妹と同居することに
「それまでは家に人を呼ぶのが好きでした。安心できる我が家で好きな人間たちと飲んだり、笑い合ったりするのってやっぱり良いじゃないですか。飲み会がそのまま泊まりになることも多かったんですが、この経験をしてからは一切なくなりました」
宮瀬さんと妻の光さん(仮名・30歳)は共働きで、マイホームを購入したのは結婚して5年目のことだった。
「建売でしたが、何十軒もの物件を見てようやくこれぞと思う家を見つけて購入しました。購入が決まった時はうれしかったですよ。大切にしようと思い、掃除もマメにしていました」
マイホーム購入から1年ほど経った頃、妻の光さんからある相談をされた。
「妻には妹がいて、地方にある実家に住んでいたんですが、仕事を辞めてWebデザイナーになるため専門学校に通うので、上京することになったんです。一人暮らしする家を探したものの決めきれないまま新学期を迎えてしまうことになり、家が決まるまでの間、うちに住まわせてもいいかという話でした」
◆買い置きしておいたものが無断で飲み食いされている?
義妹の麻奈巳さん(仮名・27歳)は新居にも遊びに来ており、何度か3人で飲みに行ったこともあった。
「明るくて物おじしない性格で話していても楽しいので、一時的な同居であれば大歓迎でした。この決断を、後でひどく後悔することになりましたが……」
麻奈巳さんには、リビングと襖で区切られている6畳の客間を使ってもらうことにした。
「週末に妻と義妹と3人で飲むのも楽しくて、引越し先がなかなか決まらないことも全く気にしていませんでした」
同居生活が続く中で、少し気になることがあった。
「買い置きしていたカップラーメンやアイスなんかは自由に食べてもらっていいんですが、晩酌用に買っておいたちょっと高い生ハムや旅行に行った際に買ってとっておいたクラフトビールなんかを無断で飲み食いされるようになったんです」
◆義妹の部屋から異臭が漂っていた
光さんは妹を叱ったが、宮瀬さんはそこまで気にしてはいなかった。
「知らずに食べてしまうこともあると思いますし、『これは食べないで』と言ったわけでもないので、怒るのは酷だと思いました。でも、妻が怒るのには理由があったんですが、その時は気づことができませんでした」
義妹の引越し先が決まらないまま数カ月が経過した頃、帰宅した宮瀬さんはある異変に気づいた。
「帰宅してリビングに行くと、吐しゃ物でもあるようなひどいにおいがしたんです。なんだろうと思ってにおいを辿ると、義妹が使っている客間からするようでした。その時、義妹は学校に行っていて不在で、女子の部屋に勝手に入るのはダメだと思いながらも、あまりのにおいに調べてみることにしたんです」
◆見るも無残なゴミ部屋と化していた
そこにはショッキングな光景が広がっていた。
「部屋には服やプリント、雑誌、空のペットボトルやお菓子のゴミ、カビだらけの菓子パンとか、大量のゴミが散乱していて足の踏み場もなかったんです。テレビで見るゴミ屋敷が自宅内に出来ている状態で愕然としました」
さらにショックを受ける光景を目の当たりにした。
「においのもとを辿ったところ、元凶は食べかけのまま何日も放置されていたらしきカレー味のカップラーメンでした。それが倒れていて、真新しい畳に大きなシミを作っていたんです」
流石に宮瀬さんも、帰宅してきた麻奈巳さんを叱らずにはいられなかった。
「『貸してる部屋をこんな風に扱うなんてひどいよ』と怒ったんですが、『勝手に部屋に入るなよ』と逆ギレされました。自分では埒があかないので、帰宅した妻に説明したところ、なぜか自分に怒りの矛先を向けられて、『だから、早く追い出せば良かったのよ!』と怒鳴られました」
混沌とした状況の中、宮瀬さんはある事実を知ることになった。
「義妹は実家でも片付けをいっさいせず、自室をゴミ部屋にしてしまう悪癖の持ち主だったんです。妻はだから追い出そうとしたというんですが、それならそうと言ってくれないとわからないので、『なんでそんな大事な話を黙ってたんだよ』と自分も怒鳴ってしまい喧嘩状態になって……もうめちゃくちゃでした」
◆早く追い出したいものの、遅々として進まず…
事態を鎮静化するため、宮瀬さんは光さんと話し合うことにした。
「妻の言い分は『数日だから大丈夫だと思い、言わなかった』というものでした。義妹は家を決めずにズルズルと居候状態が長期化し、妻は仕事が忙しくて腰の重い義妹に家を探させることができなかった。それが、この結果に至った経緯でした」
光さんとの関係は元に戻ったが、問題はまだ未解決の状態だった。
「義妹に出ていってもらうために説得しようとしたんですが、『家が決まってない』『お金がない』と言うばかりで、全く動こうとしないんです。何度も説得しようとしたんですが、どんな話も彼女の耳には入らない状態でした」
◆「自立する資金を援助する」ことで厄介払いに成功したが…
一刻も早くこの状況から抜け出したいと考えた末に、苦肉の策に辿り着いた。
「今出て行くのであれば、資金を援助すると申し出たんです。具体的には言いたくないですが、そこそこの額を毎月支払うというものでした……。それでようやく同居を解消することができました」
麻奈巳さんが専門学校を卒後するまでの1年あまり、無駄な出費は続くことになった。
「その後、義妹は就職したんですが、人間関係がうまくいかずに退職して、実家に帰ることになりました。あの苦痛と資金援助はなんだったのかと思うと、いまだに気持ちの整理がつきません」
光さんの実家に行く際に、麻奈巳さんと顔を合わさざるを得ないが、お互いに終始無言で冷え切った関係にあるという。
<TEXT/和泉太郎>
【和泉太郎】
込み入った話や怖い体験談を収集しているサラリーマンライター。趣味はドキュメンタリー番組を観ることと仏像フィギュア集め