「売る側からいったら『カモ』」老後への不安で投資する40代がお金で失敗するワケ<漫画>
生涯独身人生がめずらしくなく、おひとり様という言葉が孤独よりも優雅と感じられる昨今。とはいえ、40歳を過ぎる頃には、不安が頭をよぎるのではないでしょうか。
そのために必読なのが『大人ぼっちマニュアル』(よしたに著、幻冬舎)。いざひとりになった時に、仕事や健康そして老後、「大丈夫か!?」と慌てないよう、各分野の専門家がサバイバル術を伝授しているのです。
◆40代、気づいたら体の不調やお金の心配が
安定した仕事、ひと段落した子育て。順風満帆な40代。そんな矢先に頭をもたげるのは、体の不調やお金の心配ではないでしょうか。
体が弱るとメンタルも弱ります。実体のなかった不安が明確になっても焦らず対処できるように、本書を参考にしていきましょう。
◆お金のためにやること、やらないこと
老後2000万円問題がささやかれて早数年、40代はそれなりに貯蓄している人が多く、投資に踏み切る人ももちろんいるのですが。
「先行きの不安があって、まとまった額のお金を持っている人は、売る側からいったら『カモ』」と、本書に登場する経済評論家の山崎元先生が断言。
40代でキャリアの壁にぶつかり、「不動産や暗号資産を買って『仕事以外で』一発逆転を狙う人が多くなる」と安易な儲け話に乗ることに警鐘を鳴らします。
老後の資金を心配するあまり、つい迷走してしまうのでしょう。せっかく貯めた大切なお金です、安易な情報に流されるのではなく、情報を厳選しなくてはなりません。
忘れてはならないのが、老後のための資金に集中するあまりに、今を後回しにしてしまうこと。いざ、お金を使う時になっても、体に支障が出ていたら悲しすぎます。若いうちにしかできない体験も楽しむべき。今、使うお金と、老後の資金のバランスを考慮しましょう。思い出はかけがえのない財産でもあるのです。
◆保険と銀行、お金のからくり
テレビやネットでやたらと保険をプッシュしていますが、本書いわく、「国保があるかぎり高価な保険商品は必要ない」とのことです。
他、不動産購入も避けたほうが無難です。実際、40代以降で親が残した不動産や空き家の処分で困っている人が、私を含め、私の周囲にもたくさんいます。
「当面使わないだろうお金を『eMAXIS Slim 全世界株式』通称『オルカン』にすべて突っ込む」と本書がすすめる投資法はいたってシンプル。
これもテレビやネットで銀行や証券会社をやたらとプッシュしていますが、手数料で会社が潤うようにできているといいます。
自分のお金は自分で守り、今を楽しみつつ、老後に備えたいです。他力ではなく自力で、貯めたお金に働いてもらいましょう。
◆健康診断をサボっていませんか
今日の健康は、昨日までの生活の積み重ねでできています。今日の脂肪が昨日のケーキバイキングでできていないのと同じです。会社員は年に一度の健診がありますが、そうでない方がおろそかにしがちなのが健康診断。
べつに具合は悪くないから、寝れば治るから、ちょっと疲れただけだから。もしくは、病気だったらこわいから健診に行かない。そんな言い訳は即、捨ててください。
人は誰しも年を取ります。年を取れば、どこかが劣化するのは当然です。肌荒れやほうれい線は気にするのに、体の内部に目を向けないのは本末転倒。
安心してください、40代の少しの劣化なら努力でカバーできます。
健康をキープするために、実践すべきは5つ。「①健康診断の結果を無視しない ②かかりつけ医を持つ ③食生活を見直す ④お酒の正しい飲み方を覚える ⑤運動する習慣を作る」。めんどうくさいと思うなかれ。
40代のルーティンが輝く50代の布石になります。特に⑤は「1基礎代謝を作る 2有酸素運動をする」なので、無理!と投げ出す人もいるでしょうが、あきらめないでください。
基礎代謝を増やすには「朝やお風呂前のストレッチとスクワットやドローイン」、有酸素運動は「通勤で毎日30分早歩き」でクリアできるのです。
何度も言いますが、40代の過ごし方で50代の健康が決まります。食事、運動、頼れるお医者さん、この3本柱で健康に関する不安の芽を摘んでいきましょう。
◆悩み多き40代、うまく「ひとり」を生きる
仕事も安定し、子育てもひと段落、反面、親の介護や新たな人間関係にストレスを抱える人もいます。40代でうつになる人もめずらしくなく、ストレスの解消方法もご自身で把握しておくべきかもしれません。
「同じストレスを負っていても、一人暮らしの方のほうが苦しいことが多い」と本書が諭(さと)すように、ひとりだと帰宅しても気分転換できず、悩みのループにはまってしまうのでしょう。
生涯独身率が高くなった現代、ソーシャルサポート(SS)を作るのもひとつの方法だそうです。ソーシャルサポートとは「助け合える友達」。
持ちつ持たれつ、という言葉がありますが、ソーシャルサポートの基本は「お互い様」理論です。ちょっとドライに聞こえるかもしれませんが、「『契約』だと思えばいい」と本書。
「ひとりで「生きる」ためには、たくさんの人と少しずつ依存しあう」。これもいわば助け合いで、新たな集団生活ともいえるのではないでしょうか。
「ぼっち」が集まれば、「ぼっち」ではなくなり、不安が安心に変わります。本書に載っているのは、多方面から生き方を見直した、新しい時代のライフハックなのです。
<文/森美樹>
【森美樹】
小説家、タロット占い師。第12回「R-18文学賞」読者賞受賞。同作を含む『主婦病』(新潮社)、『私の裸』、『母親病』(新潮社)、『神様たち』(光文社)、『わたしのいけない世界』(祥伝社)を上梓。東京タワーにてタロット占い鑑定を行っている。X:@morimikixxx