航空産業循環推進協議会、持続可能な未来に向けた「2050年航空業界ロードマップ」を発表
Nandina Remanufacturing Pte. Ltd.
具体的な戦略を提示し、国内外の航空業界関係者によるサプライチェーン全体での循環型アプローチの一体化を後押し
航空産業循環推進協議会(Aviation Circularity Consortium: ACC)は本日、「2050年航空業界ロードマップ」(以下、「2050年ロードマップ」という)を発表しました。本ロードマップは、航空業界が循環型経済モデルを取り入れ、世界の持続可能な目標に向けて貢献を果たすための包括的なガイドラインとなる事を目指しています。
ACCは本年初めにその構想が立ち上げられ、現在、その具体的な活動を進める中において、本ロードマップは、持続可能な目標へ向かって移行するなか、航空製品や他の主要産業で使用する低排出・再処理された高品質の素材や部品の認証に向けた戦略的な道筋を示しています。
航空業界における循環型経済のチャンスを掴む
国連の国際民間航空機関(ICAO)は、2050年までに国際航空の排出量が3倍に増加する可能性があると予測し(注1)、 同年までに国際航空のネットゼロ排出目標を採用している(注2)ため、持続可能な解決策の必要性がこれまで以上に高まっています。日本も2050年までにカーボンニュートラルを達成するという目標を掲げていることから、国土交通省は航空宇宙部門における脱炭素化への取り組みを推進しています(注3)。この取り組みは日本国内で運航する国際航空会社と協力して進められており、主要の2社も同じく2050年までのカーボンニュートラル達成を約束しています。しかし、これまでの進展には多くの課題があり、目標達成に向けた課題は多く、まだ楽観視できないという見方もあります(注4)。
循環型経済は、排出量と素材コストの削減、イノベーションと雇用創出の促進、そしてサプライチェーンの強靭性向上を通じて、この課題に対応するための変革的な解決策を提供します。
ACCの「2050年ロードマップ」は、アゼルバイジャンで開催中のCOP29にて気候行動に関するグローバルな議論が活発化し、循環型経済を取り入れる機運が高まるなか発表されました。本ロードマップは、主要な航空関係者との協力によって策定され、バリューチェーン全体で循環型経済の可能性を活用するための実践的なガイドを提供し、業界を低炭素で持続可能な未来の実現を促進します。
変革のための4つの柱
「2050年ロードマップ」は、循環型経済の推進において関係者が優先すべき重要な取り組みを示す、相互に関連する4つの柱をもとに構成されています:
- 需要の喚起:循環型製品やサービスに対する強固な需要を生み出し、循環型アプローチの開発と採用を促進すること
- 技術および規制に関する明確なロードマップの確立:透明で一貫性のあるガイドラインを策定し、業界全体で循環型経済への一貫したアプローチを確保すること
- サプライチェーン全体での循環型供給と規模の確立:循環素材の需要増加に対応するために信頼できる供給体制を整え、循環型経済を普及させるためのインセンティブを提供し、循環型素材の取引に対する投資を推進すること
- 循環型設計:循環型サプライチェーンの一環として機能できるよう素材や製品の設計にライフサイクル終了時の考慮を組み込み、再処理を促進すること
「循環型アプローチは、安全で持続可能な素材を確保するための明確な道筋を提供しますが、それを広げていくためには業界全体の取り組みが求められます」と、Nandina REM社 CEOを務めるKarina Cady(カリナ・ケイディ)氏は述べました。「航空業界はこの変革を主導する特別な立場にあり、『2050年ロードマップ』はエコシステム全体の主要な関係者に対してこの変革を推進するための実践的な計画を提供します。すべての航空業界の関係者に、循環型経済を実現し、より持続可能な未来への道を切り拓くために共に歩んでいただきたいと考えています」
株式会社ジャムコの代表取締役社長・会長の阿部俊之氏は次のように述べています。「日本の航空業界は、卓越した製造技術、信頼される品質への揺るぎないこだわり、そして長年にわたり培ってきた技術革新のリーダーシップで世界のサプライチェーンにおいて重要な役割を果たしています。航空産業循環協議会(ACC)の『2050年ロードマップ』にて、これらの強みを活かし、航空業界の製造部門が循環型経済へと移行するために明確で実行可能な計画が示される事を期待してます。ACCを通じて、日本企業は主要なグローバルステークホルダーと協力し合い、新たな資金調達の枠組みを創出して活用することで、新たなビジネスチャンスを掴み、日本の持続可能性目標に向けてサプライチェーン全体の強靭力を高めることが可能だと思います」
(注1) 国際民間航空機関 (ICAO)「Trends in Emissions that affect Climate Change」: https://www.icao.int/environmental-protection/Pages/ClimateChange_Trends.aspx.
(注2)国際民間航空機関 (ICAO). (2022年10月7日) プレスリリース:States adopt net-zero 2050 global aspirational goal for international flight operations https://www.icao.int/Newsroom/Pages/States-adopts-netzero-2050-aspirational-goal-for-international-flight-operations.aspx.
(注3)国土交通省「空のカーボンニュートラ」: https://www.mlit.go.jp/koku/koku_tk8_000007.html.
(注4) Aviation Wire記事:「航空業界の2050年脱炭素化『全然厳しい』特集・JAL赤坂社長に聞くコロナ後の成長戦略(3)」: https://www.aviationwire.jp/archives/279064.
航空産業循環協議会について
航空産業循環協議会(ACC)は、航空業界のための循環型経済を構築することを目的としたネットワーキング組織です。ACCのミッションは、航空会社、規制当局、OEM、サプライヤー、金融機関などの主要な利害関係者を結集し、グローバルなサプライチェーンにおける高価値な循環型経済の実現を通じて脱炭素化を加速する新たな道筋を形成・強化することです。