【岡山県西粟倉村】地域の未利用資源を飼料にする平飼い養鶏スタート。来年1月に有精卵を全国発売
岡山県・西粟倉村を拠点に活動するセリフは、地域の未利用資源を飼料化する資源循環型の平飼い養鶏事業を11月8日(金)にスタート。村産の間伐材で建築した木造鶏舎で、「後藤もみじ」640羽の飼育を開始した。
鶏は、12月頃から有精卵を産み始めるそうで、2025年1月から全国販売を開始するとのことだ。
資源循環型の平飼い養鶏
セリフは、鶏が介在することで未利用資源が循環する地域社会をつくりたいと考えている。
鶏の餌となるのは、調理で発生する野菜くず、春夏の草刈りで切り捨てられた雑草、出荷できなかった規格外の米や野菜、コイン精米機に溜まった米糠など。ごみとして捨てていたものが鶏の餌となり、餌を食べた鶏が味わい深いたまごを産む。また、鶏糞は米や野菜を生産する田畑の肥やしとなる。
こうした資源循環型の平飼い養鶏を通して、生産性の低い山田・棚田などの耕作放棄地の再生、集約化がしにくい中山間地での稼げる農業モデルの確立、地域の未利用資源を飼料化しゴミを減らす農業の実践、青草の飼料化による草刈りのビジネス化、資源循環型の小規模平飼い養鶏の他地域展開を実現する。
鶏本来の生態に寄り添う薄飼い
セリフは、日光を浴びる、走り回る、砂浴びをする、とまり木で眠るといった鶏本来の生態に寄り添える低密度の平飼いに取り組んでいる。1㎡あたり2羽を基準としており、これは一般的なケージ飼育の5分の1以下の密度なのだそう。1群を200羽程度に抑えることで1羽1羽の鶏の健康状態を把握できるように努めている。
400㎡弱の広々とした木造鶏舎は、西粟倉村の間伐材を活用して建築。土木業者、素材生産業者、製材業者、大工、すべて村内の事業者でまかない、チーム西粟倉による木造鶏舎が完成した。
あえて構造材に必要以上の品質は求めず、規格流通する木材のモジュール(12cm角・天然乾燥ヒノキ柱など)や汎用的な建築資材を採用。これは、他地域でもローコストかつ短納期で建築しやすくするための工夫だ。
鶏舎内には、籾殻と木屑をたっぷりと敷き詰め、糞が乾き匂いを抑える工夫も。いずれも農家や材木屋からもらう、地域の未利用資源だ。
100%国産の自家配合発酵飼料で育つ鶏
鶏には、輸入穀物に依存する市販の配合飼料はあたえず、自家配合の発酵飼料を与えている。地元産の米や麦を中心に、米糠、生おからなどを配合しているそう。飼料を発酵させることで鶏の体内環境を整え、消化吸収を良くするという。
また、自家配合の発酵飼料に加えて緑餌(天然の青草)も与えている。緑餌にはビタミンや食物繊維が豊富に含まれ、鶏の血液を弱アルカリ性に保つ効果があるのだそう。
購入する原材料も含めて100%国産。たまごを購入した人に、「(真の生産者である)鶏が何を食べているか」をきちんと説明できる生産者でありたいと考えている。
2025年1月より有精卵を全国販売
こうして育った鶏が産むのは、有精卵。たまごを産まない雄も飼育することで自然交配がおこるためだ。
たまごの味はあっさりしているが、ゆたかな香りとやさしいコクがつまっているそう。たまごの色は鶏が食べたもので決まるそうで、卵の色調整のためだけに余計なものは与えず、米や緑餌をたくさん与えるため、黄身の色はオレンジ色ではなくレモンイエロー色になるという。
また、季節や旬によって飼料の内容や割合がかわるので、たまごの風味もかわるのだそう。
たまごは、2025年1月から全国販売予定。まずは日産500個程度を予定している。西粟倉村内の道の駅やショップ、兄弟会社・点々のブランドサイトおよびポップアップストア(直販店)で販売されるほか、同村のふるさと納税の返礼品としても登録予定だ。
今後の計画
西粟倉村は、1300人のむら。養鶏場や事務所がある知社集落は自販機や横断歩道すらない20世帯40人の集落だ。
セリフは、2025年中に同区画で鶏舎2棟を建築し1400羽の飼育体制を構築する方針。また、2028年までに鶏舎6棟3000羽飼育の事業拡大を予定している。
そして、最小クラスの自治体規模である西粟倉村での事例を皮切りに他地域展開に取り組み、地域の未利用資源を飼料化する資源循環型の小規模平飼い養鶏モデルの普及を目指す。
資源循環型の平飼いで育てられた鶏のたまごを味わってみては。
セリフ URL:https://serif.ltd
(Higuchi)