朝ドラの“やばいダメ兄貴”が強烈すぎた「美しき31歳俳優」、わずか2年間で印象回復のワケ
俳優・竜星涼(31歳)がようやくカッコいい兄貴を演じてくれています。2022年に出演した朝ドラ『ちむどんどん』(NHK総合)で、ヒロインのダメ~な兄役があまりにも強烈だった竜星。そのイメージダウンの影響が強すぎるのでは……と勝手に危惧していましたが、この2年で着実にイメージを回復!
ドラマ『潜入兄妹 特殊詐欺匿名捜査官』(日本テレビ系、土曜よる9時~)の主役として、熱演を見せています。
◆朝ドラ史上稀に見るダメ兄貴が、役者本人の印象にまで影響
問題となる朝ドラ『ちむどんどん』で竜星が演じたのは、4人きょうだいの長男でヒロイン・暢子(黒島結菜)の兄・賢秀(通称・ニーニー)。父・賢三(大森南朋)が早くに他界し、母・優子(仲間由紀恵)が女手ひとつで育てる4人きょうだいという設定から、頼りがいのある兄を期待していましたが、大きく裏切られました。
素行の悪い賢秀は妹の就職にまで悪影響を与え、地道に働くことよりも一攫千金を狙い仕事も長続きしません。これまでの朝ドラにもニーニーのようなヒロインにとってのダメ男(父や兄、親戚などなど)はいました。しかし、どこか憎めなかった。ただニーニーは朝ドラ史上稀に見る、完全なクズ男だったのです。
トラブルメーカーで、学習することもなく金銭問題で家族に迷惑をかけます。母に何度も金を無心したり、妹の所持金を勝手に持ち逃げしたり、妹が交際していた相手の親から勝手に手切れ金を巻き上げたり、ねずみ講に手をだしたり。無鉄砲というより、無神経で無責任で無礼。もう目も当てられません。当時は「ニーニーのクズっぷりが耐えられない」「竜星涼、嫌いになりそう……」などなど。放送終了後も「竜星涼は好きなのに、ニーニーに見えてイライラする」といったコメントも散見されました。
◆幅広いポジション・役柄で作品に華を添えてきた
それもこれも、竜星が破天荒なニーニーを徹底的に演じ切ったがゆえのこと。彼の俳優としての力量に対する評価は揺るがなかったものの、やはりそのイメージは強烈でした。その影響か、2023年1月期に主演したドラマ『スタンドUPスタート』(フジテレビ系)は、民放ゴールデンプライム帯の連続ドラマ初主演にも関わらず、評判はイマイチ。堅気っぽくない風体の投資家という役どころも、ニーニーを彷彿とさせたのかも知れません。
しかし、もともと演技力の高い竜星は着々とそのイメージを回復していきます。2023年の大ヒットドラマ『VIVANT』(TBS系)には、阿部寛演じる野崎守の部下、警視庁公安部・外事第4課の新庄浩太郎役で出演しています。尾行を巻かれるなど、ポンコツに見せかけて、最終回では驚きの立ち回りで、大いに作品を盛り上げました。
◆2024年、華麗に印象を復活させた“NHKの大作”
また今年の春クール『ACMA:GAME アクマゲーム』における天才ギャンブラー・上杉潜夜(せんや)役では、ガラリと印象の違う役どころに挑戦。「竜星のこういうお調子者が観たかった!」欲を、ようやく満たす演技が堪能できました。
そして、ニーニーの面影を完全に吹き飛ばしたと言っても過言ではないのが大河ドラマ『光る君へ』ではないでしょうか。道長(柄本佑)の甥で、伊周(三浦翔平)の弟・隆家を演じています。政(まつりごと)への野心もあり、兄より立ち回りが上手く、やや荒くれ者ではありますが愛すべき弟キャラ。竜星の可愛さが炸裂しています! 伊周との対比表現も秀逸で、作品には欠かせない存在になっています。
◆満を持して“超絶カッコいい兄”になった竜星
これまでも竜星は、好青年系、体育会系、謎めき系、三枚目のひょうきん系まで幅広い役柄を演じてきました。蛇足ですが、筆者はドラマ『アンナチュラル』(TBS系)における、謎めいた風体なのに何故か惹きつけられる葬儀屋・木林役が好み。
そして『ちむどんどん』から2年の時を経て、今回の『潜入兄妹 特殊詐欺匿名捜査官』では完全なる二枚目の主人公を演じています。
竜星演じる元警察官・渡良瀬貴一(わたらせ きいち)は、正義感と行動力を併せ持ち、何よりも妹・優貴(八木莉可子)のことを第一に考えるイケメン兄です。父を殺害した犯人が、詐欺組織「幻獣」の幹部であることを知り、父の元同僚刑事・入間(及川光博)手引きの元、敵の組織に妹と共に潜入します。
◆スーパー戦隊出身の魅力を遺憾なく発揮
『潜入兄妹』は、櫻井翔が主演したドラマ「占拠シリーズ」を手掛けたスタッフによるオリジナル作品。シリーズお決まりの、毎話ラストに主人公が発する決め台詞も引き継がれています。ちなみに今回は「最悪だ」。
主人公の貴一は熱血漢で正義感にあふれたキャラクターで、スーパー戦隊シリーズ出身でもある竜星の魅力が遺憾なく発揮されています。頭の回転も速く咄嗟(とっさ)のピンチも次々と乗り越え、180cmの長身を活かしたキレキレのアクションで妹を守り抜く姿には惚れ惚れします。
まさに「こんなお兄ちゃんに守ってほしい!」という視聴者の心を満たすかっこよさで、見事“ニーニー”の印象を脱却したのではないでしょうか。かっこいい兄に見惚れながら、潜入してまで遂げたかった父の敵討ちの結末を見守りたいと思います。
◆これからも臆することなく、幅広い役柄に挑戦してほしい
ドラマだけでなく映画にも出演。その活躍は止まりません。来年2月公開、阿部寛主演の映画『ショウタイムセブン』への出演も発表されました。本作は韓国で大ヒットしたソリッドスリラー『テロ, ライブ』を原作にしたリアルタイム型サスペンス・エンタテインメント。竜星は正義感あふれる若きキャスター役を担います。
表現力の高さゆえに、役の印象が付きすぎてしまった竜星ですが、これからも臆することなく、幅広い役柄に挑戦していってくれることでしょう。
<文/鈴木まこと(tricle.ltd)>
【鈴木まこと】
tricle.ltd所属。雑誌編集プロダクション、広告制作会社勤務を経て、編集者/ライター/広告ディレクターとして活動。日本のドラマ・映画をこよなく愛し、年間ドラマ50本、映画30本以上を鑑賞。Twitter:@makoto12130201