「残業ゼロを実現した7つの改革」岐阜のIT企業、サイバーインテリジェンスが語る“ブラック労働からの脱却”への道
株式会社サイバーインテリジェンス
2024年11月8日(金) 株式会社サイバーインテリジェンスの代表取締役の渡辺誠司が、厚生労働省主催の「過労死等防止対策推進シンポジウム」に登壇し、自身の体験談と残業ゼロの取り組み事例を発表しました。
100名ほどの参加者の前で発表
株式会社サイバーインテリジェンス(本社:岐阜市)は、ホームページ制作、SEO対策、PPC広告といったWEBマーケティングに特化したIT企業です。社員数17名の小規模な組織ながら、5年間にわたり「残業ゼロ」を実現し続けており、業界内外から大きな注目を集めています。
IT業界といえば、突発的なシステムトラブルや厳しい納期により長時間労働が日常とされがちな業界ですが、サイバーインテリジェンスはその常識を覆しました。
ブラック労働から学んだ「働き方改革」の必要性
サイバーインテリジェンスが「残業ゼロ」を掲げるに至った背景には、代表である渡辺自身が実際に経験した過酷な労働環境があります。若手時代に勤務していたベンチャー企業では、朝7時から終電までの長時間勤務が常態化し、残業代も支給されず、週末の出勤も当然視される状況でした。こうした厳しい環境の中でも、あらゆるビジネススキルを身に着け事業部長に昇進し、新規事業を成功に導きましたが、心身の限界は徐々に迫っていました。
32歳の時に「目が眩しくて開けられない」という症状が現れ、病院で「自律神経失調症」と診断される事態に至ります。睡眠時間もわずか4~5時間しか確保できない状況でしたが、1時間おきに目が覚めてしまうほど精神的にも肉体的にも追い詰められた状態となり、生命の危機を感じて退職を決意しました。
そして「ITを駆使して結果を出す」ことを理念にサイバーインテリジェンスを立ち上げ「絶対にブラック企業には戻らない」という強い信念を胸に、新たな道を歩み始めました。
起業の苦難と「ブラック労働」の再来
会社員時代にビジネス経験を積んだ渡辺は、事業を少しずつ拡大していきましたが、創業から5年目までは経済的に苦しい状況が続き、深夜まで働く日々が続きました。
しかし、事業がようやく軌道に乗り始め、社員が増えてきたとき驚くべき事実に気付きます。
それは、かつて自分が経験した「ブラック労働」を今度は自らが再現していたことでした。気がつけば、毎日20時までの残業や土曜出勤が当然視されるようになり、社員も次第に長時間労働に順応していったのです。
「誰よりも働かなければ事業は成功しない」という強迫観念が、かつての苦しい経験から彼の中に染みついてしまっていたのです。
若手社員の一言がもたらした大きな転機
そんな中、新卒社員から「この会社ってブラックですね…」という最も聞きたくない一言が、まさに雷のような衝撃として心を揺さぶりました。その言葉により、自分の経営方針が根本から誤っていたことを突きつけられ「このままでは優秀な若手が離れてしまう」という危機感が募りました。
会社は「働き方を根本から変えなければ、企業としての持続的な成長はない」と確信し、従業員が安心して働ける環境づくりに本気で取り組む決意を固めました。そして、社員が健康で充実した生活を送りつつ、成果を出せる企業を目指し、具体的な改革に乗り出しました。
残業とは「最悪な時間」と定義した
サイバーインテリジェンスにとって「残業とはなにか?」を問われたとき、クルマの運転に例えると「夕方の渋滞している道路を、わざわざ割高な交通費を払って帰宅するようなもの」だと考えることにしました。夕方の渋滞している道路というのは、疲れてボーッとしながら運転している人、イライラして怖い顔で運転している人、早く帰りたくて信号無視する人が多く、一日の中でもっとも事故(つまり単純ミス)を誘発する時間帯であることから、社内で残業を”最悪な時間帯”と定義したのです。
残業ゼロを実現した7つの改革
サイバーインテリジェンスでは、「残業代で稼ぐのではなく、スキルで稼ぐ」という価値観を全社員に浸透させるため、7つの改革を実施しました。業務の優先順位付けや明確な目標設定、ミーティングの短縮化、責任の明確化に加え、不要な業務の断捨離、時間管理のための時間ブロック法、さらに集中力を高める集中タイム制を導入。
これらの取り組みを通じて、効率的かつ質の高い働き方を追求し、残業から完全に距離を置く環境を実現しています。
その中でも、すぐに取り入れることができる3つの改革を紹介します。
改革1:集中タイム制の導入
社員が業務に集中できる時間を確保するため、「集中タイム制」を導入しました。
集中して作業している時に話しかけられると作業効率が低下してしまうため、集中タイムを設けて効率的なコミュニケーションを推進しました。
社内で使用しているイメージ
改革2:有限時間のシミュレーション
年間を通して社員が働ける時間をシミュレーションし、限られた時間内で成果を出す意識を根付かせました。
全社員が有給休暇を100%取得することを前提にスケジュールを策定し、短時間での成果を重視する社風が醸成されました。
一人ひとりが使える時間のシミュレーション
改革3:業務の見える化・わかる化
もっとも重視したのは、サイバーインテリジェンスが得意とするITを駆使した業務効率の改善です。ITツールを活用して案件ごとの進捗状況を「見える化」し、全社員が誰が何をどう進めているのかを一目で「わかる化」することでした。
これにより、子育て中の社員も在宅ワークが可能となり、パソコンさえあれば「どこにいても、ここが職場」という環境を実現しました。
育児や介護などの状況にかかわらず仕事ができる環境は、ワークライフバランスの新しいスタンダードを確立し、社員の働きやすさと企業の持続的成長を両立させる基盤となっています。
全員が案件把握できるよう業務の「見える化」
日本社会の「長時間労働の美化」を禁止する
様々な改革を実行していく中で、内面的なメンタルにも改革が必要となります。それは、長時間労働を「美徳」とする文化を断つことでした。日本社会では、上司や先輩が職場に残っていると、後輩が帰りづらいと感じる空気が生まれやすく、これが長時間労働の連鎖を引き起こしています。
事実として先進国の中で、このような「お付き合い残業」をしているのは日本くらいです。これこそがブラック労働の根源になっていることから、このムダを「成果主義」に置き換え「本当に頑張っているのは、限られた時間で成果を出している人である」という価値観を徹底しました。
長時間労働を推奨する風潮が優秀な人材を失う原因だと痛感していた渡辺は、経営者として率先してこの悪しき習慣に挑みました。
「経営者が意識を変えなければ、残業ゼロは実現できない」という信念を掲げ「長時間労働が当たり前」という空気を一掃しました。その結果、サイバーインテリジェンスでは「短時間での成果」を求める企業文化が構築され、社員が効率的に働ける環境を整えることに成功しました。
お客様と同じくらい社員を大切にする気持ち
基本的な考えは「社員も顧客と同様に大切にするべき存在である」という信念に基づいています。社員を単なる労働力としてではなく、一人の顧客と同様に大切にすることで、チームの結束力が高まり、社員のモチベーションも向上するとの考えから、同社では福利厚生の充実や労働環境の改善に積極的に取り組んできました。
また、削減した残業代は、新卒採用や社員教育に投資し、持続的な成長を支える強力な人材育成体制を構築しています。助成金も活用しながら「社員が尊重される企業」を実現し、社員が自発的に高品質なサービスを提供できる環境を整備することで、結果として企業全体が好循環で発展する体制を築きました。
「残業ゼロ」が生んだホワイト企業のモデルケース
こうした労働環境の改革により、サイバーインテリジェンスは岐阜県の「ワーク・ライフ・バランス推進エクセレント企業」に認定され、ホワイト企業のモデルケースとして注目を集めています。
現在、同社の有給取得率は75%を超え、3年以内の離職率も18%という低水準を維持しています。
社員には「仕事量を減らすことがワークライフバランスではなく、仕事とプライベートの質を高めることこそが本質である」と教育し、残業を撤廃することで、本質的な働き方改革を実現しました。
令和元年度認定 ワーク・ライフバランス推進エクセレント企業
残業と決別する覚悟
代表である渡辺は、自社がブラック労働からホワイト企業に転身できた事実談として「残業によって人が潰れることはあっても、残業がなくなったからといって会社が潰れることはない」と考えており、労働環境を整えることで社員の健康とキャリア成長を支えると同時に、企業の持続的な発展を促すと確信しています。
社員が働きやすい環境でこそ成果を上げられるという信念のもと、サイバーインテリジェンスの取り組みは、岐阜から発信される「ブラック労働からの脱却」という新たな指針として、IT業界のみならず多くの企業に示すモデルケースとなっています。
サイバーインテリジェンスは、社員と顧客の利益を創造する「利創経営」をビジョンに掲げ、持続可能な企業のあり方を目指し、日本社会全体の労働環境改善に貢献してまいります。
株式会社サイバーインテリジェンス
所在地:岐阜市
設立:2009年
従業員数:17名
事業内容:WEBマーケティング(ホームページ制作、SEO対策、PPC広告管理)