松本人志の訴訟取り下げコメントに見られる権力者の思考と「東大話法」、そして復帰への懸念点
お笑いコンビ「ダウンタウン」の松本人志が、女性に性的行為を強要したと報じた「週刊文春」(文藝春秋)との訴訟を取り下げたことを発表した。
松本は昨年12月の記事が出た直後のSNSでは「事実無根なので闘いまーす」と発信し、名誉を毀損されたとして5億5000万円の損害賠償などを求めていた。
だが、今年11月8日に発表したコメントでは、女性らが参加する会合に出席していたことは認め、「参加された女性の中で不快な思いをされたり、心を痛められた方々がいらっしゃったのであれば、率直にお詫び申し上げます」と謝罪した。
週刊誌の芸能デスクはこう語る。
「松本側のコメントを読むと、『物的証拠がなかったことを確認した』ことで訴訟を取り下げたような物言いでしたが、そもそも文春サイドは当初から被害者側の証言しかないことを明らかにしつつ、綿密な取材を重ねたことを主張していた。松本も物的証拠がないことはわかったうえで『事実無根』を認めさせたかったはず。振り上げた拳を下ろす言い分としてはコレしかなかったんでしょうけど、厳しい言い方をすれば虚勢を張っているようにも見えました」
すでに、所属の吉本興業や代理弁護士のコメントなどからは、松本の芸能界復帰を匂わせる文言も見受けられるが……。
「文春では10人もの女性が告発しており、今回の訴訟の当事者はそのうちの1人に過ぎない。記事にあったマッサージ店での“暴挙”などは、相手から訴えられればかなりの痛手になる可能性もある内容でしたから、飲み会での出来事はともかく、復帰するならこの件の釈明は必須ではないかという関係者もいます」(同週刊誌の芸能デスク)
そんな中、同日には膨大な読書数を誇る読書家による、チャンネル登録者数 44.2万人のYouTubeチャンネル『一月万冊』に東京大学東洋文化研究所教授、安冨歩氏が登場。
松本の訴訟取り下げについて一刀両断した。
安冨氏といえば、2012年に『原発危機と東大話法~傍観者の論理・欺瞞の言語~』(明石出版刊)を上梓。その後、“日本のリーダー達によく見られる不誠実な話法”の解説本を多数出版し、まとめて“東大話法”と糾弾している。
「『原発危機と~』では、東日本大震災時の福島第一原子力発電所事故を巡って数多くの東大卒業生の関係者が登場し、その大半が同じパターンの欺瞞的な言葉遣いをしていると指摘していました。その東大話法の一例が『もし〇〇〇〇であるとしたら、お詫びします』と言って“謝罪したフリ”で切り抜けるというもの。自分が謝罪をすべき当事者であるにもかかわらず、傍観者に成りすましているという語り口で、安冨教授は『信用のできる人間ではない』と一刀両断。“権力者の思考”だとも指摘しています。今回、松本のコメントも典型的な“東大話法”となっており、実際、この部分にモヤモヤしている人は少なくないのではないでしょうか」(週刊誌の芸能デスク)
他方、今回松本が発表したコメントについては「松本サイド及び文春サイドの双方の関係者の意思が反映された結果、文法的におかしい表現がなされている箇所がある」といった指摘もあるが、今後の松本の復帰について芸能ジャーナリストの竹下光氏はこう話す。
「今回の決断により、松本さんの今後の芸能活動にとってプラスに働きそうなことといえば『騒動がひと段落したこと』『文春の後追い報道の可能性がほぼなくなったこと』『刑事事件になっていないこと』あたりでしょうか。逆にマイナスに働きそうなこととなると『疑惑の完全払拭はできなかった』『途中で戦いを投げ出したような中途半端な印象を持たれがち』『タレントイメージの悪化』といったところでしょう。もっとも、元々好感度の高さを武器にしていたタイプの芸能人ではなく、騒動を境にかつてのタレントイメージとのギャップに苦しむといったことはなさそうです。とはいえ、報道にあったような疑惑を完全に払拭することはできなかったわけで、テレビ番組への起用に関しては視聴者の顔色をうかがうスポンサーがどう判断するかですよね。とくに民放キー局については、どこが起用の先陣を切るのかも要注目です」
松本本人は早期の復帰を望んでいるのだろうが……いろいろな意味での“余波”はまだしばらくは続きそうだ。