「24時間以内に終わらせる」トランプ氏が大混乱を巻き起こすウクライナ戦争“ちゃぶ台返し”
「米合衆国大統領に選出された彼(トランプ氏)に祝意を表したい。すでに述べた通り、米国民の信頼を得た国家元首であれば、我々は誰とでも協力する。実際にこれからはそうなるだろう」
ロシアのプーチン大統領が11月7日、ソチで行った演説の中でトランプ氏に祝意を表し、同氏と対話する用意があると表明した。ただ、プーチン氏は「もし彼が電話してきて『ウラジーミル、会おう』と言ってくればということだ。私から彼に電話するのは私にふさわしくないと思う」として、トランプ氏側から連絡があればの話、であることを強調。すると、この発言に答えるように7日、NBCテレビのインタビューに答えたトランプ氏もプーチン氏と「話すことになると思う」と述べ、会談に意欲を示したことが報じられた。
選挙期間中からロシアのウクライナ侵攻について「私が大統領なら24時間以内に戦争を終わらせる」と繰り返し発言してきたトランプ氏。プーチン氏と初めて直接会談したのは、前回トランプ氏が大統領に就任した半年後の2017年7月。意気投合した2人は予定を大幅に超える2時間15分にわたり会談。トランプ氏は会談後、「米露関係が今より悪かったことはなかった。だが、それは約4時間前(=会談開始時)に変わった」と語り関係改善をアピールしていた。
しかし、冷え込んだ関係を改善することはできず、19年に行った直接会談を最後に、翌20年の選挙で敗れたトランプ氏はホワイトハウスを去ることに。その後、アメリカ国内ではロシアが大統領選挙に介入していたとされる「ロシア疑惑」が噴出するなど大騒動に発展。しかし退任後も、両者による“個人的な関係”は継続していたとされ、22年のロシアによるウクライナ侵攻開始直前には、トランプ氏がロシアがウクライナ東部の一部を一方的に「独立国家」として承認したことを「天才的」などと評価し、物議を醸したこともあった。
「そんなこともあって、トランプ氏は9月にニューヨークでゼレンスキー大統領と会談した際も『現在もプーチン氏とは良い関係にある。大統領に就任するよりも前に良い結果をもたらすことができる』と伝え、和平実現への自信を示したようです」(外報部記者)
とはいえ現段階で、具体的和平案について、まだ口にしていないトランプ氏だが、同氏に近い消息筋3人の談話を伝えた米紙ウォールストリート・ジャーナル(電子版)によれば、和平案の一つとして、ウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟を20年間凍結する代わりに、米国がロシアの再侵略を防ぐため大量の兵器をウクライナに供給し、現在の前線を停戦ラインとして非武装地帯を設けるという案が浮上していると報じている。
「ただ、ゼレンスキー氏が掲げる停戦条件は、あくまでもロシア軍の撤退。さらに20年先とはいえ、将来的にウクライナのNATO加盟に余地を残す条件をプーチン氏がそのまま飲む可能性は極めて低い。しかし、トランプ氏がウクライナへの軍事支援を打ち切った場合、今後EU諸国がどのような支援を継続していくのかについても、国を挙げた議論が必要になってくる。ともあれ、今後の展開はトランプ氏の言動がカギを握っていることは間違いありません」(同)
米メディアの報道によれば、議会で可決された支援のうち、現段階ではまだ60億ドル(約9117億円)以上が未実行だとされ、バイデン政権としては任期が終わる来年1月までに、連邦議会で可決されたものについては早急に実施する考えを示している。だが、なにせ方針転換や前言を翻すことなど意に返さないトランプ氏のこと。政権発足後には、ちゃぶ台返しすることもあり、EU並びにバイデン政権の大混乱はしばらく続きそうだ。
(灯倫太郎)