話題の「AI PC」はパソコン普及の救世主となるのか?

【マーケティング考_4】現在、AIに対応したパソコン(PC)が順次発売されている。AI PCは普及率の増加に貢献するのだろうか。今回は内閣府の消費動向調査から、PCとスマートフォン(スマホ)の普及率を比較し、2014年以降どのように推移していったのか、そして世帯主の年代ごとでも比較し、どの年代がPCの普及率を支えているのかを紐解いていく。

○PCは3ポイントだが、スマホは45ポイントも普及率が増加

 内閣府の消費動向調査によると、PCの普及率は14年以降、10年にわたり、70%前後で推移している。一方、スマホは14年の45.2%から普及率は年々増加、その後も勢いは増し、24年には90.7%に達した。どのような背景で普及率の伸びに差が出たのかを探るため、世帯主の年代ごとに普及率の推移をみていく。

○30代まではスマホ偏重が顕著

 世帯主の年代ごとに普及率を比較したところ、異なる動きがあらわれた。まず、29歳以下では、14年時点でPCの普及率は81.2%だったのに対し、スマホは85.5%。既にスマホの普及率が4ポイント超上回っていた。24年ではPCが73.7%、スマホは98.5%と普及率の差が大きく開いている。

 また、30代では、14年こそPCの普及率がスマホを上回っていたものの、翌15年に逆転。その後もスマホの普及率は増加し続けるが、PCでは、小幅な上下動を繰り返しながらも普及率は減少、24年にPCとスマホの普及率は、19ポイント差まで広がった。

 40代と50代の普及率は似通った動きとなっている。共にPCの普及率は14年は8割台、スマホは6~7割だった。50代では17年、40代も18年にスマホの普及率がPCを逆転。PCの普及率は緩やかな減少が続いており、24年時点で8割を下回った。しかし、他の年代より比率は高く、PCの普及率を底支えしていると言える。

○60代以上のPC普及率は増加

 60代と70代以上では、14年時点でのスマホ普及率は2~3割にとどまっていた。その後急増し、24年には8~9割まで達している。PCとスマホの普及率の逆転は、60代で19年、70代以上で20年。この時期には、キャリアが3Gの新規受付を終了したり、色々な手続きにスマホが必須となりつつあることが、スマホの普及を押し上げたと考えて良いだろう。

 一方、PCの普及率は、14年と24年を比較すると4~10ポイント近く増加しており、他の年代にはみられない動きとなった。

 こうした年代ごとの動きを総合すると、PCの普及率は全体ではほぼ横ばいで推移しているが、底支えしている40代と50代、底上げしている60代と70代以上といった構図がみえてくる。

 現状、40代と50代の普及率が減少していることを考慮すると、この年代が60代や70代以上になる頃には、PCの普及率は減少へと転じていくことは想像に難くない。

 PCは主に情報の作成時に威力を発揮する。情報発信のためにホームページを作成していた時代に、スマホは存在しておらず、PCが必須だった。その後、掲示板やSNSの普及により、携帯電話やスマホを使い、手軽に情報発信できるようになった。こうした変化もPCの普及率の伸び悩みの要因の一つに挙げられる。

 現在、PCメーカー各社はAIに対応したモデルを発売している。しかし、AIを取り入れることにより、生活がどのように豊かになるのかが明確に見えてこないのが実状だ。

 さらに、スマホにもAIを取り入れているため、AIはPCだけのものとは言えない。AIに続く第二・第三の新機軸を生み出さないと、PCの普及率を維持、増加していくことは難しい。(BCN総研・森英二)

2024/10/30 19:00

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